ナタリー PowerPush - Drop's
隔世遺伝ブルースロックの誕生
「とにかくライブがやりたくて」コンテストに参加して優勝
──コピーにとどまらずにオリジナルを作るのは、軽音部のバンドにとって大きいハードルだと思うんですけど、皆さんの高校はほかのバンドも積極的な感じだったんですか?
奥山 そうでもなかったです(笑)。
小田 周りの人たちが「今日練習めんどくさいなあ」って言ってるのを聞いて「こんなに楽しいのになんでだろう」って(笑)。
荒谷 それまで部活は何もやってこなかったので、単純にみんなと一緒に何かをやるのが楽しくて。
──コンテストにはなぜ参加しようと?
石橋 荒谷の友達のバンドが出るはずが急に出られなくなって、代わりに出ない?って話になって。
荒谷 とりあえずなんでもいいからライブにたくさん出たくて。
小田 勝ち進みたいとかまったく考えてなかったし(笑)、ただライブがしたかっただけですね。
──中野さんはそれによってオリジナル曲を書くという新たな課題ができたわけですが、すんなりと取り組めました?
中野 コピーのときから人にほめられるのはうれしかったし、ほめられることで自信もついていたので「せっかくならカッコいい曲を作ってやろう」と思ってましたね。
奥山 そのコンテストで優勝して……今こんな感じに(笑)。
荒谷 今めっちゃ端折ったね(笑)。
知識がないままゼロから始めてみたらこうなった
──コンテストで優勝したことによって周りの目……部内や学校での立ち位置や見られ方は変わりましたか?
奥山 そんな大きくは変わんなかったですね。
小田 クラスの子に「すごいねー」って言われたぐらい。
──オリジナル曲が「コンテスト優勝」という形で認められて、その後バンドへの取り組み方は変わりましたか?
小田 コンテストの審査員の方に「CD作ってみない?」って声をかけられたんです。それで「もっとオリジナルを作っていこうかな」って気持ちになって。
──最初のミニアルバムを作ったのが……。
中野 2011年で、高校3年生ですね。
──高校3年生というと進路の話も出てきたと思いますけど、皆さんはその時点ですぐ「バンドで行こう!」と?
奥山 そこまで考えてなかったけど、解散するって選択肢はなかったですね。
──進学にせよ就職するにせよDrop'sは続けるだろうと。
荒谷 そうですね。
「メジャーデビュー」に対する気構え
──曲作りはバンド内でどうやって進めるんですか?
中野 最初は私がメロディとコードと歌詞を作り込んで、それからみんなにイメージを伝えながら作ってました。最近はスタジオでセッションしながら作ったりしますけど。
──曲作りやアレンジはなごやかに進むものですか? 皆さんを見ていると、あまり激論を交わすタイプには見えないですけど(笑)。
中野 激論はないですね(笑)。最初の頃はわからないことが多かったから時間がかかったけど、今は前よりもすんなりいくようになりました。成長するにつれだんだん1人ひとりの主張も出てくるし、最初の頃のぎこちなさとはまた違う……いい意味で合わないところもあるけど(笑)。それぞれの個性をどうバンドとしてまとめていくか考えられるようになったし、いい方向に向かっていると思いますね。
奥山 イメージを受け取ったり伝えたりするのは、どんどんスムーズになってきていると思います。
──学生時代すでにCDデビューを経験した皆さんにとっても「メジャーデビュー」はやはり特別ですか?
小田 音源を作るにあたってはいつも通りというか、特に違いはなかったですね。
──メジャーでガツンとやっていく的なテンションではなく?
中野 うーん、あるにはあるけど(笑)。
全員 あはははは(笑)。
──皆さんすごく平熱で話してるんだけど、出てくる音はちゃんと熱いものになっていて。そこが面白いんですよ。「メジャーでやったるぜ!」みたいな野心もあるにはある?
中野 それはもちろんあります。
──そんなに表立ってギラギラした感じはないですけどね(笑)。
中野 どうなんだろ……?
奥山 出てないのかなあ(笑)。
──実際にデビューに向けて動き始めて、7月にはタワーレコード店舗限定という形ではありながらも、メジャー第1弾シングル「太陽」がリリースされました。周りを取り巻く状況は、やっぱり変わりましたか?
荒谷 そんな大きくは変わらないよね?
中野 関わる人が増えたのと、地元以外でライブをする機会が増えたっていうぐらいですね。
荒谷 ライブでいろんなところを回れるようになったことが大きいですね、私たちにとっては。土地土地でお客さんのノリも違うし、それによって私たちにも発見があるので。
- 1stフルアルバム「DAWN SIGNALS」 / 2013年9月4日発売 / 2600円 / STANDING THERE, ROCKS / KING RECORDS / KICS-1962
- 1stフルアルバム「DAWN SIGNALS」
収録曲
- RED IDENTITY BAND
- 荒野のビート
- JET SPARK
- STRANGE BIRD
- カルーセル・ワルツ
- 木曜日の雨のブルース
- DIRTY Smoke
- やさしさ
- カーテン
- 夕やけ
- 太陽
Drop's(どろっぷす)
北海道・札幌在住の女子5人組のブルースロックンロールバンド。2009年に同じ高校に入学した5人で結成し、高校2年生の夏休みに初めて作ったオリジナル楽曲「泥んこベイビー」で挑んだ高校生バンドコンテストでグランプリを獲得し注目を集めた。高校3年生となった2011年7月に初のCD作品となるミニアルバム「Drop's」をリリースし、同年12月には同じく札幌出身のロックバンド・爆弾ジョニーとのスプリットシングル「SPLIT」を発表。2012年7月には北海道の音楽フェス「JOIN ALIVE」への出演を果たし、同年8月には東名阪ツアーを行う。2013年3月に2ndミニアルバム「LOOKING FOR」を発表したのち、7月にタワーレコード店舗限定シングル「太陽」でキングレコード内のロックレーベル「STANDING THERE, ROCKS」よりメジャーデビューを果たす。9月4日には1stフルアルバム「DAWN SIGNALS」をリリース。