ナタリー PowerPush - Drop's

隔世遺伝ブルースロックの誕生

北海道・札幌を拠点に活動する5人組ロックバンド、Drop's。彼女たちは高校1年生のときに学内の軽音楽部で出会い、2年生になるとオリジナル楽曲を携えて地元のコンテストに出場し見事優勝を果たす。そして3年生の夏には早くもオリジナルミニアルバムを完成させた。本格的なブルースロックを奏でる女子高生バンドとして全国区で注目を集めた彼女たちは、高校卒業後すぐにメジャーデビューの切符を手にする。

キングレコード内のロックレーベル「STANDING THERE, ROCKS」よりリリースされた1stフルアルバム「DAWN SIGNALS」は、その年齢を感じさせないブルースロックをさらに進化させた、新たな可能性を示唆する1枚に仕上がった。ナタリーではライブで東京を訪れた5人を直撃。急展開で進む彼女たちの結成から現在に至るまでの短くも濃いヒストリーに迫った。

取材 / 成松哲 文 / 臼杵成晃 撮影 / 笹森健一

始まりは「愛をこめて花束を」

──もう説明し飽きていることかもしれませんが、まずは皆さんがDrop's結成に至るまでの経緯を教えてください。高校時代に結成ということは、軽音楽部で?

Drop's

荒谷朋美(G) そうです。

──バンドを組んですぐの頃は、やはりコピーから?

奥山レイカ(Dr) はい。最初はSuperflyさんから。

──いきなりハイレベルなところから入りましたね(笑)。もっとシンプルに弾けるバンドものから始めそうなものなのに。Superflyって初心者バンドがおいそれと手をつけるタイプの楽曲ではないと思うんですけど。

小田満美子(B) 最初に中野から聴かせてもらった歌がSuperflyさんの「愛をこめて花束を」だったんですよ。それで「なんかいいね」って(笑)。

奥山 「ボーカルをやりたいって子がいる」って聞いて、まずどんな歌声なのか聴いてみたいと思って集まったんです。そのとき歌ったのが「愛をこめて花束を」で。

──中野さんはなぜSuperflyを選んだんですか?

中野ミホ(Vo, G) なんとなく……うまく歌える自信があったので(笑)。

──音楽的にこういう曲がやりたいという思い入れがあったというよりも、自分の声を正確に伝えられそうなのがこの曲だったと。

中野ミホ(Vo, G)

中野 そうですね。当時よく聴いてたのはThe BirthdayとかTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTだったので。

──皆さんバンドを始める直前はどんな音楽を聴いてたんですか?

荒谷 中学生のときにテレビでゆずさんを観て「ギターカッコいいなあ」と思って、ギターを始めたんです。だから最初はアコギから入って、その流れでコブクロさんとか斉藤和義さんをよく聴いてました。エレキは高校生になってこのバンドを組むときに初めて。

石橋わか乃(Key) 私はエレクトーンをやっていた流れでPE'Zとかですね。歌モノはあまり聴いてなくて。

──PE'Zは好きで見つけてきたというよりも、エレクトーンの課題曲として出会ったと。

石橋 はい。

奥山 私は中学のときに周りの友達が聴いていた、ASIAN KUNG-FU GENERATIONとかDOESとか。

小田 私は土屋アンナさんが中学のときから大好きで、初めて観たライブも土屋さんです。土屋さんのライブを観て「バンドってカッコいいな」と思って軽音部に入ったんですよ。

オリジナルを作ってみたらブルースロックに

──皆さんはSuperflyのカバーでスタートしながら、早々にオリジナルも作ってますよね。高校生の頃すでにCDもリリースしていますし。コピーからオリジナルにはどこで切り替わったんですか?

荒谷 高2の夏に、地元のめっちゃ小さいコンテストに出ることになって。オリジナル曲が必要だということになって作ったのが最初です。

──初めての曲作りはどのように?

石橋わか乃(Key)

石橋 中野が作ってきた曲をみんなでふくらませて。それが最初のミニアルバム(2011年7月発売の「Drop's」)に入っている「泥んこベイビー」なんですけど。

──おお、ということは最初の段階からけっこうガチッと方向性が定まってたんですね。中野さんはなぜこのような肌合いの楽曲を?

中野 自分の好きなフィーリングっていうか、好きで聴いてきた音楽の影響を受けて作ったのがこんな感じで。

──というと、先ほど挙げてもらったThe Birthdayやミッシェルですよね。なるほど。Drop'sの音楽はよく1960年代のブルースロックに近いと言われますけど、本人たちにはそういう意識はあんまりないんですね。隔世遺伝というか、60年代音楽に影響を受けたチバユウスケさんたち先輩をワンクッション挟んでいるような。

中野 そうなんですよ。作ってみたらこういう曲になった、っていうだけで。

1stフルアルバム「DAWN SIGNALS」 / 2013年9月4日発売 / 2600円 / STANDING THERE, ROCKS / KING RECORDS / KICS-1962
1stフルアルバム「DAWN SIGNALS」
収録曲
  1. RED IDENTITY BAND
  2. 荒野のビート
  3. JET SPARK
  4. STRANGE BIRD
  5. カルーセル・ワルツ
  6. 木曜日の雨のブルース
  7. DIRTY Smoke
  8. やさしさ
  9. カーテン
  10. 夕やけ
  11. 太陽
Drop's(どろっぷす)
Drop's

北海道・札幌在住の女子5人組のブルースロックンロールバンド。2009年に同じ高校に入学した5人で結成し、高校2年生の夏休みに初めて作ったオリジナル楽曲「泥んこベイビー」で挑んだ高校生バンドコンテストでグランプリを獲得し注目を集めた。高校3年生となった2011年7月に初のCD作品となるミニアルバム「Drop's」をリリースし、同年12月には同じく札幌出身のロックバンド・爆弾ジョニーとのスプリットシングル「SPLIT」を発表。2012年7月には北海道の音楽フェス「JOIN ALIVE」への出演を果たし、同年8月には東名阪ツアーを行う。2013年3月に2ndミニアルバム「LOOKING FOR」を発表したのち、7月にタワーレコード店舗限定シングル「太陽」でキングレコード内のロックレーベル「STANDING THERE, ROCKS」よりメジャーデビューを果たす。9月4日には1stフルアルバム「DAWN SIGNALS」をリリース。