音楽ナタリー PowerPush - Drop's
“渋い音楽”からの脱却
Drop'sが7月9日に2ndフルアルバム「HELLO」をリリースした。今作にはリードトラック「かもめのBaby」を筆頭に、Drop'sの新たな音楽性を提示した楽曲が13曲収められている。今回ナタリーでは中野ミホ(Vo, G)と荒谷朋美(G)にインタビューを実施。今彼女たちがキャッチーなメロディに重点を置いた「HELLO」をリスナーに届けたい理由や制作秘話を聞いた。
取材・文 / 清本千尋 ライブ撮影 / 臼杵成晃
ポップを手に入れるための歌謡曲
──まずはアルバム「HELLO」完成おめでとうございます。前作「DAWN SIGNALS」と比べてキャッチーなメロディの楽曲が増えましたね。
中野ミホ(Vo) ありがとうございます。今回は自分たちなりのポップスとして、歌謡曲をイメージした楽曲をたくさん入れてみました。
──「どしゃ降り」はかなり歌謡曲路線ですよね。
中野 「どしゃ降り」のメロディはけっこう考えました。
──中野さんはなぜ歌謡曲を“自分たちなりのポップス”のエッセンスに?
中野 今ってインターネットとかで自分の好きなものだけを聴けるようになってきていて、みんなが知ってる曲ってあんまりないじゃないですか。昔はお茶の間にみんなで集まってテレビから流れる歌謡曲を聴いていて、それをみんなが知ってるみたいな時代だったと思うんですよ。だから私は歌謡曲はポップなものだと思っていて。
──なるほど。確かにDrop'sと歌謡曲の感じってすごく相性がいいですね。「HELLO」に入っている曲は歌謡曲の持つ懐かしい感じとDrop'sらしさがうまくミックスされていると思いました。リードトラックの「かもめのBaby」も今までの楽曲とガラッと雰囲気が違いますよね。なぜこの曲をリードに?
荒谷朋美(G) 今までのDrop'sを知っている人にとってはすごく新鮮だと思うし、Drop'sのことをまだ知らない人にも聴いてほしかったので、新しい入口としてこの曲を選びました。
──Drop'sの今までの曲と比べると、モータウン風のリズムが新鮮ですね。
中野 なんか自然とこのリズムをやりたいと思ったんですよ。それで私がみんなに提案したら賛成してくれたので、メロディをあとからつけました。そこから全員でアレンジして「かもめのBaby」ができました。
スタンダードになれる可能性
──Drop'sのもともとの音って、ポップなものとはわりと程遠いですよね。
中野 そうですね。今回のアルバムは周りのスタッフとかと話し合って、今までよりたくさんの人に聴いてほしいっていう気持ちで意識的にキャッチーなメロディをつけたものが多いです。“若い女の子なのに渋い音楽をやってるね”っていうところから脱出したかったし。
──若くしてこんなに渋い音楽をやってるっていうのは1つの特徴であった反面、足かせにもなっていたということですか?
中野 なんかいつまでもそれだけじゃやっていけないなっていうか(笑)。前のアルバムが完成して、少しずつ変わっていったんです。
──「DAWN SIGNALS」が1つの区切りになったと。
中野 「DAWN SIGNALS」が完成したときに、もっとたくさんの人に受け入れられるような音楽も作れる可能性があるって思えたんですよ。だったらもう堂々とスタンダードと呼ばれるものを目指してもいいんじゃないかなと思いました。
──自分たちの音をより多くの人に広めるためにポップさを追求したんですね。
荒谷 そうですね。やっぱりやるからにはいろんな人に聴いてもらいたいんですよ。今回のアルバムの収録曲みたいなポップな曲をきっかけにしてDrop'sの音楽がもっともっと広く届いたらいいなと思っています。
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- 2ndアルバム「HELLO」/ 2014年7月9日発売 / STANDING THERE, ROCKS / KING RECORDS
- 初回限定盤 [CD+DVD] 2850円 / KICS-93076
- 通常盤 [CD] 2600円 / KICS-3076
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収録曲
- ハロー
- コール・ミー
- マイ・ロックスター
- DRY DRIVE
- アイスクリーム・シアター
- Stage Dog
- どしゃ降り
- ドラキュラ・サマー
- 真昼のブランコ
- ためいき
- 行方
- 星の恋人
- かもめのBaby
初回限定盤DVD 収録内容
- 太陽(Music Video)
- コール・ミー(Music Video)
- かもめのBaby(Music Video)
- 2014年5月11日に新宿LOFTにて行われたライブ映像
Drop's(ドロップス)
北海道・札幌在住の女子5人組のブルースロックンロールバンド。2009年に同じ高校に入学した5人で結成し、高校2年生の夏休みに初めて作ったオリジナル楽曲「泥んこベイビー」で挑んだ高校生バンドコンテストでグランプリを獲得し注目を集めた。高校3年生となった2011年7月に初のCD作品となるミニアルバム「Drop's」をリリースし、同年12月には同じく札幌出身のロックバンド・爆弾ジョニーとのスプリットシングル「SPLIT」を発表。2012年7月には北海道の音楽フェス「JOIN ALIVE」への出演を果たし、同年8月には東名阪ツアーを行う。2013年3月に2ndミニアルバム「LOOKING FOR」を発表したのち、7月にタワーレコード店舗限定シングル「太陽」でキングレコード内のロックレーベル「STANDING THERE, ROCKS」よりメジャーデビューを果たす。同年9月には1stフルアルバム「DAWN SIGNALS」をリリースし、2014年5月にシングル「コール・ミー」を発売。そして同年7月9日に満を持して2ndフルアルバム「HELLO」をリリースした。