Do As Infinity×澤野弘之|“未知の才人”が吹かせた18年目の新たな風

新しいものになる確信

──その段階で歌詞はもう乗っていたんですか?

澤野弘之

澤野 いや、その段階ではまだなかったですね。大きなプロットがあって、その世界観に合わせた歌詞が乗りますっていうことは聞いてましたけど、具体的な歌詞は曲を作ってから見せていただいた感じで。

大渡 今回の作品は短編映画のようなストーリーになっているんです。で、そこに沿った歌詞をMio Aoyamaさんに書いていただきました。

 プロットありきで仕上げてもらった歌詞なので、けっこう過激な言葉が多い印象もあるんですけど、澤野さんのサウンドと融合したことですごくいい雰囲気になったと思いますね。

大渡 そうだね。世界観にマッチした、まさにサントラと言えるような楽曲に仕上げていただけたと思います。

──澤野さんから上がってきた楽曲の印象はいかがでしたか?

大渡 さっきも言いましたけど、「こんなに洋楽っぽい曲を作れる日本人の方がいるんだ」っていう驚きがありましたね。僕自身、洋楽ばかり聴いて育ってきたタイプなので、こういう楽曲を自分たちのグループのものとしてリリースできるなんて、この上なくうれしいなって思いましたよ。

 単純に、ものすごくカッコいい曲だなっていう印象を受けました。私は最近でこそ洋楽を聴きますけど、亮くんとは逆で基本的にはJ-POP育ちなんです。だから澤野さんの曲を自分の身体の中に入れるまでに多少時間がかかったところはあったんですけど、でもDo Asとして新しいものになるなっていう確信はありましたね。

──澤野さんは先ほど「自分なりのスタンスで」とおっしゃっていましたが、楽曲制作の段階でDo As Infinityというグループのことを強く意識することはなかったですか?

澤野 そうですね。例えばDo Asさんの過去の楽曲をさかのぼって聴いたうえで曲作りすると、そこに引っ張られる可能性があるんじゃないかって思っちゃうんですよ。それは今回に限らず、「(機動戦士)ガンダム」などのシリーズものの劇伴を作るときでも、過去の楽曲はあんまり聴かないんです。過去の曲に引っ張られて同じような音楽を作ってしまうのであれば、自分なりの解釈で出した音がどこかでその作品なりアーティストさんなりの方向性に合致すればいいかなって思うんですよね。

大渡 そのスタンスは今回、すごく成功している気がします。澤野さんの感覚で作っていただいた曲ではあるけど、最終的に間違いなく僕らの曲になった。歌入れが終わった段階で、それを僕は確信しましたから。

あ、Do Asの曲だな

──レコーディングはいかがでしたか?

大渡 亮

大渡 澤野さんとは初めての作業になるので、どういう形でレコーディングされるかにすごく興味があったんです。なので、リズム録りをまず見せていただいたうえで、ギターを録りました。非常にスムーズで、1日でサクッと終わっちゃった感じなんですけど。

澤野 僕の場合、ベーシックな部分はあらかじめきっちり作っておいて、あとはそれを生に差し替えるだけみたいな感じで進めるんですよ。だから現場でミュージシャンの方と「ああでもないこうでもない」って流れになることはほとんどないんですよね。とは言え、どうしても弾いてもらいたいところは譜面に書いておきますけど、それ以外のところはミュージシャンやボーカリストの方から出てくるものを楽しもうと思っているところもあって。

大渡 そうですね。ギターソロなんかに関しては、僕の中で事前に考えたものを持って挑んだ感じでした。澤野さんが作ってくれたギターフレーズに関しても、こちらとしては難色を示すことは何1つなかったし。ただ、デモでシンセのパートだと思っていたところが実はギターだったところがあって。「あちゃー、そこギターだと思ってなかったですわ」って言って、その場でフレーズを覚えるみたいなことはありましたけど(笑)。

 歌に関しては、サウンド的にちょっと雰囲気をつかむのが難しい箇所もあったんですけど、声をたくさん重ねたことですごく面白い、Do Asの新しいサウンドになっていると思いますね。

澤野 僕自身、伴さんの声や大渡さんのギターがどう乗ってくるのかっていう部分がすごく楽しみだったんですよ。で、結果的には自分の作った曲ではあるんだけど、先ほど大渡さんがおっしゃったように、「あ、Do Asの曲だな」って感覚で聴ける曲になったなって思いました。初めてご一緒する曲ということで、お互いに探り探りな部分はあったと思うんですけど、すごくやりがいのあるコラボレーションになったなって。

──澤野さんはSawanoHiroyuki[nZk]プロジェクトなどでさまざまな女性ボーカリストとお仕事されていますが、伴さんの声にはどんな印象を持ちましたか?

澤野 いやー、ご本人を目の前にして知ったようなことは言えないですけど(笑)、すごくパワーを感じる歌声だなっていう印象はありました。それは単に力強く歌っているとかそういうことではなく、エネルギーを感じるというか。僕は、曲に乗ったときに物語が感じられるような歌声に惹かれるんですけど、伴さんはまさにそういう声を持ってらっしゃるなって思いましたね。

 わ、ありがとうございます。

──今回の楽曲ではより表現力を増した歌声が響いている印象もありますよね。これまでの楽曲からの変化を感じました。

伴 都美子

 え、ホントですか? そう……なんですかね?(笑)

大渡 うん、ホントに歌はどんどんよくなってると思いますよ。昔は歌の低音域がぼやっとしてるところもあったんですけど、そこがすごくシャープになっていったと言うかね。低音であっても、はっきり滑舌よく聞こえてくるようになってると思う。

 滑舌かー(笑)。いやでも今回は澤野さんマジックによるところが大きいんじゃないですかね。楽曲に引き出していただいたというか。

澤野 いやいや、そんなことないですよ(笑)。

大渡 活動の中での変化が今回のセッションでより引き出された部分は確かにありますよね、うん。そういう部分でもすごくいいコラボができたと思います。

Do As Infinity「Alive / Iron Hornet」
2017年6月28日発売 / avex trax
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CD収録曲
  1. Alive
  2. Iron Hornet
  3. Alive(Instrumental)
  4. Iron Hornet(Instrumental)
  5. ハレルヤ! ※CD盤のみのBonus Track
DVD収録内容
  • Alive -Music Video-
  • 特典映像:Iron Hornet -Short Lyric Video- ※初回生産限定盤のみ収録
Do As Infinity(ドゥアズインフィニティ)
Do As Infinity
1999年に結成されたロックバンド。デビュー前より渋谷ハチ公前などで精力的なストリートライブを行い、注目を集める。同年9月にシングル「Tangerine Dream」でメジャーデビュー。2000年より現在の伴 都美子(Vo)、大渡 亮(G)の編成となる。2002年リリースのベストアルバム「Do The Best」がミリオンセラーを達成するなど、幅広い層から高い人気を得るが、2005年9月に解散した。そして2008年8月に開催されたイベント「a-nation'08」にサプライズ出演し、再結成を発表。2009年には結成10周年を迎え、横浜赤レンガ倉庫でのフリーライブや日本武道館での10周年ライブなどを行った。2015年2月に11枚目のオリジナルアルバム「BRAND NEW DAYS」を発表。2016年2月には、過去全シングル28作品をボーカルとギターのみで再レコーディングした2枚のアルバム「2 of Us [RED] -14 Re:SINGLES-」「2 of Us [BLUE] -14 Re:SINGLES-」をリリース。2017年6月に澤野弘之プロデュースによるニューシングル「Alive / Iron Hornet」を発表。同年7月からは自身初の南米4カ国ツアー、8月には台湾でのワンマンライブを行う。
澤野弘之(サワノヒロユキ)
澤野弘之
1980年生まれ、東京都出身の作曲家、編曲家。「医龍」シリーズや、「進撃の巨人」「機動戦士ガンダムUC」シリーズなど、ドラマ、アニメ、映画など映像作品のサウンドトラックを中心に、楽曲提供や編曲をするなど精力的に音楽活動を展開している。2014年春からはボーカル楽曲に重点を置いたプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk]を始動。その第1弾作品としてAimerと、SawanoHiroyuki[nZk]:Aimer名義のアルバム「UnChild」を発表した。2015年2月にはSawanoHiroyuki[nZk]の新作「&Z」と、自身の手がけたアニメーションのサウンドトラックの中からボーカル曲のみをセレクトしたベストアルバム「BEST OF VOCAL WORKS [nZk]」をリリースしている。また2015年はNHK連続テレビ小説「まれ」やWiiU用ゲーム「XenobladeX」のサウンドトラックの音楽プロデュースも担当。9月に1stアルバム「o1」と、澤野名義のサウンドトラックベスト「BEST OF SOUNDTRACK【emU】」を発表した。2016年5月にアニメ「甲鉄城のカバネリ」のサウンドトラックを、6月にはアニメ「機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096」のオープニングテーマおよびエンディングテーマを収録したシングル「Into the Sky EP」をリリース。2017年6月には、自身が劇伴音楽を手掛けるTVアニメ「Re:CREATORS」のオープニングテーマ「gravityWall」を収録した5枚目のシングル「gravityWall/sh0ut」を発表した。