SORA(DEZERT)×生形真一|バンドに命を懸ける2人のクロストーク (2/2)

みんな根本は同じ、バンドのことを思ってる

──SORAさんに伝えたのはウブさん自身の経験を踏まえての言葉だったんですか?

生形 バンドマンは誰でも同じような思いをしてるんじゃないですかね。どこかでみんなそういう壁にぶち当たる。で、それを超えるか超えないかという。もちろん俺にも同じような経験があるし、エルレもナッシングスも紆余曲折がめちゃくちゃありますから。でも、それがバンドの強さにつながるんですよ。

──壁を乗り越えた先にバンドの未来があると。

生形 実際、SORAから相談を受けてしばらく会わなかったんですけど、その間に武道館のイベント(マーヴェリック主催のイベント「V系って知ってる?」)を仕切るようになってて「あ、悩みから抜けたんだな」って。悩みを超えると、バンドって一気に強くなるんで。自分は歳をとって経験を重ねてる分、今はその先のこともわかってる。バンドをやるのがつらいと思うことがあっても、その先にバンドの未来が見える。ただ、20代の頃は俺もわからなかった。そこはSORAと同じ。

生形真一(撮影:ピー山)

生形真一(撮影:ピー山)

──ウブさんもそういうときは誰かに相談したんでしょうか?

生形 相談は……あんまりしなかったですね、昔は。そういうバンド内部のことを外に漏らしたくないっていうのもあったし。その分メンバーとかマネージャーとか、中の人と話しますけど。

SORA やっぱりメンバー同士で話し合うのは大事ですよね。

生形 大事だね。特に今、エルレをやってて思う。それは10年活動休止していたからこそ、すごく感じることで。ナッシングスもそう。どれだけ自分がメンバーに支えられているのか、それを知ってるから話し合いは大事。みんな根本は同じなんですよ。バンドのことを思ってる。

SORA 俺、ウブさんに「意見が違って当たり前なんだ」と教えてもらうまでは、どうしてみんな俺と同じ意見じゃないのかわかんなかった。だって俺はDEZERTを“まっすぐ”やりたかったから。それがカッコいいと思ってたし、バンドのためになると思ってた。でも大人が4人集まって何かやろうってなったら、意見が違うのは当たり前なんだと。

──今は人の意見を尊重できるようになったと?

SORA そうじゃないとメジャーでもやれないし、武道館のステージだって立てないです。もともとメンバーのセルフマネージメントでやってたバンドに、今は10人ぐらいスタッフがついてるんですよ。そしたら、自分のエゴとかやりたいことより、このバンドが一番になるために自分が何をやるべきか?という考えになりましたよね。

生形 俺もそれが一番大事だと思う。バンドのために自分はどうするか。

SORA 全部がバンドに集約されるような人生になってるんです。だから本当は「俺にとってバンドは人生そのもの」って言いたいんだけど、そこまでカッコいいもんじゃないというか。もっと泥臭いんですよ。今も苦悩と葛藤の毎日でしかない。

SORA(DEZERT)(Photo by Megumi Iritani)

SORA(DEZERT)(Photo by Megumi Iritani)

──生形さんは取材のときも、自分を主語にして話すことよりもバンドが主語になってることが多くて。それぐらい自分よりバンドなんだなって。

生形 でもそのことに気付けたのは、ずいぶん経ってからですよ。バンド組んだ最初の頃は誰でも「俺が俺が」になっちゃう。でも今のSORAみたいに、自分よりバンドのことを考えて続けてると、いつのまにか自分の評価もあとからついてくる。自分が目立とうとするんじゃなくて、バンドのためにと思ってがんばってると、自然と自分の評価も上がってる。

SORA ウブさんが言うとすごい説得力がある(笑)。

生形 やっぱりバンドって俺1人じゃ何もできないということを、エルレが復活したときに改めて思わされたというか。俺はすごく仲間に助けられてる。ナッシングスもそうで、始めた頃はとにかく自分が1人で背負わないとダメだと思ってたけど、やっぱりそうじゃないんだなって。

SORA なんか……すげえ。俺、泣きそう(笑)。

今のSORAを見てれば何があっても失敗はない

──DEZERTは初の武道館単独公演を控えてますが、今年2月に2回目の武道館ワンマンを行ったバンドのリーダーとして、生形さんから何かアドバイスがあれば。

生形 もともと俺は武道館でライブをすることにまったく興味がなくて。初めてやったのはナッシングスの10周年のときだったんだけど、メンバーから「やりたい」って言われたのがきっかけだったの。で、いざステージに立ってみて思ったのは、やっぱり特別な雰囲気がある。野音(日比谷野外音楽堂)もそうだけど、ほかにはない不思議な空間なんだなって。

SORA そうですよね。

生形 DEZERTは武道館に向かってここまでやってきたんでしょ? だからあとはもうやるだけ。つまり、成功することは決まってるんだよね。

SORA ……うわあ、すごい。

生形 今のSORAを見てれば何があっても失敗はないと思うんで。

生形真一(撮影:ピー山)

生形真一(撮影:ピー山)

SORA またウブさんに背中押された……やべえ、涙出てきちゃった(笑)。

生形 ははははははは。

──今日の目的は果たせましたか?(笑)

SORA や、マジでありがたいです。もちろん武道館だからってビビらずステージに立てる自信はあるんですけど、少しずつ武道館が近付くにつれて、自然とメンバーの練習量が増えてて。

生形 いいね。

SORA 千秋なんて今日のリハで新曲を何回もやり直して、もう千本ノック状態で。メンバーの感覚が研ぎ澄まされてるというか、エナジーを感じてます。

生形 そういうのはやっぱりメンバーとしてうれしいよね。

SORA はい。で、今日、武道館が成功するって確定したんで(笑)。今すぐメンバーに「俺ら成功するよ」って言いたいです。すごく勇気もらいました。ていうかまた背中を押してもらって申し訳ないです(笑)。やー、ホントにすみません。

生形 あはははは!

プロフィール

DEZERT(デザート)

2011年に結成された千秋(Vo)、Miyako(G)、Sacchan(B)、SORA(Dr)による4人組ロックバンド。2012年に音源を発表し始め、2013年8月に1stアルバム「特製・脳味噌絶倫スープ~生クリーム仕立て~」をリリースした。2013年にはhideのトリビュートアルバム「hide TRIBUTE III -Visual SPIRITS-」で「D.O.D.(DRINK OR DIE)」をカバー。2017年にはMUCC、D'ERLANGERのトリビュートアルバムに参加している。2018年8月にMAVERICK DC GROUPのレーベル・MAVERICKよりアルバム「TODAY」を、2021年7月にアルバム「RAINBOW」をリリースした。2022年6月には初の東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)単独公演を実施。2024年1月にアルバム「The Heart Tree」で日本クラウンからメジャーデビューを果たした。12月27日に初の東京・日本武道館単独公演を行う。

生形真一(ウブカタシンイチ)

1998年にELLEGARDENのギタリストとして活動をスタートさせる。2008年のELLEGARDEN活動休止をきっかけにNothing's Carved In Stoneを結成し、これまでに11枚のアルバムをリリース。2024年には2度目の日本武道館公演を成功させる。またワーナーミュージック・ジャパンとタッグを組み、5月に1st EP「BRIGHTNESS」をリリース。11月にはcoldrainのMasato(Vo)をフィーチャーした最新曲「All We Have feat. Masato(coldrain)」を配信リリースした。ELLEGARDENは2018年に活動を再開し、2022年12月には16年ぶりとなる6thアルバム「The End of Yesterday」をリリース。2023年には5年ぶりとなるZOZOマリンスタジアム公演を含む大規模ワンマンツアーを開催した。