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DELICIOUS LABEL設立20周年インタビュー|レーベルヘッド山中さわお(the pillows)が振り返る、国産オルタナレーベル20年のヒストリー

「俺は責任取るつもりはねえぞ」っていうのでやっている感じ

──ちなみに、さわおさんの中で「DELICIOUS LABELでやる / やらない」の基準って、何かあるんですか?

うーん、まず俺がその音楽のファンであるというのが大前提で……でも、レコーディング以外のことは、俺だけじゃなくて、うちのスタッフがやることでもあるから、彼らが乗り気じゃないものは、やっぱりできないっていうのはあるかな? ちゃんと仲よくやっていけるのか、楽しくやっていけるのかっていう。

──そこも、やっぱり“人”であると。

山中さわお

うん。要するに、DELICIOUS LABELのスタッフは、レーベルに所属している人たちの売り上げで生活しているわけではないから、音楽も人も好きじゃないと、たぶんやってられないんだと思う。自分たちが楽しくやれなければダメというか。

──実際にプロデュースするとき、さわおさんの中で何か方針みたいなものってあるんですか?

俺は、すべての責任は本人たちにあると思っているんだよね。だから、売れなくても俺のせいではないし、売れても俺のおかげじゃないというか。音楽っていうのは、結局自己判断で作っていくものだと思っているから。なので、レコーディングの現場も、一応第三者的な立場でいることを意識してる。とにかく本人たちが、自分のCDを好きにならないと、そのCDになんの価値もないからさ。

──そうですね。

俺自身もミュージシャンだから、自分が言われて嫌な言い方は絶対しないようにしてるし、もし俺が「こっちのがいいんだ」って命令してやらせても、そのことが嫌な思い出としてずっと残り、その曲を聴きたくないってなったら、もうなんの意味もないじゃないですか。だから、まずは本人たちが納得して、自分たちが好きなCDを作ることを一番に考えられるようにしたい。もちろん、俺はいろんな判断がめちゃめちゃ速いし、アイデアの引き出しも経験上いっぱいあるから、それは伝えるんだけど、最終的には本人たちに委ねる。「俺は責任取るつもりはねえぞ」って感じかな(笑)。

“ぼくのともだち”ことHERMITについて

──さわおさんと各バンドの関係性は、わりとサバサバしているんですね?

あ、そうです、そうです。なんかようやく、うまい付き合い方みたいなものを覚えたのかな(笑)。最初の頃は、レコーディングの現場にも、普通のプロデューサーみたいにビッタリいる感じだったんだけど、それをやっていると、こっちはこっちでこだわりが出てきて、譲れなくなってきちゃうんだよね。第4、第5のメンバーみたいな気持ちになってきちゃうから。だから、今ぐらいの距離感が俺にはちょうどいいのかな。まあ、HERMITはもう7、8年ぐらい会ってないけど(笑)。今回のコンピレーション盤のために作ってもらった新曲に関しても、メールでしかやり取りをしていないし。

──そう、HERMITこと岩田晃次さんの存在は、the pillowsの「ぼくのともだち」という曲で歌われていたり、DELICIOUS LABELの中でも、ちょっと特別な感じがするんですけど。

まあ、そうだね。HERMITこと岩田は、俺が中1の頃から仲のいい親友なので。彼は肉体的にも精神的にも体調がよくないやつで、もう7、8年会ってないんだけど、年に2回くらいはこっちから連絡をしてる。で、最近連絡したら、わりと元気なメールが返ってきたから、今回新曲を書いてもらったんだ。彼は絶対に、自分の家で昔ながらのMTRで録音したいって言うんだよね。「うちのスタジオ、使ってもいいんだよ?」って言ったら、「ありがとう。困ったら頼るね」とか言うんだけど、絶対使わないんだよ(笑)。

HERMIT

──これまた、なかなかオルタナティブな方なんですね(笑)。

そう(笑)。彼はSparklehorseというバンドが大好きで、確かSparklehorseも、最初の頃は全部1人でやるようなバンドだったと思うから、多分それに憧れているんじゃないかな。まあ、20年ぐらい前は彼もライブとかをやっていたんだけど、もう最近は人前に出たくないっていう感じになってしまったので、今回のツアーには誘ってもいないんだけど。

──そんなHERMITの貴重な新曲が、今回のコンピレーション盤には収められています。

そうそう、この曲が11年ぶりの音源になるらしいんだよね。でも、ホントに最近はけっこう元気みたいで、「ちょっとまた何か録ってよ」「どんな形にせよ、俺が発信するから」「俺、君の新曲が聴きたいんだよ」って言ったら、「じゃあ、がんばってみるわ」って返ってきたので、今俺は、それを楽しみにしている感じかな。

基本的に何も変わらないし、変えるつもりもない

──なんかいいですね。それも含めて、今が一番、レーベルとしてもいい感じというか。

そうだね。今が一番いいと思う。あと、the pillowsがちゃんとDELICIOUS LABEL所属になったっていうのが俺はけっこううれしくて。

──あ、2016年からthe pillowsも、晴れてDELICIOUS LABEL所属になりましたね。

the pillows

そう、みんなはDELICIOUS LABELっていうインディーズでやっているのに、自分だけはメジャーにいたんだけど、ようやく事務所のスタッフの体制が変わって一緒のレーベルになれた。時代が変わったというか、音楽業界が変わってしまったので、今はもうメジャーにいるからなんだっていう話じゃないですか。特にthe pillowsみたいに、これだけ長いことやっているバンドになると、レコード会社のプロモーターよりも俺のほうが、雑誌の編集者だったりライター、ラジオの担当者だったりと親しくなっちゃっているから、メジャーレーベルに何かをしてもらったっていうことが、あんまり感じ取れなくなってきちゃったんだよね。

──なるほど。プロモーションという意味では、確かにそうかもしれないですね。

やっぱり俺は、もっと自由にやりたいし、誰の意見も介入しないでほしいんだよね。まあそれまでも、かなり好きにやらせてもらってはいたんだけど(笑)。

──2016年というのはそういう意味で、the pillowsにとっても、DELICIOUS LABELにとっても大事な時期だったんですね。

そうだね。あと、THE PREDATORSも、今は名目上はDELICIOUS LABEL所属になっているし、俺がnoodlesのyokoちゃんたちと始めたCasablancaも、一応DELICIOUS LABELの所属なので。

──そう考えると、だいぶ箔が付いてきたというか、かなり層の厚いレーベルになってきましたよね。

そうだね(笑)。ただ、こうなってくると今の体制とか人数では、もうこれ以上アーティストを増やせないというか、隙間がないんだよね。今も普通に「あ、このバンドいいな」とか「やってみたいな」というバンドがたまにいたりするんだけど、誰かを呼ぶなら、誰かを追い出さなきゃいけない(笑)。

山中さわお

──(笑)。そんなDELICIOUS LABELも、こうして20周年を迎えたわけですが、レーベルとして何か今後の展望みたいなものってあるんですか?

うーん、どうだろうな。まあでも、俺らは全員ミュージシャンなので、音楽を作ってそれを発信していくのは日常のことなんですね。だから、これからもその日常が続いていくというか、単純に「明日やることがある」という感じかな(笑)。具体的に言うと、まずTHE BOHEMIANSが今ニューアルバムのレコーディングに入ったところで、それが終わったらたぶんシュリスペイロフのレコーディングが始まるだろうし、それが終わったら俺的にはCasablancaのレコーディングをしたくなるだろうし……とかやっているうちに、もしかしたらHERMITから何か新しい音源が届くかもしれない。その頃にはnoodlesも新曲を作っているだろうし。それがずっと続いていく感じなんだよね。

──そうなると、確かにバンドの数はあまり増やせないですよね。さわおさんはthe pillowsとしての活動もあるわけで。

そうなんだよ。だからまあ、俺らがやることは、基本的に何も変わらないんですよ。やり方を変えるみたいなこともたぶんないだろうし。だから個人的には……この機会に“レーベルのファン”ってものが付いてくれたらうれしいなとか、所属しているバンドがもうちょっとファミリー的に仲よくなったら面白いなとか、そういうことをただ願っているような感じなのかな? やること自体は変えるつもりはないけどね(笑)。

公演情報

DELICIOUS LABEL 20th Anniversary "DELICIOUS BUMP SHOW!!"
  • 2019年7月6日(土)愛知県 THE BOTTOM LINE
  • 2019年7月7日(日)大阪府 BIGCAT
  • 2019年7月12日(金)神奈川県 CLUB CITTA'

<出演者> the pillows / noodles / シュリスペイロフ / THE BOHEMIANS