Dannie Mayって何者?カバー企画Super CRIPに選出されたコンセプチュアルな3ボーカルバンドの歩み

12月7日18:00、3ボーカルバンドDannie Mayの楽曲「ええじゃないか」のカバーが、さまざまなYouTubeチャンネルで一斉に公開された。複数のクリエイターが対象楽曲を同時にカバーするNexToneの新企画「Super CRIP」にこの楽曲が選出されたためだ。

この企画には「歌ってみた」「演奏してみた」などのカバー動画を投稿しているクリエイターが多数参加。演歌界の“ラスボス”こと小林幸子やボンボンTV、よよよちゃん、ガチャピンといった人気チャンネル、クロちゃん(安田大サーカス)、川村エミコ(たんぽぽ)、くわばたりえ(クワバタオハラ)といったお笑い芸人などもエントリーしており、かなりバラエティに富んでいる。また6組のVtuberたちもこの企画を彩る重要な存在になっている。

「ええじゃないか」を生み出したDannie Mayとはいったいどんなバンドなのか? 音楽ナタリーではマサ(Vo, G)、田中タリラ(Vo, Key)、Yuno(Vo, Creator)にインタビュー。バンドの個性的な制作スタイル、自分たちの楽曲のカバーが一斉に投稿される「Super CRIP」に対する印象、そして12月6日に配信リリースされた最新作「青写真」について語ってもらった。

取材・文 / 張江浩司撮影 / NORBERTO RUBEN

「Super CRIP」とは?
「Super CRIP」ロゴ

さまざまなクリエイターが対象楽曲をカバーし、YouTube動画を一斉投稿する企画。新人アーティストのブレイクポイントを作るとともに、クリエイターに話題性と収益を還元する。カバー動画の種類は「歌ってみた」をはじめ、「踊ってみた」「演奏してみた」などチャンネルによって多種多様。さらに、カバー音源はNexTone経由で各音楽配信サービスで配信される。

楽曲は1年に1曲、NexToneが厳選のうえ決定。参加クリエイターはNexToneが提供している、音楽カバー動画における収益向上施策「CRIP」の契約者となっている。

2023年度対象楽曲 Dannie May「ええじゃないか」

Dannie Mayインタビュー

楽しみなYuno、期待してないタリラ、外堀固めるマサ

──もともとマサさんが田中タリラさんと同じボーカルグループで活動していて、そのグループの解散後にタリラさんとYunoさんを誘って……というDannie May結成の経緯はいろいろなところで話されていると思うので、今回はちょっと突っ込んだお話からお聞きしたいと思います。

マサ(Vo, G) あ、話さなくていいんですか。ありがたいです(笑)。

──マサさんがボーカルグループの解散後、次の音楽活動としてなぜバンドという形態を選んだのかなと。ソロアーティストとしてやっていくことも選択肢にあったんじゃないかと思うんですよね。

マサ 正直、そんなに自分に魅力を感じていなかったというか。当時はソロで活動するとなったら弾き語りシンガーになるくらいしか思い当たらなくて、それだとたぶん売れないだろうなと思ったんですよね。ちゃんとみんな幸せになって、音楽で成功できる体制を組もうと思って2人を誘ったんです。

マサ(Vo, G)

マサ(Vo, G)

──「天才コンプレックスがある」とラジオで発言されていましたが、ものすごく俯瞰的な視点ですね。

マサ 突き抜ける人って、何かしら匂いがあるじゃないですか。自分にはそれを感じなくて。

──誘われたお二人はどうでしたか?

Yuno(Vo, Creator) 僕も1人で音楽をやりたいと思ってなくて、エンタテインメントをみんなで一緒に作りたいという気持ちがありました。もともとはONE OK ROCKさん、UVERworldさん、B'zさんとかに憧れていたので、ハンドマイクで歌いたかったんですけど、彼らのようになれる魅力が自分のボーカルにはないと、ずっとどこかで葛藤していて。バンドに誘われる2年くらい前にマサの歌声を聴いて、すごくよかった記憶があったんです。偉そうな言い方ですけど、自分の人生を任せられるボーカルだなと思えたというか。だから、誘われたときはすごく楽しみでしたね。

Yuno(Vo, Creator)

Yuno(Vo, Creator)

田中タリラ(Vo, Key) 人生において何個かバンドをやってきましたけど、1回スタジオに入って「なんか違う」と思って、それで終わることもあったんです。今回もそうなるかもなと思って、全然期待してなかったです。

マサ そんな感じだったんだ(笑)。

タリラ これが生業になるなんてまったく思ってなくて。みんなもそうだよね?

田中タリラ(Vo, Key)

田中タリラ(Vo, Key)

マサ 俺は最初から生業になると思ってたよ!(笑) 何かを自分で始めるのは初めてだったけど、他人の人生を預かるわけですから。

──「バンドやろう」と声かけるのも勇気がいりますしね。

マサ 本当にそうですよ! 告白に近いですよね(笑)。最初の1年は曲作りと並行して、知り合いの事務所に入れてもらったりして、座組みを作ってましたね。外堀を固めてメンバーに安心してもらえるように。

タリラ 事務所に所属するのは初めてだったから、それでちゃんとやるようになったところはあるかも。

マサ 大事だと思うよね。僕も「大事になってきた」と思ってましたもん(笑)。

「暴食」から始まった“MV世界観先”の制作スタイル

──「このバンドいけるぞ」という手応えを最初に感じたのはどのタイミングですか?

マサ バンドを組んだタイミングで「いけるっしょ」と思ってました。僕は両極端で、自分という人間に対してはまったく自信がないんですけど、自分の作品にはずっと自信があるんですよね。

──冷静なジャッジと直感的な自信が両立してるんですね。

マサ ジャッジが曖昧だと自分の好きなものばっかり作るようになっちゃう気がして。ポップミュージックを作るうえで、そこがノイズになることがあると思ってるので、自分の好みと作品は切り分けたほうがいいと考えてるんですよ。

マサ(Vo, G)

マサ(Vo, G)

──タリラさんがバンドとして手応えを感じたのはいつでしたか?

タリラ 「暴食」(2019年11月発表のEP表題曲)ができたときですかね。細かい話ですけど、ブラスが入ったアレンジがうまくできたんです。「こんな曲が作れたんだ」と自分でも誇れるクオリティになったし、MVが完成したときにも「プロっぽいな」と思って。

マサ 確かに、すごいMVだよね。

タリラ MVはチームがよかったんですよね。出演してくれた河合優実さんも、今やすごく活躍されてますし。河合さんがいろんなものをただ食べるという映像なんですけど、演技がすごすぎて涙が出たんですよ。

Yuno 僕は「今夜、月のうらがわで」(2019年6月発表)のデモを渋谷駅のモヤイ像の前でマサが聴かせてくれて、「これはいけるじゃん」とぼんやりと思ったことを覚えてます。それが「暴食」で確信に変わったというか、ギアがグッと上がった感じで。「暴食」こそまさしく、MVの世界観から曲を作るという、我々独自の制作スタイルを始めた曲なんですよ。あの曲から「俺たちは売れるまでのレールに乗った」と思った。

マサ 「暴食」はまだ3作目だよ? 俺より自信あるな(笑)。

──この制作方法はDannie Mayの大きな特徴ですよね。まずYunoさんがMVのコンセプトを決めて、そこから曲作りがスタートするという。

マサ Yunoが身の回りのことへの怒りだったり葛藤だったりを言語化するのが上手なんです。僕は寝たら忘れちゃうんで(笑)。Yunoから強烈な種をもらえるから、曲作りの面ですごく助かってますね。

──いわゆる普通のバンドだと、Yunoさんが歌詞を書いてマサさんが作曲、タリラさんが編曲という分担になると思うんです。Dannie MayはYunoさんがコンセプト、マサさんが作曲、タリラさんがアレンジして、最後にマサさんが作詞しているので工程が1つ多いんですが、このやり方が一番皆さんに合っているんでしょうね。

マサ そうですね。ストレスはないので。

タリラ 普通のバンドみたいに担当の楽器があったら、こうはならなかったかもなあ。僕はライブで鍵盤を弾いてますけど、キーボーディストという自覚はあまりなくて。明確な担当がないゆえに、固定観念なく柔軟に考えられるのかもしれないですね。

田中タリラ(Vo, Key)

田中タリラ(Vo, Key)

Yuno(Vo, Creator)

Yuno(Vo, Creator)

「雨降って地固まる」初ワンマンは雨降りまくり

──ほかのインタビューでマサさんは「2人がいいやつだから声をかけた」と言っていましたが、変わらずメンバーの仲はいいのか気になります。

マサ 一度めちゃくちゃ仲悪くなって、最近また仲よくなりました(笑)。今でもクリエイティブにおける言い合いはありますけど、一時は人として「この野郎!」みたいな時期もありましたね……。特にここが(自分とタリラを指して)。

Yuno 1年間くらいあったね。

マサ 結成して2、3年目くらいか。

タリラ 本当に心底嫌で。仲よくみせるのは無理だから、「ライブはマサよりうまく歌おう」とか「マサよりいい曲作ろう」とか、そう思うことで精神を保ってました。その頃さんざんぶつかったんで、今はもうそういう感情はないです。

マサ 雨降って地固まるっていう言葉がありますけどね、WWWでの初ワンマン(2021年11月開催)の直前はもう雨降りまくりで(笑)。ライブできるのかな?っていうくらいでした。

タリラ ワンマンを最後に解散する話も出てたんですよ。

マサ そうだったね。

Yuno 2人のすれ違いがすごすぎて、同じ場所にいたくなかったです(笑)。

タリラ 今は大丈夫すぎて、この話も普通のテンションで話せます。

マサ うん、ちゃんと仲いいです。

Dannie May

Dannie May