小林幸子さんが自分たちの曲を歌う日が来るとは
──今回「Super CRIP」という初の試みに、Dannie Mayの楽曲「ええじゃないか」が選ばれました。数百アーティスト、数千曲の候補の中から、「Super CRIP」のスタッフがDannie Mayのライブを観て、この曲にすることを決めたそうです。
マサ 政治とか忖度とかなしで選んでくれたのが何よりうれしいです。
──参加する皆さんの顔ぶれが幅広すぎますよね。
マサ ガチャピンがいて、クロちゃんもいて(笑)。
Yuno 「紅白」で観てた小林幸子さんが自分たちの曲を歌う日が来るとは、音楽を始めた頃の僕からしたら想像もつかないですよ。昔のMAD文化がすごく好きで、常々僕らの作ったものでいろんな人に遊んでほしいと思ってたから、この企画はすごく楽しみです。
マサ まだ皆さんの音源や動画は見れてないんですけど(※取材は11月中旬に実施)、「ええじゃないか」はインターネット発の音楽とロックを融合させたような楽曲なので、それをどうやって歌ってくれてるのか気になります。みんなが僕たちの曲を好きに使ってくれてるのが、すごく現代っぽくていいなと。
──この曲は最初からネットとの親和性を意識して作られたんですか?
マサ 僕は作る曲がマニアックになってきてるなと思ったら、和風のコード感を取り入れるというのを定期的にやってるんですね。ネット音楽もそういうコードで展開するものが多いから、それが自分たちに合うんじゃないかと思ったんです。それにTikTokとかで流行っているような、フックがめちゃくちゃ多い曲を作ればバズるかもなと。基本的にはバズらせたいっていうスタンスなんで。
「ええじゃないか」はドスの効いた声で
──「ええじゃないか」を歌うにあたってのポイントはどこでしょう。
マサ 和のメロディなので、それに引っ張られすぎない歌い方にするのがミソだと思いますね。でも、小林幸子さんが思いっ切りご自身の歌に寄せて歌ったらどうなるんだろうな。
Yuno 皆さんがそこまでカバーしてるかわからないですけど、2番のAメロに「ええじゃないか ええじゃないか」という歌詞があって、そこはメロディに一番ハマっている部分なんです。「ええじゃないか」という楽観的な言葉を使っているけど、歌詞の意味的にはけっこう黒い背景があるので、ドスの効いた声で歌ってみるといいかもしれないです。
タリラ 歌唱のポイントからはちょっと外れるけど、僕はリミックス的なものとか、勝手に音をはめちゃってるものを聴いてみたいですね。この企画が盛り上がって、リアレンジとかそういう音源もどんどん作られるようになってほしい。
──皆さんもほかのアーティストの楽曲をカバーやコピーしたことがあると思うんですが、そこから得られるものはありますか?
タリラ 絶対にありますね。「なぜここはこういうアレンジになっているのか」とアレンジャーの意図を考えながらコピーすると、自分のアレンジの幅が超広がります。絶対に自分じゃやらない音の重ね方があるので。その人の音楽的なルーツも見えますし、引き出しが増えますね。
マサ Dannie Mayでもカバー動画をYouTubeにアップしたことありますけど、作曲的に言えばカバーをするとコード進行とかめちゃくちゃ勉強になることが多いです。
タリラ でも、結局は自分の「カッコいい」に従って作品は作るので。知識を持ったうえで、感覚で作ることが大事だと思ってます。
──Dannie Mayが次回の「Super CRIP」に参加するとしたら、誰の楽曲をカバーしてみたいですか?
マサ 俺らがやるとしたらちょっと手を加えるよね。誰の曲をリアレンジしたいかな。
タリラ すでに細かくアレンジされてる楽曲はやりがいないかも。そういう意味だとシンプルなバンドサウンドかな。
マサ ああ、グソクムズやりたい! めっちゃ好きなんですよ。ああいう曲調をネット音楽風にリアレンジしてみたい(笑)。全然違うものを掛け合わせるのが面白そう。
タリラ カネコアヤノとか、ハンバート ハンバートの曲もやってみたい。
Yuno 工藤祐次郎さんの「かなしいうた」もいいな。
マサ 原曲にリスペクトを持ちつつ、いろいろやってみたいですね。
人の匂いとリアルがあふれ出た「青写真」
──12月6日にはデジタルEP「青写真」がリリースされます。
Yuno 今年の5月に1stアルバム「Ishi」、その後シングル「Boom Boom Boom」と「コレクション」の2曲を発表したんですけど、「じゃあ僕たちはそこからどこに向かうのか」という意味で「青写真」というタイトルなんです。リードトラックは「東京シンドローム」になるんですけど、この曲のコンセプトは僕じゃなくてマサから出てきたものなんですよね。
マサ 僕、制作期間中にパニックっぽくなっちゃって。電車にも乗れないみたいな。「田舎に帰りたい」という気持ちも出てきちゃって、音楽を続けられるのか?っていう不安もありました。でもその状況に負けたくないと思っていたら、「僕ら起こしてく大歓声」という歌詞が出てきて。本当に、そのときに考えたことを書き殴った曲なんですよね。現状の嘆きと将来への理想が1つになった曲です。
Yuno マサのことはもちろん心配だけど、ここで音楽をあきらめていいのかという気持ちもあったときに、マサが「東京シンドローム」を持ってきたんです。「青写真」はこれからどうなっていきたいかを外に対して見せるコンセプトなのに、「東京シンドローム」は歌詞がめちゃくちゃ内省的じゃないですか。初めて僕らを知って聴く人には、どういう楽曲なのか伝わらないかもしれない。でも、このタイミングでマサが吐露した言葉をリード曲にすることは、すごく意味があると思うんです。
──確かに4曲目の「3分半の反撃」のほうが歌詞でもサビでのサウンドの広がり方からしてもリード曲らしいのかもしれないけど、それでも「東京シンドローム」を持ってくるのが今のDannie Mayのリアルなんですね。
マサ EP全体ですごくロックな作品になったと思ってて。サウンド的にどうこうというよりは、嘆きも夢物語もあって、現代の若者のロックという感じです。
──Dannie Mayは曲の作り方にしても、すごくコンセプチュアルだしシステマティックにやってきたと思うんですけど、ここにきてそれを食い破るようにドロッとしたエモーションが曲からあふれ出てきてるのが興味深いです。
マサ 確かに、人の匂いみたいなものはすごく意識しました。「Ishi」のときも自分たちの課題だと感じてたんですけど、SNSとかプラットフォームが成熟していけばいくほど、やっぱり人の匂いがするものにみんな惹かれていくと思うんです。作り込まれたエンタメは、ある種のパワーゲームになっちゃう気がして。システマティックに制作することに限界も感じていたし、そのときは葛藤も含めて自分のリアルな感情に強さがあると思ったから、それを曲にしたっていう。自然なことではありますよね。
──「東京シンドローム」のアレンジは、イントロはカオスですけど、それを抜けるとギター主体のシンプルなバンドサウンドですよね。
タリラ イントロにはマサの家の最寄り駅で使われている電車の開閉音や救急車のサイレン音のドップラー効果をサンプリングしたり、人生で出した中で一番デカい悲鳴を録音して入れたりしてるんです。マサのパニックとか、恐怖を反映しようと。でもカオスなままじゃなくて、そこから突き抜けるようなアレンジにしました。
マサ ストレートなアレンジができるようになったのは、「ええじゃないか」の頃からバンドとして成長できた部分かなと思いますね。
──来年早々に東京、大阪でワンマンライブがありますが、2024年はどのような年にしていきたいですか?
Yuno めちゃくちゃライブが楽しいバンドだという自負はあるんですよ。「青写真」の4曲が集まったことでさらに強化されたので、来年以降はもっといろんな場所に行ってライブして爪痕を残したい。この楽曲を携えてまた1年暴れ回りたいですね。
タリラ Yunoに同じくなんですけども、まだ行ったことのない地方もいっぱいあるし、初めての人とたくさん出会いたいです。
マサ 来年はアホほど売れたいです。「Super CRIP」もあるし、ほかにもお知らせできることがいっぱいあるんで、やれることやってアホほど売れたい、以上。っていう感じですね。
ライブ情報
Dannie May ONEMAN LIVE「青写真」
- 2024年1月26日(金)大阪府 Music Club JANUS
- 2024年2月1日(木)東京都 WWW
プロフィール
Dannie May(ダニーメイ)
同じボーカルグループで活動していたマサ(Vo, G)、田中タリラ(Vo, Key)と、過去に別のボーカルグループに所属し映像クリエイターとして活動していたYuno(Vo, Creator)が2019年に結成した3ボーカルバンド。作詞作曲、アレンジ、コンセプト立案と役割を分担しながら、あらゆるジャンルをブレンドした楽曲を送り出している。2019年11月に初めてのCD作品であるEP「暴食」を発表。2022年8月に初のドラマタイアップ曲「ぐーぐーぐー」を配信した。2023年5月に1stアルバム「Ishi」、同年12月にEP「青写真」をリリース。2021年7月発表の楽曲「ええじゃないか」が、NexToneのカバー企画「Super CRIP」の2023年度の対象曲に選出され、さまざまなクリエイターにカバーされた。
Dannie May(公式) (@DannieMay_info) | X