CUBERS×福田花音|シーンの垣根を越える“つんく♂の因子”

CUBERSがメジャー1stアルバム「MAJOR OF CUBERS」をリリースした。

音楽ナタリーではアルバムの発売を記念して、アルバム収録曲「Yeah! 僕らは変わらない」の作詞を手がけた福田花音(ex. アンジュルム)との対談を企画した。ハロー!プロジェクトの一員として10年以上活動し、つんく♂から多大な影響を受けてきた福田は、つんく♂の提供曲「メジャーボーイ」でデビューを果たしたCUBERSのどのようなところにシンパシーを感じ、歌詞を書き上げたのか。CUBERSの5人が「このご時世だからこそ聴いてほしい」と語る「Yeah! 僕らは変わらない」の制作エピソードを語り合ってもらった。また特集の後半にはZOCの一員として5年ぶりにアイドルとしての活動を再開させた福田の心境も明かされている。

取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 佐々木康太

福田さんが小学生の頃から観てました

TAKA 福田さんはCUBERSのことをいつ知ったんですか?

福田花音 つんく♂さんの曲でメジャーデビューをするボーイズグループがある、と聞いて知りました。私がアンジュルムを卒業するときの曲はつんく♂さんの曲ではなかったので、アイドルでつんく♂さんの曲を歌えるなんてうらやましいと思って。「メジャーボーイ」を聴いて、“つんく♂さん節”をすごく感じたし、ひさしぶりにつんく♂さんの曲を歌いたいなってシンプルに思いました。

末吉9太郎 僕は福田さんが小学生の頃から観客席で観てたんですよ! 福田さんがしゅごキャラエッグ!(テレビアニメ「しゅごキャラ!」シリーズのテーマ曲を担当していたハロプロエッグ内のグループ)として活動していたときから「この人はすごい!」と思っていたので、今回作詞を手がけてくださるのが本当にうれしくて。

TAKA 僕らは9太郎からハロプロのエッセンスをいろいろ教えてもらっているんですよ。つんく♂さんの曲でメジャーデビューが決まったときはつんく♂さんのことをいろいろ教えてもらったし。今回福田さんが作詞をしてくださることになって、9太郎からは「それがどれほどすごいことか」とものすごく熱弁されました(笑)。

福田 実はメジャーデビュー後もCUBERSの音楽に出会ったことがあったんです。居酒屋さんのカウンターで1人飲みをしているときに「妄想ロマンス」(CUBERSのメジャー2ndシングル)が流れてきて。「いい曲だな」と思ってメモをしておいたことがあるんです。

9太郎 ちょっと待ってください。すごくうれしいんですけど、居酒屋のカウンターで1人ってどういうことですか?

福田 普通に商店街の居酒屋さんとかで飲むんですよ。

9太郎 神様が居酒屋のカウンターに座ってるみたいなことですよ?

福田 (笑)。私、けっこう1人で飲むのが好きなんですよ。もちろん誰かと一緒にワイワイ飲むのも楽しいんですけど、みんなといるときに「そろそろ帰ろう」って言うのが苦手なんです。でも1人だったらパッと飲んで好きなときに帰れるから気軽でいいなって。

9太郎 素敵……。

福田 私、街中とかでいい曲に出会ったらすぐに検索してメモをしておくようにしているんです。それで「妄想ロマンス」を登録しようとしたら、歌っているのがCUBERSさんだったので、「あ、あのグループだ!」って。

綾介

綾介 「妄想ロマンス」は福田さんに歌詞を書いていただいた「Yeah! 僕らは変わらない」と同じく、ひろせひろせ(フレンズ)さんが書いてくださった曲なので、何か縁を感じますね。

福田 それとCUBERSさんの楽曲をよく編曲している大久保薫さんともつながりがあって。実はZOCとして活動する前にいろいろと大久保さんに相談していたんです。なので、今回お話をいただいてCUBERSさんのことを調べれば調べるほどいろんな接点があって、私もビックリしちゃいました。

タイムトラベラーなんじゃないか

綾介 福田さんはCUBERSのことをどう思って「Yeah! 僕らは変わらない」の歌詞を書いたんですか?

福田 打ち合わせのときにスタッフさんがおっしゃっていた「ファンの方との距離を大事にしている」という言葉が印象的だったんです。アイドルの活動規模が大きくなるときって、どのグループも「遠くに行っちゃいそうで寂しい」って言われるんですよね。私も実際に言われたことがあって、そのときに感じた「もっと素直に、まっすぐ応援してくれたらいいのにな」という思いを歌詞にしてみました。

TAKA

TAKA 確かにメジャーデビューをしてから「遠くに行っちゃいそう」って言われることもあります。

9太郎 僕、歌詞の中でも「もう!らしくないテンション」の「もう!」の部分が大好きなんです。ここ、すごく福田さんっぽい表現だと思うんですよ! でもここを歌っているのは春斗くんで……。

春斗 そうですね。僕が歌わせてもらってます。

9太郎 もうね、全部1人でフル歌唱したいくらい好きな曲になりました。大好きです、この曲。

TAKA 福田さんがこの歌詞を書いたのは時期的に今年に入ってすぐくらいのはずですけど、「目の前に君が居る 特別なことなんだ」とか「世間の噂に 例え真実が負けそうでも」とか、自粛期間中に歌詞を読んだらハッとするようなことが書かれていて。もしかしてタイムトラベラーなんじゃないかって思うくらいで(笑)。

福田 ふふふ(笑)。まさか世の中がこうなるとは思ってもいなかったけど、私はアイドルを卒業してから5年くらい経っていたので、私にとってはファンの方の前でライブをすることというのが当たり前じゃなくなっていたんですよね。それでSNSでしか交流の機会がなかったこともあって、こういう歌詞を書いていたんです。それが不思議と今のご時世とリンクしたのかな。

9太郎 思うようにライブができない状態の中で、僕たちとファンの方との空間をちゃんと守っていきたいと思っているときに「僕らは変わらない 守る場所があるから」という歌詞の曲を歌わせていただけるのがすごくありがたいし、うれしい。早くお客さんに直接ライブで届けたい曲ですね。

CUBERS

福田花音、仮歌を歌う

9太郎 そもそも福田さんが男性アーティストの歌詞を書くのは初めてですよね?

福田 はい。実はそこがけっこう戸惑ったところでした。私、女性の中でも特に女性脳というか、詞を書いていると自然と女の子の目線になるし、女の子っぽい言葉で詞を書くことが多いんですよね。男性の方に歌っていただく詞をどう書けばいいのか悩んでいたんですけど、CUBERSのスタッフさんに「福田さんの目線で書いてくれていいですよ」と言っていただいてからはすごく気持ちが楽になって。

 ひろせさんの曲が先にあって、あとから福田さんが詞を書いたんですよね?

福田花音

福田 はい。すごく明るくてライブで盛り上がりそうな曲だし、これで私が最悪な歌詞を付けてお蔵入りになったらどうしよう……と思うくらい素敵なメロディだと思いました。私も歌いたいなと思っちゃって。

9太郎 実は「Yeah! 僕らは変わらない」の仮歌を福田さんに歌っていただいて……。

福田 仮歌のつもりで歌ったんじゃなかったんですよ(笑)。詞を書き終えて、譜割りを説明するのが難しいから自分で歌って送ったんです。まさかメンバーさんがそのまま仮歌として聴くとは思ってなくて。

春斗 その福田さんの仮歌がめちゃくちゃうまいんですよ。

9太郎 福田さんが詞を書いて福田さんが歌った時点で、もう1つの作品なんです。仮歌って歌を覚えるために聴くものなんですけど、福田さんが歌った曲を流すと普通に作品として楽しんでしまう自分がいて。何度も何度も繰り返し聴くんですけど、逆に歌を覚えられなかったんですよね。今朝も福田さんの歌を聴いてました。

TAKA 9太郎は僕らが歌った「Yeah! 僕らは変わらない」より、福田さんが歌ったバージョンのほうが多く聴いているかもしれない(笑)。