Creepy Nuts|デビュー失敗続きのたりないふたり、ついにメジャーデビュー

自分の黒歴史を肯定したその先

──自分の汚点や黒歴史を題材にした曲作りはこれまでにもやってますが、「だがそれでいい」は今までで一番強い肯定だと思いました。

R-指定 そうですね。これまでは自虐してみたり、「俺にはこういう恥ずかしいところがあるんすよねー、ダメなところがあるんすよねー」みたいなニュアンスの言葉を言ったりしてたんです。でも、今回は「俺の何が悪いんや」みたいな心持ちで書いてる。

──だから、メッセージが今までより力強い。リスナーに向けた救いの手をグッと差し伸ばしているような感覚がありました。

R-指定 自分で書き上げたときに、こういうことを中学生、高校生時代に言ってくれるアーティストがいたらもうちょっと勇気付けられたかもなって思いました。僕らは自意識が芽生えだしたときにRHYMESTERとかに救われたんですけど。

DJ 松永 曲が上がったときに、「俺も学生時代に聴いてたら感銘を受けただろうな」と思いましたね。当時聴いてたら救われただろうなと。今までこういう曲はなかったから。ここまで具体的に肯定してくれる人って意外と初めてなんじゃないかと思うんですよ。

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──確かに、自分の黒歴史をここまでさらけ出して肯定してくれる人はいなかったかも。

DJ 松永 そう。ここまでガッツリそこにフォーカスして、まるっと曲単位で肯定してくれる……ガッと自分のイタい過去をほじくり返して全肯定するような曲はマジでなかったと思うんです。

──Creepy Nutsの表現には「俺のことを認めてほしい」という承認欲求と、卑屈な劣等感と、「だけど負けたくない」という自負心が入り交じって生まれる葛藤が大きく根っこにあると思うんです。その発露の仕方がメジャーということで変わりそうだと思っていますか?

R-指定 メジャー云々は置いといて、年を重ねて作品を作るたびにいろんな方向に進んで行くものなのかなと思ってます。それこそインディーズで作った2枚も地続きではあるけど、全然違う発露の仕方になってるし、今回もまた違う方向に目が向いたし。

DJ 松永 人としての成長と共に表現も変わるほうが自然だと思うんです。以前、「むしろ変わらないほうが不自然だよね」っていう話をR-指定ともしてたから。

R-指定 ヒップホップと言うか、こういう音楽こそ、人の成長と共に変わっていく音楽やと思うんです。成長すれば中身も成長するみたいな。僕らは一発目から完成形っていうタイプのアーティストではないからこそ、年を取っていくたびに変化していくんやろうなあって思いますね。

Creepy Nuts

──表現という部分ではどうですか? Creepy Nutsは今回の1曲目のようにヒネった物言いやメタ的な表現を持ち味にしていますが、それはどんな変化をしていきそうだと思いますか?

R-指定 どうなんでしょう……でも「たりないふたり」(2016年リリースのミニアルバム)のときは外側からの客観的な目線で曲を書いてたのが、「助演男優賞」(2017年2月リリースのミニアルバム)では助演と言いながらも“主役”と言うか、自分でも責任みたいなものを請け負うようになってきて。それで今回はちゃんと自分自身を主観で書けるようになりました。客観視してたときは、自分に自信がなかったと言うか……周りのものがすべてよく見えて、自分が劣ってるように、失敗してるように見えてたんですよね。でも今回はそういう自分を一旦肯定したんで、次はどうなるんやろうなと自分でも楽しみにしてます。

過去の“デビュー失敗”が今につながってる

──最後に、今回のシングルのタイトルにちなんで、お二人の“デビュー失敗”エピソードを教えてください。

DJ 松永 俺は中学生のときは完全に“性欲ないキャラ”でいってたんです。「シコるってなんですか?」みたいな。でも途中でこれは無理があると気付いて、フェードインで入っていこうというふうに切り替えて。

R-指定 フェードイン、使うよな。

DJ 松永

DJ 松永 学生時代で一番怖いのは、「あ、コイツ、キャラクターの切り替えに入ったな」って思われる瞬間だと思うんです。それこそ高校デビューや大学デビューのタイミングが一番ナイーブなんで、そこで足元をすくわれるのが一番怖い。僕の中学校は体操着に名前の刺繍が入ってたんですけど、その糸を抜くのがワルのたしなみだったんです。でも、僕は一気に抜くのが怖かったんで毎日授業中にちょっとずつ抜いて(笑)。あと体操着が、裾がキュッとしてるタイプだったんですけど、それをブカブカにするのが流行ってたんです。それも夜な夜な裾に辞書とかを入れて、ちょっとずつ伸ばしていきました。もともとキュッとしていた体操着なのに、1年くらい経つと「あら不思議」っていう。そうやってフェードインで入っていくことによって「松永ってもともと刺繍も抜いてあるし、もともと裾の広いズボンを履くヤツだよね」という認識を、みんなの脳にゆっくりと刷り込むことが可能なんですよね。

R-指定 俺は中学のときはとんでもないエロいキャラで行こうと思って、そういう類いのことは全部知ってるくらいのノリだったんですけど、中学くらいになるとそういう行為を実際にするヤツが出てきて、「これはアカン、太刀打ちできへんな」と(笑)。高校のときはそれこそラップですね。ラップが好きなキャラ。ただ周りに理解者がいなくて「ラップが好き」と言ってもバカにされるだけやったんで、今となってはミスっていたと思います。

DJ 松永 ラップ好きキャラは通用しないんだよね。「どんな音楽を聞くの?」とか言われて「言ってもわかんないと思うけどねー」っていう空気を出してたでしょ?

R-指定 完全に出してた(笑)。出してたし、エミネムの曲とかを耳コピでワンバースくらい歌えるようにしてカラオケのときに必殺技として持って行くんですけど、そもそも周りのヤツらはエミネムを知らんから「はあ?」みたいになる(笑)。

DJ 松永 俺も当時は今よりさらに空気が読めなかったから、カラオケで1人で「CHAIN REACTION」(2003年にMURO feat. UZI, DELI, Q, BIGZAM, TOKONA-X, GORE-TEXが発表したナンバー)とか、“1人ブルース・ブラザース”とかガンガンやってた。

──映画「ブルース・ブラザース」?

DJ 松永 はい。カラオケでラップを歌い始める前は、洋楽しか歌ってなかったんです。「ブルース・ブラザース」を小3のときに観て音楽を好きになったんで、小学校のときは洋楽しか聴いてなくて。カラオケに行って最初に歌ったのもThe Beatlesの「Lady Madonna」だったし。

R-指定

R-指定 それもヤバいな(笑)。

DJ 松永 だから周りからは「一緒にカラオケ行きたくない」って言われてた。空気崩れるからって(笑)。

R-指定 俺にはLARDというラッパーの仲間がいたからまだよかったけど。大みそかにLARDと2人でカラオケに行くのが定番になってて、最初はTRFとかDA PUMPとかお互いに懐メロで牽制し合うんですけど、どっちかが急にキングギドラとか放り込み始めるんです。そうすると「おおー」となって、じゃあ俺はジブさん(Zeebra)ソロで、みたいな感じでやり合ってて。一番LARDを感動させたのは、俺がnobodyknows+の「ココロオドル」を1人で全部声色を変えてやったとき。それが今につながってるんです。

──Creepy Nutsの「みんなちがって、みんないい」につながった。

R-指定 そう(笑)。カラオケではほかにもICE BAHNとか韻踏合組合とかも歌ってたもんなあ。でも周りは何が起きてるのかわからへんから「なんでこんなにいっぱい文字が画面に出てくるの?」って(笑)。今作の3曲目でも歌ってるけど、「そのキャラは全然モテへんぞ」と当時の自分に言いたいですね(笑)。

Creepy Nuts「高校デビュー、大学デビュー、全部失敗したけどメジャーデビュー。」
2017年11月8日発売 / クリーパーズ
Creepy Nuts「高校デビュー、大学デビュー、全部失敗したけどメジャーデビュー。」完全生産限定盤

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3000円 / XSCL-30~1

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Creepy Nuts「高校デビュー、大学デビュー、全部失敗したけどメジャーデビュー。」通常盤

通常盤 [CD]
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Creepy Nuts「メジャーデビュー指南」
2017年10月27日先行配信開始
収録曲
  1. メジャーデビュー指南
  2. “悩む”相談室メジャーデビュー特別編(構成:佐藤満春)
  3. だがそれでいい
全国ツアー「高校デビュー、大学デビュー、全部失敗したけど“遂に”メジャーデビュー。」
  • 2018年2月2日(金)大阪府 BIGCAT
  • 2018年2月12日(月・祝)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2018年2月14日(水)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2018年2月25日(日)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
  • 2018年3月2日(金)愛知県 名古屋ReNY limited
  • 2018年3月9日(金)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2018年3月16日(金)新潟県 NEXS Niigata
  • 2018年3月21日(水・祝)東京都 TSUTAYA O-EAST
Creepy Nuts(クリーピーナッツ)
Creepy Nuts
MCバトル「ULTIMATE MC BATTLE」大阪大会で5連覇、「UMB GRAND CHAMPIONSHIP」で3連覇を成し遂げた経歴を持つ大阪出身のラッパー・R-指定と、「DMC JAPAN DJ CHAMPIONSHIPS」国内2位でTOC(Hilcrhyme)のバックDJなどでも活躍する新潟出身のDJ 松永によるユニット。観客が投げたお題でR-指定がフリースタイルを披露する“聖徳太子フリースタイル”などを織り交ぜた、観客を巻き込む形のライブパフォーマンスで人気を集めている。2016年1月に1stミニアルバム「たりないふたり」を、2017年2月に2ndミニアルバム「助演男優賞」を発表。2017年11月8日にはソニー・ミュージックエンタテインメントよりメジャーデビューシングル「高校デビュー、大学デビュー、全部失敗したけどメジャーデビュー。」をリリースする。