AV業界用語と“落語感”を入れた「メジャーデビュー指南」
──あと、「メジャーデビュー指南」にはさりげなくAV業界用語を散りばめてるのも面白かったです。
R-指定 “S級素人”とか“企画 to the 単体”とか。あれはちょっとしたダブルミーニングで、まず“企画女優”ってバトルMCみたいだなって思ったんです。バトルには出てるけどまだCDをリリースしてないMCたちは企画女優のような段階。で、“単体女優”はようやくライブに呼ばれたり、インディーズでアルバムを出せるような段階。で、“専属女優”はメジャーと契約みたいだなって。
DJ 松永 そんな深い意味あったんだ?
R-指定 そう。企画、単体、専属っていうのはAV業界だけじゃなく、俺らの世界にも通じるなと思って。
DJ 松永 それ、わかりづらいから絶対注釈するべきだよ(笑)。
R-指定 あはは(笑)。
DJ 松永 でも、今回“メジャーあるある”にしなかったのはR-指定の英断だったなと、作りながらつくづく思いました。実は企画段階では“あるある”方向で行こうっていう流れになってたんですよ。で、R-指定から歌詞のプロトタイプが上がってきて話したときに、“あるある”ってよく考えたら食傷気味で、この段階でそれを出すのは違うかもねって。確かにそうだなと思いましたから。
──かつ、それを会話劇に昇華するっていう。もともとR-指定は1人2役ラップが得意だけど、さらにこの曲は漫才っぽい作りですよね。
R-指定 ああ、そうかも。ずっと1人しゃべりをしながら作ってたし、もともと落語が好きなんで、そういう部分も出てるのかもしれません。
DJ 松永 ライブでも上手役と下手役で分けてやるんでしょ、また(笑)。そう言えば、「この曲は落語の『あくび指南』(古典落語の演目の1つ)にインスパイアされてるんじゃないか?」って気付いてる人が何人かいたな。
R-指定 マジで? 気付いてもらえてよかった。一応ちゃんと最後に下げっぽい言葉で終わらせてるんですよ。なんとなくそういう感じにしてるんです。
SNSは筒抜けやからこそ監視されてるような気がする
──3曲目「だがそれでいい」は、どんな思いから書いた曲なんですか?
R-指定 メジャーとの契約が決まったときに「高校デビュー、大学デビュー、全部失敗したけどメジャーデビュー。」というフレーズが頭に浮かんで。で、“失敗を肯定する”をテーマにしたいなと思ったんです。ただ、1曲目と同じで“デビュー失敗あるある”みたいな内容で終わらせたくないなと。
──こっちは「あるある」じゃなくて、過去のこじらせてる自分にメッセージを贈っていく手法を採ってますね。
R-指定 今の時代はSNSでいろんな人の近況もわかるし、過去もわかるし、全部筒抜けと言うか。でもそれで羽を伸ばして自分を表現できるかと言ったら、むしろ筒抜けやからこそ監視されてるような感じも受ける。自分を思いっきり表現することがやりにくなってると思うんです。「これを言ったらバカにされる」とか「これをやったらイジられるんじゃないか」と精査しながらつぶやいたり、写真を撮ってる。「それ、楽しいか?」って思うんです。
──1つのしくじりで大炎上っていう場合もありますし。
R-指定 俺らが十代の頃はこんなに広い世界に発信されるとはわからずにやってたから、まったく精査してないんですよ。俺の書いたMyプロフィールがあんだけヤバいのは、ホンマに2、3人の友達を笑かすために上げてるから。「アイツ、これ好きやったな」「アイツ、これで笑うで」っていう感覚で書いてるから、俺が言いたいことだけを言ってる。なおかつ、俺らの頃はちょっとイキがってもそんなに文句を言われる時代じゃなかったんで、みんなすっごいことをしてる(笑)。
DJ 松永 R-指定のプロフィールも、プロフィールなのにめっちゃ韻を踏んでて“ラップ好きですアピール”がヒドいんです。あと“モテたい”“変わったヤツに見られたい”“カッコいいと思われたい”って思いが全部入ってて。
R-指定 そう。でも、今はあそこまでイケる奴があんまりいないと思うんです。
DJ 松永 昔はあのくらいのヤツがほとんどだったよね。当時は精査しようという発想がなかった。
R-指定 今はそういうことやると笑われてしまう時代なんで。痛いヤツみたいな。ただ、そういうことを気にして縮こまって何もせず、無難に後ろ指を指されないように生きるより、はみ出して失敗しまくって痛い過去を多く作ったほうが、人間としては厚みが出るのになあって思うんです。それを自分的にちゃんと表現したかった。なおかつ、それって今の俺らにも重なると思ったんです。メジャーという大きな舞台に踏み出すときに絶対失敗とか迷走とかはあるから。そこで最初から怖がって無難に行くだけやと、そもそもデビューする意味がないなって。
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自分の黒歴史を肯定したその先
- Creepy Nuts「高校デビュー、大学デビュー、全部失敗したけどメジャーデビュー。」
- 2017年11月8日発売 / クリーパーズ
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完全生産限定盤 [CD+Tシャツ]
3000円 / XSCL-30~1 -
通常盤 [CD]
1000円 / XSCL-32
- Creepy Nuts「メジャーデビュー指南」
- 2017年10月27日先行配信開始
- 収録曲
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- メジャーデビュー指南
- “悩む”相談室メジャーデビュー特別編(構成:佐藤満春)
- だがそれでいい
- 全国ツアー「高校デビュー、大学デビュー、全部失敗したけど“遂に”メジャーデビュー。」
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- 2018年2月2日(金)大阪府 BIGCAT
- 2018年2月12日(月・祝)福岡県 DRUM LOGOS
- 2018年2月14日(水)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2018年2月25日(日)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
- 2018年3月2日(金)愛知県 名古屋ReNY limited
- 2018年3月9日(金)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2018年3月16日(金)新潟県 NEXS Niigata
- 2018年3月21日(水・祝)東京都 TSUTAYA O-EAST
- Creepy Nuts(クリーピーナッツ)
- MCバトル「ULTIMATE MC BATTLE」大阪大会で5連覇、「UMB GRAND CHAMPIONSHIP」で3連覇を成し遂げた経歴を持つ大阪出身のラッパー・R-指定と、「DMC JAPAN DJ CHAMPIONSHIPS」国内2位でTOC(Hilcrhyme)のバックDJなどでも活躍する新潟出身のDJ 松永によるユニット。観客が投げたお題でR-指定がフリースタイルを披露する“聖徳太子フリースタイル”などを織り交ぜた、観客を巻き込む形のライブパフォーマンスで人気を集めている。2016年1月に1stミニアルバム「たりないふたり」を、2017年2月に2ndミニアルバム「助演男優賞」を発表。2017年11月8日にはソニー・ミュージックエンタテインメントよりメジャーデビューシングル「高校デビュー、大学デビュー、全部失敗したけどメジャーデビュー。」をリリースする。