どうしてこんなに長い詞が書けるんですか？

──ZAQさんのような楽曲制作術って川本さんの目にはどう映ります？

川本　アニメ＝自分になりきっているっていうことは、自分の気持ちに素直になってこの詞を書いているとも言えるわけですよね？

ZAQ　そうですね。

川本　どうしてこんなに長い詞が書けるんですか？

ZAQ　いや、これでもかなり削ったんですけど……。

川本　えーっ！ こんなに言葉がたくさん出てくるっていうのがすごいですよ。

──いや、ポップなメロディに乗せて言葉を畳みかけるのって……。

水島　川本さんが先鞭を付けたスタイルですよね（笑）。

川本　ちょっと作り方が違うんじゃないかなと思うんですよ。私は自分からかけ離れたタイプの主人公を設定して詞を書くことも多いので。ZAQさんは自分の気持ちに素直にこの量の歌詞が書けるんだ！と思って。たぶん私の気持ちに素直になったら「カタラレズトモ」の1コーラス分くらいの分量しか書けないですから。

一同　はははは（笑）。

ZAQ　でも私も100％自分の思いだけを書くとなると、けっこう困るかもしれないですね。今回だって「コンクリート・レボルティオ」という作品そのものであったり、主人公の爾朗やほかのキャラクターであったりに乗り移って、その作品や人になったつもりで書いてるわけですし。だから一人称も僕にしてますし。

水島　爾朗ってたくさん言葉を入れないと理解できないめんどくさいキャラですしね（笑）。

川本　ストーリーや爾朗からヘルプをもらえるから、これだけの言葉を書けるっていうところもあるんですか？

ZAQ　はい。特に今回はヘルプしてもらいました。さっきお話したように水島監督にもアドバイスをもらってますし。

女子も音作りをする時代

川本　あとZAQさんは作詞、作曲、編曲もすべて自分でされるんですよね。それを聞いたときに「うわー、もう新世代！」って思って（笑）。

ZAQ　うれしい！ 私、新世代ですか？

川本　私の世代だと子供の頃にケータイはもちろんなかったですし、パソコンだって持ってる家があるかないかって感じだったので。作詞や作曲はするけど、アレンジをDTMでっていう女子はなかなかいないと思います。でも私の10個くらい年下だったり、もっと若かったりする女の子だとZAQさんみたいな人もいるし、ヒップホップのベーシックトラックを全部作る子もいるじゃないですか。

ZAQ　iPadでも作曲できちゃうから、確かに気軽にDTMを始める女性ミュージシャンは多い気がします。

川本　やっぱそういうのって慣れなんですかね？ ちっちゃい頃から機械とかに慣れてるからとか、愛着があるからっていう理由もあると思うんですよ。

ZAQ　でも実は私、機械にめっちゃ弱くって。パソコンも全然使えないんですよ。

川本　え!? いつもはどんなソフトを使って作ってるんですか？

ZAQ　作曲とアレンジにはLogicを使ってるんですけど、パソコンにインストールされているほかのソフトは全然触れないんです。Logicを起動して、録音ボタンを押して、MIDIキーボードを弾くことしかできないという（笑）。

川本　じゃあ逆に言えばLogicが使えたらもう十分作曲とアレンジができるってことですか？

ZAQ　そういうことになるんだと思います。

川本　そっかー。私もちょっとやってみようかな（笑）。

もうフェスできるぞこれ！

──ここまでお話を聞いてきて「『コンクリート・レボルティオ』って本当に音楽家に恵まれた作品なんだなあ」という印象を強くしたんですけど……。

水島　それはホントにランティスさんのチョイスの素晴らしさというか。「あの素晴らしい愛をもう一度」をはじめ、挿入歌を何曲も作ることが決まったとき、川本さん以外にも歌い手さんの名前にヒダカトオルさんであったり、曽我部恵一さんであったり、石田ショーキチさんであったり、僕自身本当に好きで聴いていたアーティストさんが並んでたんですよ。当然そのラインナップを見た僕は「ホントにこれ、頼めるんですか？」って感じだったんですけど、ランティスさんは「いけます！」と。

──本気ですごいラインナップですけど、ホントに「いけた」んですか？

水島　ホントに「いって」しまいました（笑）。もうなんか小躍りする感じですよね。「フェスできるぞ、これ！」って。

川本　やりましょうやりましょう！

水島　そうですよね。すでにここにシンガーソングライターが2人も集まってるわけですし。

ZAQ　「コンクリート・レボルティオ」の楽曲を歌ってるわけじゃないけど、声優さんにも「アイドルマスター」で歌っている中村繪里子さんがいて……。

──上坂すみれさんや豊崎愛生さんや鈴村健一さんも音楽活動をなさってますし、“歌える”役者さんはけっこう揃ってます。

水島　だからすごいラインナップのフェスができそうなんですよね（笑）。でもフェスは半ば妄想だとしても、先ほど言ったように、アニメ本編の中で川本さんたちに歌っていただいた挿入歌が流れるシーンってどうしても尺が短くなってしまうから、ホントにもったいないなとは思っていて。今、どうにか皆さんの曲を長い尺でお届けできるようにいろいろ企んでみたりはしてるんですよ。なのでぜひオンエアを楽しみにしていてください。