対戦が苦手な方にも“やり込み勢”にも満足のいくものに
八王子P ボカロPとしての目線で言うなら、音楽が軸になるアプリが「#コンパス」で作られるというのは単純にうれしく思いましたね。今回の「ライアリ」に関しては、わりと初期段階から開発会議みたいなものに僕も参加させてもらっているんですよ。縦画面で作られていた試作バージョンを見せてもらって「縦はやめといたほうがいいだろうなあ」と思ったりとか。
佐藤 あはは(笑)。
八王子P 最終的にはちゃんと横画面に落ち着きまして(笑)。先ほど開発中の最新バージョンを試遊させていただいた感覚で言うと、音ゲー部分の完成度はもちろん、キャラクターのグラフィックやモーションのクオリティが高いなと。先ほどから何度も話に出ている「対戦は苦手だけどキャラクターは好き」という人たちにとって、かなり満足のいくものになっているんじゃないかと感じました。
佐藤 対戦が苦手な方はもちろんですけども、そもそもゲーム自体をあまりしない方でも無理なく楽しんでいただけるよう、難易度の設定が4段階あったり、無制限オートプレイやリプレイ機能なども盛り込みました。その一方で、もともと音ゲーが好きな“やり込み勢”の方々に満足いただけるところも、もちろんきちんと目指して作っています。
──間口は広く、奥も深くというか。
佐藤 そうですね。オンラインでのマルチプレイは基本的にプレイ報酬を得るための仕組みになっていて、組んだ相手のうまいヘタがスコアに影響しません。なので、あまりゲームに自信がない方でも安心してマルチプレイを楽しんでいただけると思います。
──「ライアリ」には、八王子Pさんがバトル版に提供した楽曲「バイオレンストリガー」も収録されます。言うまでもなく、これはもともと音ゲー用に作った曲ではないわけですよね。
八王子P 「ライアリ」の楽曲は、自分の曲に限らず全部がそうですね。少なくともリリース時に実装されるものに関しては。
──それが音ゲーに使われるのって、作り手としてはどういう心境になるものなんですか? 例えばですけど、「音ゲー用にイチから作らせてくれよ」みたいに思ったりするのでしょうか。
八王子P それはまったくないですね。もちろん「新規で書き下ろしを」とオーダーいただいた場合であれば、リズムやメロディなどのディテールを音ゲーに最適化しながら考えて作っていきますけど、そういうふうに作っていないものが使われるのも、それはそれで全然うれしいというか。一度世に出したものに関しては「どうぞ皆さんの好きに遊んでください」みたいな、僕はわりとそういうスタンスなんで。
──逆に、想定しない形で面白がってもらえることがうれしい?
八王子P そういう気持ちもありますね。音ゲーで言えば、「この部分をその形で譜面にするんだ?」みたいな開発側の発想が面白かったりもするし。音ゲーに限らず、例えば二次創作とかに関しても同じです。歌詞の解釈なんかも含めて僕はわりとみんなに委ねているので、自分から「こういうふうに楽しんでほしい」と言うのではなく、みんながどう受け取ってくれるのかを楽しみにしたい。だから、「どんどん使ってくれ」という気持ちでいますね。
「ライアリ」だからこそできるコラボ
──リリース後の展開についても教えてください(取材は7月上旬に実施)。大きなコラボなどが順次展開されるとのことですが。
佐藤 はい。まずはリリース後すぐに、バトルのほうでも過去に何度もコラボしてもらっている鏡音リン・レンとのコラボが始まります(※イベント期間は7月29日から8月11日まで)。ゲームの中でリンやレンが3Dモデルになってダンスを披露してくれるというのが企画の目玉になっております。
林 従来の音楽ゲームでも、楽曲のコラボ自体はよくある形だったと思うんですけども、“ご本人登場”というのはなかなか珍しい形なんじゃないかなと思っております。
佐藤 その後も、葛葉さん、不知火フレアさんといったVtuberさんとのコラボも予定しています。もちろん、そのお二人にも3Dモデルとしてライブステージに登場していただく形になります。既存の「#コンパス」ユーザーの中にもVtuber好きの方はいらっしゃると思いますし、そうでない方にとっても、双方のコンテンツに興味を持つきっかけになってくれたらうれしいですね。
八王子P 「#コンパス」って、数あるアプリゲームの中でもかなりコラボが盛り上がるタイプのアプリだと思うんですよ。その文化を「ライアリ」でも継承していってほしいですし、「ライアリ」だからこそできるコラボの形もあるんじゃないかと思いますね。本家の「#コンパス」は歴史も長い分ちょっと隙がなくなってきているというか、成熟している状態なんですよ。もちろんそれがよさでもあるんですけど、それこそVtuberとのコラボなんていうのは、なかなか今の「#コンパス」では想像しづらいわけです。
林 確かに……。
八王子P その点、生まれたばかりの「ライアリ」には“まだ何者でもない”強みがある。「#コンパス」ではリーチできないであろう層にも、「ライアリ」なら届く可能性があるわけです。それによって、自分たちの好きなコンテンツを楽しんでくれる人がもっと増えたらうれしいですよね。それは開発に関わっている人間としても、いちユーザーとしても思います。
林 最初にもお話ししたように、「#コンパス」は開発側でガチガチにコンセプトを固めるというよりは「いろんな要素を取り入れながら、みんなで楽しいものにしていきたい」という思想が根底にあるので、コラボもその一環です。風通しをよくして外部の要素も取り入れながら「ライアリ」という世界を広げていきたい、という意図があります。
佐藤 ちなみにコラボキャラクターに関しては、コラボ期間が過ぎたら終わりではなく、ずっと遊べる仕様になっています。もちろん入手できるのは期間中だけになるのですが、一度手に入れたキャラクターはその後もゲーム内で使い続けることができますので、ぜひ期間中にゲットしていただければと思います。各キャラクターに季節限定のボイスが仕込んであったり、誕生日を祝ってくれたりもしますので(笑)、ぜひ長いスパンで楽しんでいただきたいですね。
八王子P あと、「ライアリ」で新規に「#コンパス」の世界に触れる方もいると思うんですけど、そういう方はぜひ「#コンパス」も遊んでみてほしいです。「ライアリ」で好きになったヒーローを「#コンパス」では自由に動かすことができるので、ぜひプレイしてみてください。
林 一番プロデューサーっぽい発言(笑)。
佐藤 確かに(笑)。
八王子P あははは(笑)。
プロフィール
八王子P(ハチオウジピー)
ボーカロイドを使用して音源制作をするボカロPとして活躍するアーティスト。クールな四つ打ちトラックにキャッチーなメロディを乗せたダンスチューンを得意とする。2009年12月、ニコニコ動画で公開した「エレクトリック・ラブ」が注目され人気ボカロPの仲間入りを果たした。2012年2月、アルバム「electric love」でメジャーデビュー。2016年6月には活動開始8周年を記念して、ベストアルバム「Eight -THE BEST OF 八王子P-」をリリースした。2017年8月に全曲で初音ミクをフィーチャーしたアルバム「Last Dance Refrain」、2019年8月に「エレクトリック・ラブ」投稿から10年を記念したミニアルバム「GRAPHIX」を発表。2022年8月に約3年ぶりとなるアルバム「HIDEOUT」をリリースする。