- パーソナリティ
- 菅野結以
自分のブラッシュアップに努めた2年間
──シンガーソングライターとして1人で活動するようになったのは、どういう経緯で?
卒業して進路をどうしようかというときに、「音楽をやっていくんだったら基礎的なことをちゃんと勉強しないといけないな」と思って、名古屋の専門学校に進学する道を選んだんです。もしそのときにデュオをやっていた相手を熱心に誘ってたら2人で名古屋に行ってたかもしれないですけど、「まあ相手の人生は相手の人生だからな」という変に大人ぶった考えがあって。そいつは結局「先生になる」と言って京都の大学に行きました。
──全然違う道ですね。何年間デュオでやってたんですか?
3年間です。
──3年間デュオでやってて、そこから1人になるのはけっこう大変じゃないですか? お笑いだったら、コンビがピンになるみたいなことじゃないですか。
かなりの変化でしたけど、そのことについては全然考えてませんでしたね。名古屋に行ってとりあえずがんばって勉強して、自分をブラッシュアップする2年間にしようと思っていました。
──専門学校ではかなり揉まれました?
高校ではマイクを通したライブをできなくて。アンプもエレキギターもべースもドラムもなくて、アコギだけだったんですよ。時間がありすぎてみんながギターを持ってるような環境だったんですけど、その代わりバンドというものにまったく触れてなくて。専門学校に入って初めてスピーカーから出てくるベースやエレキの音を聴いて、揉まれたと言うかショックだったかな。
──音楽の世界がグッと広がった感じですね。
「ソロでやっていこう」と思っていたんですけど、やっぱり自分だけじゃできないことも多くて、1人でやっていこうか悩んでいたときに同級生のギタリストからバンドに誘われて。クリスマスに専門学校の中で一番うまいバンドを決めるオーディションのようなものがあったんですが、それでグランプリを取るために初めてバンドを組みました。で、グランプリを取って。
──おお、すごい!
専門学校の中で一番になったんですけど、グランプリを取るために結成したバンドだったので、目標がなくなってしまって。たぶん1年ぐらいしか活動してなかったと思います。それで、自分を中心にしたバンドを別に組んだんですよ。前のバンドでは誘ってくれたギタリストが曲を書いて、それに僕が歌詞を付けて歌うというやり方だったんですけど、今度は僕がイチからメンバーを集めて曲も歌詞も書いて、バンドメンバーとアレンジしていって。そのバンドでヤマハの「Music Revolution」というオーディションの「JAPAN FINAL」まで行ったんです。
「はんぶんこ」が縁をつないでくれた
──シンガーソングライターとしての活動を始めたのはいつだったんですか?
専門学校を卒業して2年くらいで「JAPAN FINAL」まで行ったんですけど、そのあと東京に行って歌詞やステージングについて習ったり、ボイストレーニングを受けたりするようになって、2年くらい前に上京したんですね。名古屋にいるほかのメンバーもそれぞれ活動できるようになってましたし、ずっとバンドでい続ける必要もないなと。「僕も東京でがんばってみようか」と思って、結果的にソロになりました。
──バンドメンバーが名古屋にいても上京したのは、プロとしてやるには東京のほうがいいと思ったからですか?
そうですね。バンドをやってるときも「最終的には東京に行かなきゃ」と思ってたし、メンバーも僕が東京に行くことに全然反対しなくて、むしろ「行ってこい」みたいな感じでした。
──なるほど。そこからデビューに至ったのは、どういうきっかけで?
ヤマハ主催のオーディションだったのでヤマハさんにお世話になりつつ、オーディションのファイナルを観に来ていた今の事務所にも気にかけてもらっていて。そのとき歌った「はんぶんこ」がどちらにも響いたみたいで、結果事務所に所属することになり、シングルを出せることになりました。
──「はんぶんこ」が縁をつないでいったんですね。メジャーデビューしたいとはずっと思ってたんですか?
思ってました。専門学校に入るって決めたときからずっと「次の目標はメジャーデビューだ」という気持ちがあったので、メジャーデビューが決まったときはすごいうれしかったですね。
──どんな感じで言われるんですか? 「メジャーデビューするぞ!」みたいな電話がかかって来る?
たぶん、皆さんが思っているようなものじゃないと思う(笑)。けっこうフワッとしてました。
──メジャーデビューする実感はありますか?
こうやって取材を受けると実感が出てきますね(取材は8月末に実施)。「メジャーデビューが決まりましたけど」と言われて、「あっ、決まったんだよね」って(笑)。でもまだちょっとぼんやりしていて、CDショップに自分のCDが置かれているのを見てやっと「メジャーデビューしたな」と思うのかもしれないです。これがタチの悪いドッキリじゃないことを祈ってます(笑)。
──ドッキリだとしたら、みんなだいぶ長いこと仕掛けてることになりますね。
ここまで来たら本当に出せばいいのにっていう(笑)。
ラブソングのようでラブソングじゃない曲
──ずっと夢だったメジャーデビューシングルの表題曲の1つを「はんぶんこ」にしようと思ったのは、やっぱり縁をつないできた曲だから?
そうですね。最初に出すなら「はんぶんこ」しかないなと。スタッフのみんなも同じように思ってましたし、やっぱり「はんぶんこ」が僕をここまで導いてくれたと言うか。
──この曲はどうやって生まれた曲なんですか?
専門学校時代にこの曲の原型を作ったんです。僕は歌の中で歌詞が一番大事だと思っているので、いつも歌詞を書くときに悩むんですけど、「はんぶんこ」はすんなり書けまして。ラブソングのつもりで書いてたんですけど、できあがってみたらラブソングのようでラブソングじゃない曲になりました。自分がどこまで1人でがんばっていけるのかわからない、終わりの見えない未来への恐怖が20歳の僕の心にはあって。恋人という関係だけじゃない、親子や友人関係で、独りよがりだったものを分かち合えること、自分をかたどる人生の半分を預けられるような、かけがえない人に出会えた喜び、そしてその幸せをこの歌に込めました。
──ただのラブソングじゃないというのは、すごくわかります。男女の恋愛のことだけじゃない、すごく大きな愛の歌と言うか、「人と人とのつながりってこうだよな」と思わされます。私は「僕が僕を忘れたときは君の中の僕を分けてください」という歌詞が好きで。
ありがとうございます。
──会うと自分を取り戻せる関係ってあって。それってアーティストとファンの関係にも言えるかもしれないし、人と人のあらゆるつながりに置き替えられる普遍的な、10年後、20年後に聴いてもしっくりハマる曲だなと思いました。
やっぱり人って1人じゃ生きていけなくて、誰かに自分を映すことでやっと自分が見えてくるんですよね。そこの歌詞が好きだって言われたの、すごくひさしぶりかもしれないです。
──本当ですか。すごく素敵な歌詞です。
そのあとの「いつか空に呼ばれるときも君がいれば何も怖くないよ」という歌詞のほうがよくピックアップされますね(笑)。でも、人によっていろんな箇所が響いてくれるのはすごくうれしいです。
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無駄を省いた行動が一番無駄な気がした
- 須澤紀信「はんぶんこ / 夢の続き」
- 2017年10月4日発売 / ヤマハミュージックコミュニケーションズ
- 収録曲
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- はんぶんこ
- 夢の続き
- 君は誰かのヒーロー
- 友だち
- はんぶんこ(instrument)