- パーソナリティ
- ピエール中野
「Coming Next Artists」の第2回は、メジャー第2弾作品となるミニアルバム「猛暑ですe.p」をリリースした女性シンガーソングライター・ヒグチアイが登場。2歳でピアノを習い始めるという音楽的バックグラウンドを持ちつつ、若い頃からひねくれていたというヒグチの来歴や歌詞に見る恋愛観、彼女なりの“ポップ”が詰まった新作の魅力について、ピエール中野(凛として時雨)が迫った。
取材 / ピエール中野(凛として時雨) 文 / 田中和宏 撮影 / 上山陽介
- ヒグチアイ
- 1990年11月28日生まれ。香川生まれ長野育ちで、2歳からピアノを習い、18歳でシンガーソングライターとして活動を開始。大学進学と共に拠点を東京に移す。年間150本以上のライブを行い、年令や性別を問わず、幅広い層の支持を獲得。2014年2月に初の全国流通盤となる1stアルバム「三十万人」をリリースした。2015年3月に2ndアルバム「全員優勝」を発表し、全国40カ所でツアーを実施。最終公演を東京・WWWにてバンド編成で行い、チケットを完売させた。2016年11月にアルバム「百六十度」をテイチクエンタテインメント内のTAKUMI NOTEから発表し、メジャーデビュー。2017年1月に「百六十度」を携えた東名阪ワンマンツアーを行い、全国ツアーで4月の長野・NAGANO CLUB JUNK BOX公演まで各地を回った。7月にメジャー2作目のミニアルバム「猛暑ですe.p」をリリース。同月末に「FUJI ROCK FESTIVAL '17」に初出演し、8月下旬より東名阪ツアー「ヒグチアイ(夏)ソロコンサート~まだまだ猛暑ですツアー~」を開催する。
小4で「さよならオリンピック」を作曲
──2歳からピアノを始めたそうですが、音楽一家なんですか?
母親が音楽の先生でした。ピアノのレッスンは別の先生のところで習っていて、練習がとても嫌だったけど、2歳って物心付いてたのかな。
──3、4歳からかな、僕は家でYMOを聴いていたのを覚えてます。
すごい記憶(笑)。私は幼稚園の年長さんの頃、レッスンが嫌で寝たふりをしてましたね。でも兄もピアノをやっていてコンクールで賞を取っている姿を見ていたので、レッスンは嫌だけど褒められたいって理由でずっとクラシックピアノを続けていました。
──そのときはクラシックしか弾いてなかったの?
クラシックばかりでしたね。でも小学校1、2年生のときにKANさんの「愛は勝つ」とか世の中で流行る曲がカノンコードに当てはめられることを知って。メジャーコードで作られてる童謡とかを全部マイナーにして友達の前で弾いて遊んでました。
──曲を作り出したのはいつ?
小学校4年生の頃、長野オリンピックがあって、「さよならオリンピック」ってタイトルの曲を書いた記憶があります。タイトルしか覚えてなくて、曲が書けたらそれで終わりでした。
──小学校高学年のときに校長先生から呼び出されたエピソードがあったそうですね。
ああ(笑)。その頃からひねくれていたんです。近くの公園で爆竹を鳴らしていたら近所の人が学校に連絡したみたいで。厳しい家庭だったのでゲームセンター行くのとか寄り道とかもダメだったんですけど、それで親にも全部バレちゃったんです。中学時代もまっとうに生きているつもりでしたけど、世間的にはヤンチャに見えただろうし、「楽しいことがすべて」みたいな毎日を送ってました。
長野でヒップホップグループから学んだこと
──音楽自体は続けていたの?
はい。高校に入ってから東京事変のコピーバンドを組みました。
──今って刄田さん(畑利樹 / ex. 東京事変)がライブサポートでドラム叩いてますよね? ヒグチさんの歌と相性がいいなあと思いました。
刄田さんのドラムは当時から好きだったんです、だからあの頃の自分に自慢したい(笑)。でもそのコピバン自体は受験シーズンに入ってから集まれなくなって。私はそのタイミングでは大学に行くつもりもなかったし、1人で音楽をやるならオリジナルだろうと思って、改めて曲を書き始めたんです。
──そのときの曲は今も残ってたり、歌ってたりするの?
全然歌ってないですけど音源はありますね、ひどいものが(笑)。実家にあるグランドピアノは調律してないから半音くらい音が下がったままで、録音はパソコンとかで使う通話用のマイクを使ってたので音割れもひどくて。
──そうやって音源を作りつつ、ライブもやるようになっていったと。
弾き語りの初ライブは地元のNAGANO CLUB JUNK BOXでやったんですよ、出演者がヒップホップグループ2組と私っていう(笑)。長野の一番大きいライブハウスだったし、お客さんが全然入ってなかったんですね。でもそのヒップホップグループの方々が「うしろのほう見えてるか!」って、まるでお客さんがいっぱいいるかのようなパフォーマンスをしていたのが衝撃的で。フロアが暗かったからかもしれないですけど、そういう姿勢はすごく勉強になりましたね。
──どの状況下でも折れないでしっかりと自分たちのステージをやるっていうのは大事だよね。
いまだにお客さんが少ない局面に立たされると思い出しますね。私のライブは「盛り上がれー!」って煽る感じではないけど、心を強くしようって。
──長野から東京に出てきたきっかけは?
音楽をやりたかったので、大学に行くことを条件に上京しました。長野にいた頃にいろんなところにデモ音源を送っていて、気にかけてくれた事務所の人が「東京でやるんだったらここのライブハウス出なよ」って紹介してくれたんです。当時は渋谷7th FLOORによく出てましたね。
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物販に長蛇の列、衝撃を受けた女性SSWの世界
- ヒグチアイ「猛暑ですe.p」
- 2017年7月5日発売 / TAKUMI NOTE
- 収録曲
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- 猛暑です-e.p ver-
- 夏のまぼろし
- みなみかぜ
- やわらかい仮面(※アニメ「闇芝居」5期エンディングテーマ)
- ラジオ体操
- 妄想悩殺お手ガール
- 残暑です
2017年8月24日更新