3人共欲張りな性格
mabanua 皆さんのルーツに当たるバンドってどんな方たちなんですか?
フジムラ 僕は音楽を始めるきっかけになったのがSOPHIAなんです。
mabanua え、僕が若い頃にカバーしてたバンドですよ。「“Rockは詳しいぜ”」って歌詞の……。
フジムラ 「ビューティフル」ですか?
mabanua そうそう! 僕もよく聴いてたなあ。
フジムラ 僕らの世代でSOPHIAが好きな人はあまりいないんですけど、姉の影響でよく聴いていました。それと父親がギターやベースをやってたのもあって、家にある楽器に触っていくうちにバンドに興味を持ち始めた感じですね。楽器をやり始めてからはACIDMANを好きになって、メチャクチャ聴き込んでコピーもしてたので、ACIDMANもルーツといえると思います。
知 僕はルーツというか、自分の中のヒーローが奥田民生さんなんです。曲だけじゃなくて生き様にもすごく憧れてて、民生さんの息子になりたいぐらい好きです(笑)。
mabanua 遺伝子を継ぎたいってことだから、相当だね(笑)。
知 好きすぎて、夢の中で民生さんと共演したこともあるんですよ。その夢を正夢として実現させるのが、僕が抱いているバンドでの目標でもあるんです。あと、民生さんが聴いてたロックバンドも聴くようになって、RadioheadとかOasisとか、洋楽のバンドも僕のルーツに当たるかもしれません。
mabanua Yurinくんのルーツは?
Yurin 小学校の頃に母親の車で流れていたのがジョン・レノンとThe Beatlesなんです。親も音楽が好きでアコースティックギターを買ってくれたから最初は趣味というか、遊びの一環でギターを触り始めて。バンドを組んだのは中学校に入ってからで、最初にコピーしたのはBUMP OF CHICKEN。そこからELLEGARDENやASIAN KUNG-FU GENERATIONといった日本のロックバンドを聴くようになりました。それ以外でずっと好きなのはYUKIさんや椎名林檎さんですね。
mabanua サイダーガールの音源を聴いて、エルレとかアジカンっぽさはすごく感じていて。ただギターのコード感とかにはUKロックっぽさがあるし、サビや間奏でリズムがガンガン変わるところにはJ-POPっぽさもあって、今皆さんのルーツを聞いて腑に落ちた感覚がありました。
Yurin 3人共なんでも欲張っちゃう性格だから、それがサウンドに出ているのかもしれません。
わざとらしさを感じさせずに飽きさせない
──mabanuaさんにはサイダーガールの最新アルバム「SODA POP FANCLUB 2」の音源にも触れていただきました。アルバムを聴いた感想はいかがでしたか?
mabanua すごくバラエティに富んだアルバムで、どの曲もアレンジがしっかりして聴き応えがあったんですが、僕は特に「約束」が好きですね。
Yurin ありがとうございます。
mabanua 「約束」のような胸を鷲掴みにされる曲が大好きなんですよ。これはどういう思いを込めて作った曲なんですか?
知 この曲は僕らサイダーガールが今まで築いてきたギターロック的な音楽性で戦いたいという気持ちを前面に出した曲ですね。アルバムの中にはシーケンスを重ねて作ってる曲もあるんですけど、「約束」に関してはシーケンスを重ねていなくて。バンドを構成する4つの楽器だけでもちゃんとカッコいいギターロックを作れることを表現したかったんです。
mabanua 最後のアウトロに向かっていくところ、ちょっと涙が流れそうになったもん。たぶん自分が高校生だったらずっと涙流して聴いてますね。
フジムラ 僕らも演奏してて一番感情がこもっちゃうのが「約束」かもしれないです。
mabanua アルバムを作るときはコンセプトみたいなものを考えるんですか?
Yurin はい。ただ、今作「SODA POP FANCLUB 2」はちょっと特殊で。僕らの音楽はわりと身近なこと、例えば生活感だったり、人間臭さだったりを歌ったものが多いんですけど、今作には「サテライト」とか「スーパーノヴァ」とか宇宙を連想させるような曲も入っているんです。ただそういった宇宙のことも6畳の狭いワンルームから妄想しているような曲として作っているので、僕らがこれまで表現してきた身近な感じは今作でも共通していると思います。
mabanua 映画「家族のはなし」の主題歌「dialogue」はサウンド的に壮大な曲だし、曲によって表情が違うのが印象的でした。
Yurin アルバムを通して聴いてもらうときに気持ちよく聴けるのはもちろん、シャッフルで聴いたり、1曲だけ聴いたり、どういう聴き方をしてもらっても楽しめるように意識はして、それぞれの曲を制作しています。
mabanua アレンジ面で1つ聞きたいことがあって。編曲の仕事をしてるとお決まりのように提供相手から「もっと高揚感を」とか「もっと音数を」って言われるんですよ。僕の場合は曲を提供するときもあんまり音を詰め込みすぎないようにしてて。わりとミニマルな形で曲を渡すと「もっと音数を」って言われちゃうんですよね。
Yurin わかります。「もっと派手にしてほしい」みたいな注文って多いですよね。
mabanua そうそう。だけどサイダーガールのサウンドってわざとらしさを感じさせずに飽きさせないアレンジ、わくわくするようなアレンジが散りばめられているんだよね。そのコツみたいなものを今日は聞きたかったんです。
Yurin mabanuaさんにおっしゃっていただいた「飽きさせないアレンジ」っていうのは僕らもすごく意識しているところです。曲を作ってアレンジまでやってると、当たり前なんですけど自分たちが一番多くその曲を聴くことになるんです。で、完成するまでに何度も聴いていく中でどこかしら「ここ飽きてきたな」って部分が出てくることが多くて。その部分をどうすれば飽きなくなるかを考えて、コード感を変えたり、リズムパターンを変えたり、いろいろ話し合いながら決めています。
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3人に共通している劣等感、葛藤