インタビューでその概要が明らかになった新作「Beat in Love」。ここからは、サウンドの中核を担うDJ CLAZZIQUAIに各曲について解説してもらおう。楽曲のアイデアが浮かんだ瞬間や制作時のエピソードなどの秘話が盛りだくさん。また全ての楽曲が試聴可能となっているので、CLAZZIを未体験の人はこの機会に聴いてみてほしい。

DJ CLAZZIQUAIによる「Beat in Love」全曲解説

01. Freedom [試聴]

以前僕がカナダのバンクーバーに住んでいた時の話なんですが、ある日パーティが終わって、それでもなんだか物足りなくてさらにアフターパーティまで行くことになって。アフターパーティって「クラブパーティが終わってからもその流れでもう少し楽しみたいな」っていう人たちがどこか違う空間で開くものじゃないですか。で、そのアフターパーティの会場がすごく小さいハコで、DJブースが別個にあるというよりはハコの一角にぽちっとDJブースを作って、ラッパーがいる感じだったんですけど、そのとき「Freedom」と叫ぶ歌詞が何度も出てくる曲が掛かってたんですね。DJをやっている日本人の友人がプレイしていたんですが。ふとその当時の場面が頭の中でよみがえってきて、僕も「Freedom」を力強く叫ぶような曲を作りたい、という気持ちが高まってそこから生まれた曲です。

歌詞はやや重めかもしれないとも思うんですが、内面を描いている部分を「Freedom」という前向きな単語で解いていく、という内容で、曲自体はノリの良さを前面に打ち出しています。3rdでは控えめだった本格的なハウスだと言えますね。ボーカルは、常に心地よく歌ってくれるChristinaがバンクーバーから来韓し担当してくれました。新しいソースと多彩な機材を投入した、今回の3.5thアルバムを代表するトラックです。

02. Iconic Love [試聴]

これはすごくウィットに富んだ背景を持って生まれた曲です。この曲を作っている最中、なかなか思うように進まなくて一度中断してたんですが、今回3.5thに入れることになり、作業を再開しました。個人的には非常に満足の行く仕上がりになってます。

このトラックは特別にイ・スンヨルがボーカルとして参加してくれました。これは、イ・スンヨルのボーカル以外には絶対あり得ない!という曲ですね。レトロなエレクトロニック感を出しつつも現代的なサウンドがところどころに垣間見え、メロディの感じはDura Duranっぽくもあり、と結構刺激的な構成になっています。「Iconic Love」というやや遠まわしなタイトルにも見えますが、ここで表現している「Iconic」というのは最近現代の人々はあまりにも多くの時間をコンピュータだとかTVのようなビジュアル的な媒体に影響を受けすぎて生きているのでは、という危機感です。僕自身も家に帰ればTVドラマを見たりWEBでネットサーフィンを楽しんだりしますが。そんなフォント1文字1文字、ビジュアル1つ1つというものを「Iconic」という言葉で表したかったんです。そういう、ビジュアルにどっぷり浸かってしまっている、メディアに縛られてながら自分の世界にはまっている人たちのことを歌ってます。

03. Beat in Love [試聴]

真夜中に曲作りをしている、明け方までの僕の姿を描いてます。何かを生み出すということへの苦悩、葛藤、壁。その最中にいろいろと頭の中を通り過ぎる、音であったりとか、リスペクトするミュージシャンであったりとかが登場してきて僕に「ファイト!」と声をかけていってくれるイメージです。

トラック自体は割とキャッチーな雰囲気になっていますね。

04. Fiesta(english version) [試聴]

これは新たに歌詞を英語バージョンに差し替えてテイクし直した曲です。“アンビエント・エレクトロ”というコンセプトで仕上げました。DAISHI DANCEバージョンのリミックスもすごく気に入っています。

05. Our Lives - FPM Hyper Society mix [試聴]

CLAZZIQUAI PROJECTメンバー全員がリスペクトするアーティストでもあり、光栄にもときどき韓国メディアにおいて比較していただいたりもするFPMの田中さんに、尊敬の意を込めてお願いした曲です。FPMは複数のゲストアーティストが参加する個人プロジェクトで、田中さんは独特なスタイルをお持ちですが中身もすごくジェントル。以前「Don't you know? - feat. CLAZZIQUAI PROJECT」という曲に参加したのをきっかけに親しくしていただくようになり、個人的にもとても尊敬するアーティストの1人なので今回リミックスをお願いしました。少しゆっくりめのテンポのこの曲をどのように料理されるのか、かなり興味があったんですが、大胆なコード使いと、その上にボーカルを乗せるやり方、やわらかいトップノートから始まりつつハウスというのはこういうふうに流れていくんだよというのを見せつけてくださっている気がします。期待を裏切らないトラックに完成されていますね。

06. You [試聴]

この曲は皆さんに対する曲です。CLAZZIQUAI PROJECTを愛してくれているファンのみんな、そして他のすべての音楽を愛してくれている人たち。事実、ファンに対するメッセージですね。近づきたくてもそう簡単には近づけない、ファンたちの気持ちってどんなものだろう?という考えから、ファンの立場に立って僕たちを見つめてみた、とでも言いましょうか。正確にファンの気持ちを代弁できているかどうかはわかりませんが……。ボーカルはAlexとHoranがとっていますが、特にAlexの声の持つトーンがうまく溶け込んで、Alexらしい甘く心地よいニュアンスがよく現れた、そんなやさしいトラックになっています。

07. Why [試聴]

「Why」はwhaleがボーカルで参加してくれている曲です。whaleはまだすごく若いアーティストなんですが、ボーカルがすごくしっかりしていて。僕はわりと個性を持ったユニークな声を好む傾向があるんですけど、whaleの声もそうですね。一歩間違えると平凡になりもする曲なんですが、そこはうまくwhaleのボーカルに助けられています。whaleとは初めてのコラボレーションだったんですが、レコーディングの過程もすごく楽しい時間となりました。「Why」は言葉のとおり、僕ったら、私ってばなんでこうなんだろう……という自分自身に対する問い掛けというか。すごく単純な繰り返しの曲です。他のボーカルとは違う感覚で作業も楽しく進められた曲だと言えます。

08. Fiesta - DAISHI DANCE remix(english ver.) [試聴]

DAISHI DANCEとは前回韓国アクトの際に初めてお会いしました。来韓すると聞いて駆けつけたのですが、実は僕たちの札幌でのライブを観にいらっしゃってたそうなんです。CLAZZIQUAI PROJECTの音楽を気に入ってくださってて……DAISHI DANCEの旋律は僕たちの音楽ともよく似合う、とでもいいましょうか。以前の軽快さを持ちつつも叙情的な、新しい「Fiesta」ができあがったと思います。本当に彼のカラーをうまく生かしながらリミックスしてくれました。

09. Beat in Love - Yasutaka Nakata(capsule) remix [試聴]

ひと“耳”で“中田ヤスタカ!”と感じられる曲。原曲の良いところをうまく引き出しつつも、中田印の素敵な新トラックにしてくれてます。ずばりフロア仕様ですよね。僕もDJするときにはぜひプレイしたいと思っています。

10. Prayers - Shinichi Osawa remix [試聴]

大沢伸一さんがリミックスを引き受けてくださいました。はじめ、どんな方たちがこのアルバムのリミックスに参加してくださることになるのかドキドキしていましたが、大沢さんだけは絶対に参加してほしいと思っていました。ライブを見たりアルバムを聴いたりすることはありましたが、大沢さんと個人的な縁はなかったので、リミックスを引き受けてもらえるかどうか少し心配だったんです。でも、大沢さんがリミックスの依頼を受けてくれたあと、僕と☆Taku(m-flo)が実は友人だということをどこかから聞いたみたいで、☆Takuに「こんな感じでどうかな」という相談もしてくれてたみたいで。☆Takuもすごくベストな回答をしてくれたんだと思います。

最初にできあがったリミックスを聴いた感想は……衝撃?めちゃくちゃ気持ちのいい衝撃でした。大沢さんに対して心の中で期待していた感じが、そのままズバッと出ていまして、今回のリミックスにすごく力を入れてくださったんだな、と感じられました。これが本当に「Prayers」なの?というくらい、むしろ新曲です。大沢さんのキャラクターが心行くまで感じられる、そんなトラックです。皆さんもこの心地良い衝撃、ぜひ感じてみてください。

11. Next Love - DJ Kayip remix [試聴]

DJ Kayipというアーティストがリミックスを担当してくれました。3rdから何曲かを聴いてもらった上で、この「Next Love」ならリミックスのイメージがうまく表現できそうだと言ってくれ、即決。DJ Kayipは彼だけのカラーが明確なアーティストです。強すぎず軽すぎず刺激的な彼っぽいサウンドがしっくりはまっていると思います。

12. Robotica [試聴]

「Robotica」はこの3.5thアルバムのリードトラックです。曲のメロディ構成はそれほど難しいものではなく、“CLAZZIQUAI PROJECTの曲”というイメージからそれほどかけ離れないようになりました。ボーカルはAlexとHoranで、2人の息がぴったりのハーモニーとソロパートをキャッチボールしながら歌っています。ボコーダーを通したロボットのような声色がうまく生きていて、曲自体は非常にシンプルだけどそれが逆にメロディラインが耳に残りやすい要素になっていると思います。

内容には、よく見えない蜃気楼を追うような、そんな気持ちを込めました。最初にできあがったときの仮タイトルは「Mirage」だったんです。蜃気楼というよりは虚像を追っているような、そんな人たちというか。この世の中なんて本物ではないんだよ、とか、「Matrix」みたいな世界を描いている、そんな感じです。

13. Fill this night - paradox remix(english ver.) [試聴]

これはいつもライブの時、お客さんが最高に盛り上がってくれるナンバーですね。今回、このアルバムのために歌詞を英語で書き下ろし、セルフリミックスしたバージョンになっています。原曲とは違った一面で、二度も三度も楽しめる、そんな仕上がりです。

リミックスのタイトルになっている“paradox(逆説)”は、僕がへそまがりなのか、すごく好きな単語のひとつであります……。

14. Beautiful Stranger [試聴]

Christinaが歌った曲です。全く同じタイトルでマドンナの曲がありますが、この曲は映画「Closer」の主人公ナタリー・ポートマンが映画の中で、交差点を渡っているのを向こう側にいるジュード・ロウが見つめている、という場面からインスピレーションを受けました。生まれて初めて見た異邦人、でもなぜか他人とは思えない、運命が感じられる、そんなニュアンスを表現してみました。

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プロフィール

CLAZZIQUAI PROJECT
(くらじくわいぷろじぇくと)

DJ CLAZZIQUAIを中心に、AlexとChristinaの兄妹、Horanという3人のボーカルを擁する韓国のグループ。アシッドジャズ、ファンキーハウス、ボサノヴァなどのトラックに透明感のあるボーカルを乗せた、ポップでソウルフル、都会的なラウンジミュージックを生み出している。2004年に1stアルバム「instant pig」、2005年には2ndアルバム「color your soul」をヒットさせ、韓国トップアーティストの地位を築いた。m-flo、FANTASTIC PLASTIC MACHINE、FreeTEMPOらの楽曲に参加するほか、2006年のミニアルバム「Love mode」ではVERBALやPE'Zをフィーチャーするなど、日本人アーティストとのかかわりも深い。