コヤマヒデカズ(CIVILIAN)×鈴木達央|主題歌を主人公がカバー!?「魔王学院の不適合者」コラボで意気投合した同い年の2人

いつものCIVILIANより粘性が高い

鈴木 俺が「正解不正解」を聴いたときにグッときたのは、さっきまで話していたCIVILIANならではの緻密な曲構成の中に、感情のフックみたいなものがいくつも仕込まれているところなんですよ。「これ絶対コヤマくん自身の本音だよね?」みたいな、超ドロドロした成分があちこちから漏れ出していて。

コヤマ (笑)。

鈴木 特に2番Aメロの「敗北者と脱落者の 死体の上で踊っている」というフレーズが好きで。例えば、なんで俺は自分が表現する音楽として数あるジャンルの中からロックを選んだのかを考えると、やっぱり自分が怒りだったり不満だったり負の感情を内包しているからだし、どこかで自分は敗北者だと思ってるからなんだよね。なんなら俺は人よりも負けをたくさん知ってるし、でもそんな自分の足元にも死体が転がってるみたいな。そういうことを突きつけてくるから自分にエンジンをかけたいときに、それこそアフレコ前とかは必ずこの曲を聴いていましたね。

コヤマ そう言ってもらえるとうれしいです。

鈴木 あるいは「魔王学院の不適合者」という作品はトリガーに過ぎなくて、それをたまたまコヤマくんが引いたらすごいのが出てきちゃったみたいな(笑)。「正解不正解」はCIVILIANのほかの楽曲と比べても粘性の高い言葉が多いし、それが今を生きている人たちにも必ず刺さるはず。例えば社会生活を送るうえで見て見ぬふりをしていることとか、無自覚なストレスみたいなものに気付かせてくれる曲でもあると思います。

コヤマヒデカズ(Vo, G / CIVILIAN)

──おっしゃる通り、普遍性のある歌詞ですよね。

鈴木 あと、テレビで流れる90秒サイズの「正解不正解」は、当然「魔王学院の不適合者」という作品にばっちりハマってるし、その意味では主題歌として“正解”だと思います。ただ、それがCIVILIANの楽曲かというと厳密には“不正解”で、フルサイズで聴かないと本当の正解はわからないようになってるんですよね。実際、俺は最初に90秒サイズを聴いたんだけど、初めてフルサイズを聴いたときに印象がガラッと変わりました。それにも感動したし、CIVILIANは90秒というものに真正面から向き合っているのを感じましたね。

コヤマ これはあくまで僕の持論なんですけど、この90秒はバンドだけのものではないと思っていて。要は作品に関わっている方々と、それを観てくださる皆さんのための90秒でもある。だからその90秒に関しては、まず何よりも主題歌とセットでアニメ自体を楽しんでほしいという気持ちがあって、その中でバランスを取りながら自分の言葉で歌詞を書いているんです。でも、その90秒が終わった先は、この「正解不正解」をいかにCIVILIANというバンドの曲として作り込んでいけるかを考えたというか。90秒内では語れなかった自分の思いみたいなものを付け足していく作業が、この曲では思うようにできた記憶があります。

鈴木 めっちゃわかる。うちもそういう作り方してるから。その90秒以降にバンドとしての思いなり主張なりを乗せないと自分たちの曲としてリリースする意味が薄まっちゃうよね。もちろん、その思いなり主張なりが万人に伝わるとは限らないし、俺自身、100人いたらそのうち1人か2人に伝わればいいと思ってるんだけど、その1人か2人に伝わるように本気で作っています。

本当にアノスが歌っていいの?

──「正解不正解 feat. アノス・ヴォルディゴード」のレコーディングに関して伺います。鈴木さんはご自身のブログで「主題歌をキャラクターで歌う」ことに対しては慎重にならなければならない、という意味のことを書かれていましたね。

鈴木 そうなんですよ。最初、カップリングとしてアノスが歌った「正解不正解」を収録するというお話をいただいたとき、俺はマネージャーに「それ、一度CIVILIANサイドに確認してもらっていい? じゃないと受けられない」と言ったんです。というのも、「正解不正解」はアノスのために書かれたキャラクターソングではないし、ここまでコヤマくんが話してくれたように、アーティストがいろんな感情とか意味を込めて作った楽曲なんですよ。そんな曲においそれと手を出すわけにはいかない。だからマネージャーに、それは本当にお借りしていい楽曲なのかどうかを確認してもらったんだけど、後日「CIVILIANサイドもぜひお願いしたいとのことでした」って言うから「本当にいいの?」って。

コヤマ (笑)。

鈴木達央

鈴木 本当によかったの?

コヤマ 本当によかったんですよ。単純に「魔王学院の不適合者」のファンの方々に喜んでもらいたいという気持ちもありましたし。あと僕は今まで、バンド活動にしろ日常生活にしろ「そこまで乗り気じゃないけど、これはやっといたほうがのちのちよさそうだな」みたいな打算で動いて失敗することが多くて。それよりも単に「面白そうだな」という直感に従ったほうがよい結果を生むんですよね。「正解不正解」のアノスバージョンにしても、お話を伺った瞬間に「あ、面白そう」と思ったし、バンドでも話し合った結果、ほかの2人も「やろうやろう」と。

鈴木 生粋のロックバンドですわ(笑)。

コヤマ でも正直、アノスを演じながらこの決して歌いやすいわけではない曲を歌わなければならないというのは、かなり大きな負担だろうなとは思っていました。でも、OLDCODEXの曲を聴いていて、鈴木さんはできる人だというのは知っていたので、面白いことになるだろうなと。