chocol8 syndrome|TikTokで話題“ちょこはち”ってどんなバンド?

「ちょこはち」の愛称で知られる“おしゃかわロックバンド”のchocol8 syndromeが、6月16日に新作音源「オールでPPP」をリリースする。表題曲はパーティ感あふれる陽気なディスコロックチューンで、株式会社ファインの第3類医薬品「新オールP内服液」のタイアップソングとして制作された。このタイアップは、彼らが同商品をTikTokで取り上げていたことがきっかけで実現したもの。フォロワー数16万人を超える人気TikTokerでもある彼らは、お調子者集団なのか、はたまたストイックな本格派バンドなのか。音楽ナタリーではメンバーのしゃおん(Vo)、ケンコモブチ(Key)、ノモトクン(B)、奏(Dr)にインタビューを行い、その真相に迫った。

取材・文 / ナカニシキュウ 撮影 / 宇佐美亮

ギタリスト不在の謎
〜サポートはいるのに〜

──今回初めて音源を聴かせていただいたんですけども、「このバンド、わからないことだらけだな」という第一印象でした。

chocol8 syndrome

一同 (笑)。

──まずメンバーにギタリストがいないというのが最大の謎なんですよね。

ノモトクン(B) 確かに……。

(Dr) 結成以来、ずっと固定のギターが定まらないんですよ。

──音源にはギターがだいたい2本以上入ってますし、ライブでも必ずギターを入れてやっているんですよね?

しゃおん(Vo) はい、サポートの方を入れて。

──それくらい必要なパートなのに、なぜ正式メンバーを立てないんですか?

 うちのバンドは、サウンド的にあまりギターがメインになる感じではなくて。キーボードとギターが互いに譲り合うような立ち位置になるので、固定でのギタリストが必ずしも必要ではなかったんですよね。

しゃおん このバンドでギタリストとしてやるためには、キーボードのケンコモブチとサウンド的にタッグみたいにならないといけないんですけど、ガチッとハマる人がいなくて。もしかしたらケンコモブチに問題があるのかもしれない(笑)。

──それはあくまで音のお話ですよね。人間性ではなく。

 もちろんそうなんですけど、人間性もすごく重要で。我々はバンド活動と考えるとけっこう特殊な動き方をしていて、ライブ演奏や楽曲制作が活動の2、3割くらいだとすると、残りの7、8割は動画制作だったりイベント制作だったりなんですよ。そういう、演奏以外の部分も含めると、ハマる人材がなかなかいないからかもしれないです。

しゃおん(Vo)

しゃおん あと、このバンドはメンバー同士で一緒に暮らしてるんですけど、いまだにケンコモブチが何を考えているのかわからなかったりします。

──そもそもギターの音はどうしても必要なんですか? 無理にギターサウンドを入れなくてもいいような気もしますし、それはそれで個性になるんじゃないかとも思いますが。

ノモトクン その可能性も常に模索してるんですけどね。ただ、過去曲をライブでやるときはどうしてもギターが必要になってきますし、全体的に考えるとどうしてもギターの音が欲しくなるんですよね。

しゃおん ある日突然なくなるかもしれないね。

 正式メンバーのギタリストが欲しいは欲しいんです。いい人がいたら。

──一緒に住んでくれる人がいたら?

ノモトクン それがマストではないですけども(笑)。

成り立ちの謎
〜音楽をがんばりたいメンバーが集まった〜

──このバンドがそもそもどういうつもりで集まった人たちなのかわからなくて。どういう成り立ちなんですか?

奏(Dr)

 そもそもは自分とケンコモブチが東洋大学のバンドサークルで出会いました。卒業してからも遊びでコピーバンドを続けてたんですけど、いろんなライブに出演していく中で、当時高校生だったしゃおんとも対バン相手として知り合って。その頃にたくさんのカッコいいバンドを見たことで、「どうせやるなら本気でやりたい」という気持ちが生まれてきたんです。それで「今後どうするか」についてガチの会議をしまして、就職組が離れることになるんです。同じくらいのタイミングで、別のバンドにいたしゃおんも同じように就活組と離れてバンド自体がなくなって。残された「本気で音楽をがんばりたい同志」で一緒にやろうと。

しゃおん ルノアールですごく熱いプレゼンを受けました(笑)。資料を10枚くらい渡されて「君が入ってくれたら、この日程でツアーを回って、このタイミングでワンマンライブ開催を予定していて」みたいな……。

──事業計画書を提示されて。

しゃおん そうです(笑)。「歌で生きていきたい」という漠然とした思いはあったんですけど、どうやってお客さんを増やすのかとか、どうしたらプロになれるのかとかも全然わからなかったときに奏からそういう話をされたので、直感的に「一緒にやりたいな」と思って。

──ベーシストはメンバーチェンジがあるんですよね。

ノモトクン そうですね、なんやかんやあって途中から入りました。このバンド自体は結成から6年くらい経つんですけど、自分はまだ加入して2年半くらいです。

──音楽的にはどういうつながりだったんでしょうか。好きな音楽が似てたとか?

 いや、それはあんまりなくて。「とにかく音楽でがんばりたい」っていう4人が集まった感じです。

──なるほど。音を聴いて、そもそも「こういう音楽をやろうぜ」で始まっているバンドではないんですね。

 基本的には、しゃおんというバンドにとって独自の個性を世に出して浸透させていくことが僕の最大の目的です。そのためのサポートというか、マネジメント的な気持ちが強いんですよ。音に関しては、曲を作っているノモトクンとケンコモブチの能力にすべて委ねていて、自分はそのバランスを考えて動いている感じです。

ノモトクン 自分の中には「やりたい音楽をやりたいようにやりたい」というのが根本にあるんですけど、ほかのメンバーの能力も引き出せるようにこういうサウンドにしています。

ケンコモブチ(Key)

ケンコモブチ(Key) 僕の場合は、「今バンドにとって必要なものはどういうものだろう?」というのを考えながら、自分の弾きたいフレーズだったりアレンジだったりを調味料的に加えていく感じで作ることが多いですね。

──職人的な作り方なんですね。

 彼は本当に職人で。ノモトクンが入るまでは全部の作曲をケンコモブチが担ってきたんですけど、僕が出す依頼に沿って作ってくれていました。いわば戦略先行型のスタイルだったので、自分たちの色みたいなものは本当になくて。ノモトクンが一緒に動くようになってからは音に対してこだわる部分が強くなってきているので、今後は“ちょこはちの音”が確立されてくるんじゃないかと思っています。

──ちなみに、しゃおんさんが「歌で生きていきたい」と思うようになったのはいつ頃からなんですか?

しゃおん そこに関しては、中学生くらいのときから固まっていて。もともと歌は好きだったんですけど、中学のときに不登校になったんですよ。部屋というかベッドから出ないような生活を1年ぐらい送って、ずっと携帯でアニメとかいろんな動画を観たり、アニメソングとかボカロ曲をいろいろ聴いたりしてました。そんな引きこもり生活をしていたあるとき「歌い手さんのライブに行きたい」と思って、初めて外に出ることができたんです。そのときだけは外出する気力が湧くみたいな経験があったことで、歌とかライブというものが自分の中ですごく大きくなっていって。

──大げさに言えば、歌うことが社会とつながるための……。

しゃおん 唯一の扉みたいな感じでした。なので周りの人が就職したり結婚したりして音楽の道から離れていくことがあっても、歌で生きていくんだという決意がブレたことはないです。「もう潮時かな」とか言われても、「そんな考え方もあるんだ?」みたいな(笑)。

chocol8 syndrome

タイアップの謎
〜とんでもなくキャッチーな曲ができるまで〜

──では、新作「オールでPPP」について伺います。表題曲が株式会社ファイン「新オールP内服液」のタイアップ曲ですが、きっかけはTikTokだそうで。

しゃおん TikTok自体は以前からずっとやってたんです。コロナ禍になってライブがやりづらくなってからは特に力を入れて投稿していて、やっていく中でケンコモブチがネタで「オールP」を使ってみたところ、その動画がファインさんまで届いて。

──“瞳を閉じないTikToker”の動画を出したら声がかかったと。「こういう曲にしてくれ」みたいな話はあったんですか?

ノモトクン アバウトにですね。「若年層に届く、キャッチーでいい曲」みたいな、ざっくりとしたオーダーが(笑)。

──そのテーマに対して、どういうふうに作っていったんでしょう。

ノモトクン まず歌詞から作っていきました。

しゃおん とんでもなくキャッチーにしたかったので、「10秒聴いただけで印象に残る」というところに100%特化して作ったんです。あとはTikTokを使ってるみんなに踊ってほしい気持ちがあったから振付も考えて。普段の曲作りとは全然違う工程でした。

ノモトクン TikTok用に切り取ることを考えると短いものは15秒くらいなので、その中でより耳に残るものにするために、繰り返しのフレーズをたくさん入れています。

しゃおん みんなでお酒をガバガバ飲んで、めちゃくちゃアホになった状態で書きました。

 「これだとまだ偏差値が高すぎる」とかツッコミを入れつつ。

ノモトクン どこを切っても「なんじゃこりゃ?」と思える歌詞にしたかったんですよね。

──そういう感じを一緒に楽しめるギタリストが見つかるといいですね。

ノモトクン そうですね。

しゃおん そのくらいのバイブスがいいですね。

──で、この曲にはギターソロがありますよね。しかもかなり派手な。単にギターがリードを取る間奏とは違って、ギターソロというものはギタリストの自己主張パートだと思うので、どうしてここでギターソロを入れたんですか?

ノモトクン(B)

ノモトクン そう……ですね(笑)。

──例えば、これはシンセソロではダメだったんですか?

ノモトクン やっぱりサウンド的にギターの音は欲しいんですよね。特にこの曲の場合はメインリフがシンセで、ちょっとうるさいんで(笑)。だからソロはギターかなと。

──アレンジとしてギターの音が必要だというのはすごくよくわかるんですけど、タッピングまで使っているのは主張が強いですよね。

ノモトクン それは俺の指示です(笑)。「めちゃくちゃに暴れ倒してほしい」と発注しましたね。もちろんそれはギターをフィーチャーすることが目的ではなくて、楽曲全体の構想があったうえで、それを形として落とし込むためにこのギターソロが必要だったという考え方が近いかもしれないです。


2021年6月18日更新