全員ぶっ殺す！ ……音楽で（笑）

──「C.H.T.」は攻撃的な内容ですね。リリックは歌詞カードに載ってないし。

「C.H.T.」は日本のヒップホップシーンについて歌っています。シーンを村に見立てて、その臭い村で包丁パクって、全員ぶっ殺すみたいな。……もちろん“音楽で”ってことですけどね（笑）。

──（笑）。

なんか僕のやってることにゴチャゴチャ言ってくる人がいるんですよ。まるで若者の服装について文句言ってくるおじさんみたいな感じで。そういう奴に対してとか、ちょっと名前が売れたらすぐにゴマすってくるラッパーを淫乱女として描いてみたり。

──チェリーさんが昔ディスばかりしてた頃は、こんな感じのリリックだったんですか？

そうですね。実はCherry Brownって名前もその頃付いたんです。先輩に「そんなディスばっかするんだったら、名前くらいかわいくしたほうがいいんじゃない？」って言われて。当時は“チャーリー・ブラウン”って名前でやってたんですけど「Cherry Brownなんてどうよ」って勧められて、「いいすね」って、そのまま定着しちゃいました。よく「童貞だから？」とか聞かれるんですけど、それは違いますよ（笑）。

PUNPEEとはmixiで出会った

──チェリーさんにとって音楽はどういうものですか？ 現実逃避するための道具？

あー、まあそれもあるっすね。でも、それ以上に武器っていうか。音楽だったら普段できないことがなんでもできちゃう、みたいな感じはありますね。

──ではインターネットはどうですか？

ネットに関しては現実逃避の場所というよりかは、もう完全に生活の一部ですね。PUNPEEさんやMINTさんとの出会いもインターネットですし。

──へー。

2人ともmixiですね。PUNPEEさんは彼がPSGで「DAVID」を出した当時、普通にCD買ってすごい聴いてたんです。そしたらmixiで彼を見つけたので、「一緒にやりませんか？」ってメッセージを送りました。PUNPEEさんも僕のことチェックしてくれてたみたいで、「ぜひぜひやろうよ」みたいな感じで言ってくれて。

──PUNPEEさんが参加した「Pajama Partyyy feat. PUNPEE＆さつき が てんこもり」は 2009年にフリーで出したミックステープ「くっきー＆びすけっつまふぃあ Presents Supa Hypa Ultra Fres$shhh 3[Mixed By DJ Lil'諭吉]」が初出ですもんね。

曲のテーマは僕からPUNPEEさんに提案しました。そしたら彼も気に入ってくれて。完全に思いつきというか、悪ノリですね（笑）。「Escapism」用に再レコーディングしてあります。

やっぱり自分はヒップホップの人間なんだなあって思う

──「よりどりみどりー＋」も、元はフリーダウンロード時代に発表したものですよね。

はい。今回メジャーでリリースするにあたって、タイトルを「よりどりみどりー」から「よりどりみどりー＋」にしました。これはDS455へのオマージュで、彼らはインディでリリースしていた楽曲をメジャーで出すとき、タイトルの最後に“＋”を付けるんです。

──そもそも「よりどりみどりー」はどのように作られたんですか？

MINTさんもすごいアイドルやアニメが好きな人なんで、お互い好きな女の子の実名をガンガン出して曲書いちゃおうぜ、みたいな感じでした。

──MINTさんは大阪のヒップホップグループ・韻踏合組合に所属してたラッパーですよね。

僕がMINTさんを知ったきっかけは、うちのお母さんがもらってきてくれたヒップホップやダンス系のフリーペーパーなんです。そこでサウス特集が組まれてて、MINTさんの「僕の1stアルバム、サウスな感じでやってるんで」というコメントも掲載されていました。で、mixiで探したら発見できたので、僕のMyspaceプロフィールのURLを貼ってメッセージを送りました。そしたら気に入ってくれて。

──MINTさんは前回2次元キャラへの愛情を歌ってましたが、今回は正反対のことを言ってますよね。チェリーさんは彼の新しいラップを最初に聴いたときどう思われましたか？

「あー、そうなんだー」みたいな。というのもMINTさん、けっこうそういうことをTwitterでつぶやてたんですよ。「もう2次元にあんま思いがないなあ」とか（笑）。

──なるほど（笑）。チェリーさんはどうですか？ 2次元にはもう興味がないとか？

いや、逆にまた燃えてきたっすね、2次元のほうに。

──それはなぜでしょう？

原点回帰（笑）。実は最近音楽でも僕の中で原点回帰が起こっててサウスとかを超掘ってるんですよ。アイドルソングとかダブステップとかトラップとか、本当にいろんな音楽を聴いてきてもはや1周まわったというか。それで逆にシカゴとかアトランタの不良がやってるヒップホップが面白いなあって感じています。

──じゃあ、今回のアルバムもそういう気分が反映されてるわけですね。

そうですね。100%反映されてます。できあがった自分のアルバムを聴いてみて、やっぱ自分はヒップホップの人間なんだなあって再確認しました。