“電波ソング”とトラップを混ぜたら面白そう

──今回のアルバムの先行曲になった「でぢたる☆でぃすこ feat. ななひら」は、Perfume「チョコレイト・ディスコ」を思わせるフレーズが出てきますね。

うわ、そこに気付いてもらえてうれしいです！ そうなんですよ、あの曲はPerfumeの「チョコレイト・ディスコ」にオマージュを捧げています。「でぢたる☆でぃすこ feat. ななひら」は“電波ソング”というアイドルソングの1ジャンルと、サウスヒップホップのトラップを混ぜたら面白そうっていうところからノリで作った曲なんです。

──歌詞もユニークですよね。

1バース目はインターネットの世界を不良たちのストリートに見立ててみました。アメリカのヒップホップシーンは何かのきっかけで一気にドカーンと成功する人もいれば、逆に底の底まで落ちていく人もいる。それってインターネットも同じだなって思って。Twitterとかで簡単に炎上しちゃって落ちていく人もいれば、逆に成功していく人もいる。でも最後のほうでは「まあでもいいや。とりあえず楽しもうぜ」みたいな感じになってくんですけど。

──すごい着眼点ですね（笑）。

2バース目ではネット上の男女の恋愛模様をクラブのナンパみたいな感じで歌ってみました。「君の顔が見えない」って歌詞があるんですが、これはTwitterのDMみたいな顔を見ないで行うコミュニケーションのこと。僕は女の子と実際に顔を合わせてうまく話せないところがあるので、こういう歌詞が書けたんじゃないかな（笑）。

Cherry Brownとインターネット

──チェリーさんの生活にはインターネットがかなり深く根付いているようですね。

はい。パーティとかも自分が出演するとき以外はほとんど行きませんしね。基本、家です。で、家にいるときはパソコンの前にずっといます（笑）。毎日の生活サイクルとしては、とりあえず朝起きたらいろんなニュースサイトをチェックするんですよ。GIGAZINEだったり、ロケットニュース24だったり。で、Favstar見て、Twitter見て、SoundCloud見て……。あとたまにメールチェック。飽きたらビート作って。終わったらまたネットする。

──チェリーさんはネット上のフリーダウンロードで話題を作ってきたアーティストですよね。

そこはSoulja Boyというアメリカのラッパーの動き方を参考にしました。

──Soulja BoyはMyspaceがアメリカで全盛期だったときに最も目立ってたアーティストですよね。ラッパーたちのインターネットの使い方の筋道を作った人というか。

まさに。僕は彼がメジャーに行く前のMyspaceで活躍してた時期から大好きで、アーティストとしてのインターネットの活用方法は彼をお手本にしていた部分が大きいです。

──新曲ができたらすぐにネット上でフリーで公開して、どんどん話題を作っていくみたいな。

そうですね。曲だけじゃなくて、YouTubeにもがんがん動画を上げたりとか。内容は本当にくだらないものだったりするんです（笑）。でも、結果として彼はそのやり方で大成功して今や億万長者ですからね。だから僕も曲ができたらすぐにネット上で無料公開していったんです。

──その精神は今でもチェリーさんの中に生きていますか？

そうですね。なんかもう適当に作って気楽にポンって上げちゃうっすね。ガッツリ作り込んで完璧なものをっていうよりは。でもそうやってバンバン曲を公開していったら、トラック提供や客演、ライブのオファーが増えてきて、今一応音楽だけで食べていけてるんですよ。

僕はヒップホップ界のアイドル的存在

──もう1つの先行曲「iDol」ではSKY-HIことAAAの日高光啓さんの参加はどのようにして決まったんですか？

えーっと。知り合ったのは……なんだっけなー。Twitterが先かな。彼から「一緒に曲やりたいなー」みたいなリプが飛んで来たんですよ。それでこっちも「じゃあやりましょう」って返して。でももともとは日高さんのソロアルバム用にやるみたいな話だったんです。最初はビートもテーマも違ったし。でも彼が「待って。チェリーとやるならやっぱアイドルネタでやるしかなくね」って言ってくれて、今の形になったんです。

──本当のアイドルである日高さんがアイドルをテーマに歌うっていうのもすごいですよね。

「マネージャーから許可出ました30秒ならOK」ってラインとか本当に素晴らしいと思います。でも、僕も自分のことを“ヒップホップ界のアイドル”だって昔から主張してるんで、アイドル目線で自分のバースを書きましたよ（笑）。みんなとは違うんだぜ、みたいな。

──じゃあ、この曲はアイドル同士がセルフボーストしてるバトル曲なんですね（笑）。

ふふふふ（笑）。