音楽ナタリー PowerPush - チャラン・ポ・ランタン×松井玲奈
“異世界の住人”同士が意気投合
普通なら関わり合えない両者
──チャラン・ポ・ランタンの世界観にはそういう妄想が膨らんだような非日常的なところがありながら、一方ですごくリアルに迫ってくるところがあって、その両方があるのが面白さの1つだと思うんですよ。
松井 そうですよね。私はALI PROJECTとかSound Horizonとかも好きで、そのお二方ともほかにはない世界観がある。チャラン・ポ・ランタンもそうですけど、やっぱりほかとは違う何かが明確に見える方たちが好きなんですよ。どこか非日常的というか。例えば(チャラン・ポ・ランタンを指して)こういう服もなかなか着たくても着れないものじゃないですか。でも2人が着れば、そこに世界観ができあがってくるというか。
小春 でも、こういうことやってる私たちからすれば、玲奈たんのポジションがまさに非日常的に見える。私たちの身の回りには、例えばこの間のキネマ倶楽部にも出てくれたサーカスのパフォーマンスをする人とか、バーレスクダンサーとか、私が大道芸をやってた頃に知り合ったジャグリングの人とか、夜中にパフォーマンスしてるような人がけっこう日常的にいるのね。で、そういうのが普通だったりする中で、言ってみればその真反対の位置にいるのがアイドルの人たちなんだろなって思ってて。
もも だって、普通なら関わり合えない方たちだもんね。私も今までだったら、ドラマで玲奈たんを観ていただけだったわけで。
松井 いやあ、そんなふうに思われてるのがビックリです。本当に私なんて普通すぎるというか。
──松井さんは、先ほど子供の頃は内気だったと言ってましたが、どうしてこの世界に入ろうと思ったんですか?
松井 とにかくお芝居が好きで、舞台に立ちたいというふうに思っていて、SKEができるって聞いたときに、公演でステージに立てたら自分の先の夢にもつながる大きな経験ができるなって考えたんです。もともとAKBが好きだったからオーディションを受けたっていうのもありましたけど、きっとステージに立てば立つほど度胸もつくし、どんなときにも対応できるようになるだろうなって思って。
──自分の先の夢というと?
松井 役者になることです。とにかく舞台に立ちたかったので、アイドルだったらたくさん舞台に立てるんじゃないかって考えがあったんです。だから、どっちかというと「アイドルになりたい!」っていう感じではなかったんですよ。AKBには憧れてましたけど。
小春 でもアイドルに憧れてる人は、普通、チャラン・ポ・ランタンをフォローしないよね(笑)。まあ、私の中でのアイドルのイメージはテレビで観たままでしかないんだけど、たぶん玲奈たんはどっか違うのかなって思う。あ、でも、やっぱりアイドルということで、言いたいことが言えないとかっていうこともあったりするんですかね。
松井 例えば「疲れてる」とか「落ち込んでる」とかは、やっぱり表には発信できないですね。でも自分の言葉じゃ言えないこととかも、人が歌ってくれることで代弁してもらっている気持ちになって、すっきりするんですよ。チャラン・ポ・ランタンの音楽はまさにそれで。人の中にあるドロッとした感情とかも音楽にして歌われることで、たとえすべてその通りだと思ってるわけじゃなくても、「あ、私だけがこうじゃないんだな、誰にでもこういう感情ってあるんだな」って思えて、スッとするんです。
もも すごいね。そういうふうに聴いてもらってるんですね。
松井 だって「美しさと若さ」とか聴いてて思いますけど、やっぱり誰でもキレイになりたいわけじゃないですか? 女の子なら誰でもあると思うんですよ。
もも あ、そうですよね。私だってもちろんかわいくなりたいみたいな気持ちはあるわけで。さっき「美しさと若さ」をリハで歌ってパニックになったって言ったけど、それってやっぱり自分が女で、こういう気持ちもわかるっていうところがあるから、そうなったんだと思うし。
小春 この曲は男性と女性とで受ける印象が全然違うみたいでね。前に男性からインタビューを受けたときには、「これ、怖いですね」って言われたの。だいたい男性はそういう感想なのね。でも女性からインタビューされたときには、「こういう気持ちはわかる」みたいに言われて。どっかで共感するところもあるみたい。だから、女性にたくさん聴いてもらえるといいなと思ってるんだけど。
松井 そうですよね。
アイドルのストレス解消法
小春 で、またさっきの話に戻るけど、アイドルの人たちって、例えば根も葉もない話をされたりとか、そういうことをツイートされたりしても、それに対してなかなか自分から反論したりできなかったりするわけでしょ。そういうのでモヤモヤしたときは、どうやって浄化するんですか?
松井 夜の道を、チャラン・ポ・ランタンを聴きながら散歩することで浄化してます。
小春 おおっ!
もも でも、ストレスって計り知れないよね。
小春 それは、私たちなんかよりよっぽど大きいと思うんだよね。しかも私たちは、頭にきたらそれを口に出しちゃってもいいようなキャラクターに最初からしちゃってるんで。お客さんに「バカ!」って言っても大丈夫な状態にしちゃってるから開き直れるんだけど、玲奈たんが「バカ」って言ったら、「ええええっ」てなるだろうからね。
もも 喜ぶ人もいそうだけどね(笑)。
松井 あはははは(笑)。
小春 まあ、そういうマニアックなやつは別にしてもさ。やっぱり私たちなんかよりも、よっぽど溜まっていくものが多そうな気がするんだよね。だからAKBの皆さんとかの、そのメンタルの強さたるや、計り知れないなって思って。
もも うん。それはすごいなって思う。女の子のアイドル、強いなって思いますね。
松井 うーん。強いんですかね? 自分ではそれはあんまり感じたことなくて。なんだろ。やっぱり人の数だけいろんな意見があるから、それを全部受け止めちゃうと大変だと思うんです。お手紙をいただいて、この人はこう言ってるけど、この人はその反対のことを言っている。この人は私がしていることをよしとしてくれるけど、この人はそう思ってない。じゃあ、どうしたらいいんだろうって最初のうちは思ってたんですけど、でもそれを選択していくことが一番大事なことだから、今は言ってくれること自体をありがたいって受け止めて、その上で自分でしっかり選択するようにしてます。選択することの大事さというのを、活動していく中で勉強したんです。
小春 そっかあ。小春は全部に返事しちゃうな。だから、けっこう批判みたいなことにダメージを受ける。
もも そう。小春はストレートに受け止めちゃうんですよ。私は批判だったり、私に対しての「ムカつく!」みたいなものだったりも、「あざっす、あざっす」みたいな感じで流しちゃうんですけど、小春は全身で受け止めちゃう。だからズタボロになったりするときがあって。近くにいてときどき心配なんですけど。
小春 そうなんだよねえ。でも私は曲を書いて歌詞を書いてっていう人間なので、どうにかそれで浄化されてるんだけどね。あとはライブだね。だからなるべく多くライブをやっていたいの。
松井 あ、私も仕事をしてないと体調が悪くなっちゃうんですよ。それはなんでかというと、吐き出したいものがエネルギーとしてたくさんあって、それが溜まりすぎちゃうと逆にぐったりしちゃうからなんですね。ライブをしたりお仕事したりすると、溜まったものを全部出せてすっきりする。だから、ライブをやり終えて、もう動けないみたいになってる状態がすごく好きなんです。
もも その感じは私もわかりますね。
小春 うん。これでまた一歩近付いたね(笑)。
松井 あはは(笑)。うれしいです。
玲奈たんに曲を作るとしたら……
小春 ところで話が変わるけど、今回の私たちのアルバムは、けっこうお題を決めて作った曲が多いのね。最近はそういう作り方をよくしてて。で、玲奈たんに曲を作るとしたら、どんなお題で作ってほしいとかって、ある?
松井 うーん、なんでしょう。何がいいかなあ。あ、私、彼岸花がすごく好きなんですよ。だから、彼岸花をモチーフにした歌がいいなって、今思いました。
もも なんで彼岸花が好きなんですか?
松井 縁起が悪いとかってよく言われちゃうんですけど、子供心にすごいキレイな花だなって私は純粋に思ってたんです。1本でスッと立ってる姿がキレイだなって思ってて。でも、自分がキレイだと思ってるのに、ほかの人は縁起がよくないものとして扱ったりしてて、そのチグハグ感がなんか不思議というか。で、そういう感じってチャラン・ポ・ランタンの世界観に合うんじゃないかって、ふと思ったんです。
小春 ほおー。じゃあ、次のアルバムのタイトルは「彼岸花」だな。
松井 あははは(笑)。
もも アルバムタイトルなの?
小春 今の話を聞いて、いいなって思った。あと、玲奈たんと話してみて、アイドルの舞台裏のことを書いてみたいって思った。
松井 面白いですね、それ。
小春 ライブとかテレビ番組とかに出るときの準備をするまでの感じとかを歌にしてみたいね。
松井 壮絶ですよ。
もも おっ。
小春 きっと私たちが思ってる以上に男前な感じだったりするんだろうね。
松井 私はステージに出る前に、自分の顔を思いっきりバーン!って叩くんです。気合いを入れるために。
もも ええっ!?
松井 そうすると周りからは引かれるんですけど、その肌のヒリヒリしてる感じがいい緊張感になって、ステージにそのまま出られるんですよ。
もも へえー。すごい。
松井 あと、私はチークが飛びやすいんですけど、叩くと赤くなるからいいんです。
小春 あははは(笑)。それ、そんなに持続性がなさそうだけどね。やっぱ、玲奈たん、男前だわ。
- チャラン・ポ・ランタン 1stアルバム「テアトル・テアトル」 / 2014年12月3日発売 / avex trax
- CD+DVD / 3780円 / AVCD-93020/B
- CD / 2700円 / AVCD-93021
CD収録曲
- 71億ピースのパズルゲーム
- ムスタファ
- さよなら遊園地
- 蕾
- 美しさと若さ
- 私の宇宙
- プレゼント
- ワーカホリック
- NANDE-NANDE
- 忘れかけてた物語
- 愛の讃歌
- 季節は廻る
CD+DVD盤 DVD収録内容
- 71億ピースのパズルゲーム【Music Video】
- フランスかぶれ【Music Video】
- 美しさと若さ【Music Video】
- 私の宇宙【Music Video】
- ワーカホリック【Music Video】
- スーダラ節【Music Video】
- 忘れかけてた物語【Music Video】
- さよなら遊園地【Show Movie】
- Oppai Boogie【Show Movie】
チャラン・ポ・ランタン
1993年生まれのもも(Vo)と1988年生まれの小春(Accordion)による姉妹ユニット。2009年に結成。2010年8月に「チャラン・ポ・ランタンと愉快なカンカンバルカン」名義でアルバム「ただ、それだけ。」をリリースする。2012年6月にはZAZEN BOYS、group_inouらとのカナダツアーを大盛況に収めるなど海外での活動も多数。2012年9月に約2年ぶりの新作アルバム「つがいの歯車」を発表すると同時に、ももが20歳の誕生日を迎える2013年4月9日までに3枚のアルバムをリリースすることを公約し、それを達成。2014年7月にシングル「忘れかけてた物語」でエイベックスからメジャーデビューを果たし、同年12月に1stアルバム「テアトル・テアトル」をリリースした。
松井玲奈(マツイレナ)
1991年生まれ愛知県出身。SKE48、乃木坂46のメンバー。2008年に「SKE48オープニングメンバーオーディション」に合格し活動を開始する。SKE48の中心メンバーとして多大な人気を獲得し、AKB48でも選抜メンバー常連に。近年は個人としての活動も多く、2014年6月には初主演を務めた映画「gift」が公開され話題に。趣味はアニメ、マンガ、鉄道など。
- SKE48 ニューシングル「12月のカンガルー」 / 2014年12月10日発売 / avex trax
- Type-A / 初回限定盤
[CD+DVD] 1646円 / AVCD-83092/B- Type-B / 初回限定盤
[CD+DVD] 1646円 / AVCD-83093/B- Type-C / 初回限定盤
[CD+DVD] 1646円 / AVCD-83094/B- Type-D / 初回限定盤
[CD+DVD] 1646円 / AVCD-83095/B- Type-A / 通常盤
[CD+DVD] 1646円 / AVCD-83096/B- Type-B / 通常盤
[CD+DVD] 1646円 / AVCD-83097/B- Type-C / 通常盤
[CD+DVD] 1646円 / AVCD-83098/B- Type-D / 通常盤
[CD+DVD] 1646円 / AVCD-83099/B - Type-B / 初回限定盤