音楽ナタリー PowerPush - ボンジュール鈴木

“謎の宅録女子”の素顔

「少女革命ウテナ」「輪るピングドラム」など数々の名作アニメを手がけてきた幾原邦彦監督の最新作「ユリ熊嵐」のオープニングテーマ担当に無名の新人ながら抜擢され、一躍その名を知らしめたボンジュール鈴木。彼女が初のフルアルバム「さよなら。また来世で」をリリースした。

作詞や作曲のみならず打ち込みやミックス、マスタリングまで自らこなし、気だるさを帯びたファンシーな世界観を1人で築き上げている彼女。3月にタワーレコードのインストアライブで初めてファンの前に姿を現し、6月7日には東京・clubasiaで初のワンマンライブを開催することも決まっているが、今もなおその素性は謎に包まれたままだ。今回ナタリーではSkypeを使って彼女にインタビューを実施し、その素顔に迫った。

取材・文 / 宇野維正

「実は男なんじゃないか」とか言われたりもしたんですけど

──こんにちは。

こんにちは。ボンジュール鈴木です。

──今回はSkypeでインタビューをさせていただいてますが、今画面が真っ白なんですけど、画面上でも顔出しNGということなんでしょうか?

はい。そうです。

──えっと、鈴木さん? ボンジュールさん? どっちで呼べばいいんでしょう?

フルネームでお願いします。面倒くさくてごめんなさい(笑)。

──わかりました(笑)。ボンジュール鈴木さんは、今は日本にお住まいなんですよね?

はい。今話しているのも日本からです。

3月6日に東京・タワーレコード渋谷店 3Fで行われたインストアイベントの様子。

──ご本人がメディアに露出しない理由というのは? インストアライブとかもされていますけど、そのときはベールを被ってましたよね?

はい。今の段階では、純粋に自分の音楽だけを聴いていただきたいと思っていて。

──作詞・作曲・演奏はまだわかりますけど、ミックスやマスタリングまでご自分でされているんですよね? ビックリしました。

恥ずかしがりなので、ほかの方と一緒に作業をするのが苦手なんです。

──なるほど。じゃあ、恥ずかしがりというのも、露出をしない理由の1つでもある?

そうですね、はい(笑)。

──というわけで、純粋に音楽だけを聴かせていただいた今回の1stアルバム「さよなら。また来世で」ですが、非常に素晴らしい作品に仕上がっていて。今こうして話していてもとても声が印象的なんですけど、とにかく非常にかわいらしい声をされていますよね。

あ、ありがとうございます(笑)。ネットで自分の作品を聴いた人からは、声にフィルターやエフェクターをかけてるんじゃないかとか、「実は男なんじゃないか」とか言われたりもしたんですけど(笑)、普通にしゃべっているときもこういう声です。

──これまで声優の仕事とかをやられていたわけでもないんですよね?

はい。行き先を伝えただけなのに、タクシーの運転手さんからも「声優さんですか?」って言われたりしますけど。

全部1人でできる宅録は、クラシックにはない魅力があった

──ボンジュール鈴木さんの作品は昨年からYouTubeやニコ動などのネット上にアップされた音源が話題を集めていましたけど、アニメ「ユリ熊嵐」のオープニングテーマに楽曲(「あの森で待ってる」)が抜擢されたことでより大きな注目を集めるようになりました。「ユリ熊嵐」は作品自体も非常にぶっ飛んだ内容で、アニメファンからも熱く支持された作品でしたが、ボンジュール鈴木さん自身、それまでもアニメ方面のカルチャーには親しんでこられたのですか?

好きな作家の方が何人かいます。中でも幾原監督の作品は以前から大好きで。だから、本当にうれしくて。

──音楽を作るようになったきっかけは何だったんですか?

3歳から、ピアノと、お琴と、バイオリンをやっていました。クラシック音楽の勉強はずっとしていて。

──へえ! じゃあ、いわゆるポップス系の音楽はあまり聴いてこなかった?

いや、クラシックの勉強をしながらも、ポップスにはずっと興味はあって。特にヨーロッパのポップスが大好きで。フランスとか北欧の方のポップスって、わりとクラシックがベースになっていたりするじゃないですか?

──ああ、確かに弦の使い方とか、ちょっと日本やアメリカのポップスとは違いますよね。

ボンジュール鈴木が撮影したチェキ。

はい。自分で打ち込みをして曲を作るようになったのは3年くらい前からなんですけど、全部1人でできるというのもクラシックにはない部分で、それもすごく自分にとっては魅力的で。そうやってだんだん曲を作るようになっていったんです。

──プロフィールによると、フランスの大学に留学されていたんですよね?

学生時代は日本とフランスを行ったり来たりしていて。フランスには親戚もいたりするので。

──へえ! そのわりには「ボンジュール鈴木」って随分ベタなアーティスト名ですよね(笑)。

ああ(笑)。ネットに曲をアップするときに、何か名前を付けなくちゃいけなくて、それで慌ててその場の勢いで付けた名前なんです(笑)。アメリカのブルックリンにAu Revoir Simoneって3人組のガールズポップバンドがいて──。

──はいはい。「さよならシモーヌ」。あっ、そこからなんだ!

すみません、適当に付けちゃいました(笑)。

1stアルバム「さよなら。また来世で」 / 2015年4月15日発売 / 2160円 / Kobuta Japon / BUTA-002
1stアルバム「さよなら。また来世で」
収録曲
  1. はやく行かなくちゃ。
  2. 甘い声でちくってして
  3. アゲハ蝶の破片とキミの声
  4. 禁断のショコラ
  5. 私こぶたちっく
  6. キミと恋したいのです
  7. stand by for me
  8. allo allo
  9. 羊曜日に猫ごっこして
  10. 月の下でパーティー
  11. Je ne sais pas pourquoi
  12. PM9:55
  13. あの森で待ってる(おやすみ version)
ライブ情報
ボンジュール鈴木1st full album「さよなら。また来世で」release party
2015年6月7日(日)東京都 clubasia
ボンジュール鈴木(ボンジュールスズキ)

宅録系女性シンガーソングライター。ジャズシンガーだった母の影響で幼少期からさまざまな音楽に触れ、ピアノを軸に作曲活動をスタートさせる。北欧エレクトロニカやヒップホップ、フレンチポップなどをルーツに持つ幻想的なサウンドと、ウイスパーボイスのボーカルが特徴。作詞や作曲、歌唱のほか、演奏、ミックス、マスタリングまで自ら手がけている。2014年からインターネットの動画サイトにオリジナル曲の投稿を開始。2015年1月にスタートしたテレビアニメ「ユリ熊嵐」のオープニングテーマ担当にまだ無名の新人でありながら抜擢され、このオープニング曲「あの森で待ってる」を1stシングルとしてリリースした。同年4月に初のフルアルバム「さよなら。また来世で」を発表。6月には東京・clubasiaにて初のワンマンライブが予定されている。