田邊駿一(BLUE ENCOUNT)×北村匠海(DISH//)|サウナを愛するボーカリストたちの“トトノウ”サウナ談義

サウナ好きのBLUE ENCOUNT・田邊駿一(Vo, G)が6月までレギュラーパーソナリティを務めていたInter FMのラジオ番組「トトノウラジオ」。その番組でも熱いサウナ愛を語った田邊が選曲を行ったコンピレーションアルバム「トトノウオト」が、6月30日にリリースされた。

“サウナ”をテーマにセレクターの田邊が集めた12曲の中の1つが、DISH//が2020年に発表した「SAUNA SONG」。「サウナですベてを流し去ろう」と現代社会をせわしなく生きる人々に訴えかけるメッセージソングだ。今回、音楽ナタリーは田邊と「SAUNA SONG」の原案を担当した、筋金入りの“サウナー”である北村匠海(DISH//)の対談をセッティング。お互いのサウナにまつわる経験、サウナへの愛、そしてサウナーとしての夢を語り尽くしてもらった。サウナのように濃密で熱い対話を楽しんでほしい。

取材・文 / 小川智宏撮影 / YURIE PEPEスタイリング(北村匠海) / Shinya Tokita

サウナ好きとしてシンボル的な何かを

──田邊さんが選曲した「トトノウオト」というコンピレーションアルバムがリリースされまして、田邊さんがそこにDISH//の「SAUNA SONG」(2020年リリース)をピックアップしたということでこの対談が実現しました。まずは田邊さん、このコンピがどういうものなのかを説明していただけますか?

田邊駿一(BLUE ENCOUNT)

田邊駿一(BLUE ENCOUNT) 僕もこの2、3年、サウナが好きだということを方々で言わせていただいていまして。昨年出演させていただいたラジオ番組でサウナ愛を語っていたら「サウナ番組をやりませんか」というお話になったんですよ。そこから「トトノウラジオ」という番組が始まったんです。で、サウナ好きとしてシンボル的な何かを作りたいなというところで、「まだあんまりサウナのコンピレーションってないよね」と。じゃあということでコンピを作ることにして、無理を承知でDISH//さんにも声をかけさせていただきました。

──その話を聞いたとき、北村さんはどんなことを感じました?

北村匠海(DISH//) サウナーとしてとてもうれしかったです。今って頭がパンパンになっている人がたくさんいらっしゃると思うから、みんなサウナの感覚を味わったほうがいいと思うんです。だから、まさしく今出すべきコンピだな、と。世の中にすごくフィットすると思いますよ。

田邊 これ、CDの帯に書いてもらえばよかった(笑)。

──DISH//の「SAUNA SONG」は田邊さんにとってどういう曲ですか?

北村匠海(DISH//)

田邊 もちろん出たときにいち早くチェックしました。聴けば聴くほど最高なんですけど、特にサウナに入ったあとに聴くと、言葉がより一層エモく感じられるんですよね。日々の疲れがあって、その吐き出し先がなかなかない中「サウナには全部あるよ、おいで」というメッセージを代弁してくれているのがこの曲のよさだし、その裏には「発散したくなるぐらい、日々みんな疲れてますよね」というメッセージもある。だからもう、聴くたびに「ありがとう、わかってくれて」っていう。

──なかなかここまでズバッとサウナのことを歌った曲って、あるようでないですもんね。

田邊 もうバンド界隈、アーティスト界隈のサウナーはみんな「先にやられたな」って思ってますから。go!go!vanillasとか(笑)。

北村 あ、牧(達弥 / go!go!vanillas)くんには言われました。「やったなお前」と(笑)。「やりました」って返しました。

左から田邊駿一(BLUE ENCOUNT)、北村匠海(DISH//)。

ととのっているときは“圧倒的な個”になれる

──「SAUNA SONG」は北村さんが原案を考えて、Lucky Kilimanjaroの熊木幸丸(Vo)さんが作詞作曲をしていますが、これはどういうところから生まれた曲なんですか?

北村 今、SNSとかいろんなところが“掃き溜め”みたいになっているというか……ネガティブな発言がピックアップされて、それを見たり聞いたりしている人たちの日々の思いを作ってる感じがして。そういうことを熊木くんと話していて、そのまま辛辣に歌にするか、もっとポップに伝えるか、どうする?となったときに、僕が「もうみんなサウナに入って、ととのっちゃえばいいと思うんですよね」って言ったんです。余計なものを全部洗い流して0になっちゃえばいいと。そういう思いで作っていきました。だから、歌詞がエモく感じると言っていただいてうれしいですね。

田邊 MVがまた、泣けるんですよ。

北村 泣けますよね。

田邊 最後、お父さんがお子さんを抱きしめる瞬間とか、もうそれだけで「サウナがあって本当によかったな」って思う。ととのってちょっと気持ちよくなっただけでいろんなものが許せるし、気付かなかったことに気付けるんです。

北村 サウナって、人がつながる場所でもあるんですよ。今回のこういう出会いもそうですし、全部さらけ出してる状態で、何も気にする必要がなくなる。僕、サウナに行って知らないおじさんとけっこう仲よくなったりするんです。手順とか分数にも、正解や優劣がないのがすごくいいなって。

田邊 そうだね。

左から北村匠海(DISH//)、田邊駿一(BLUE ENCOUNT)。

北村 で、“つながる”感覚があるのと同時に、ととのっているときは“圧倒的な個”になれるというか。

田邊 「圧倒的な個になれる」、いいな。俺も使おうかな(笑)。でも確かにそうですよね。

北村 いろんなことを考えてたけど、なんかもう全部流れて、何もない状態に達してまっさらになって……。印象的な経験なんですけど、「サウナーーーズ2」という番組に出たときに、Futtu villa(千葉県富津市)っていうところに行ったんです。最高なんでぜひ行ってほしいんですけど、超豪華なヴィラにプールが付いていて、奥にサウナがあって。そこで休んでいると、富士山が見える、目の前は海、カモメの鳴き声に木々の葉擦れの音……。

田邊 台本読んでるみたいな情景描写。そうか、五感でね。

北村 五感でととのっちゃうんですよ。音とか、匂いとか。

田邊 うわ、いいですね。そういう情報交換ができるのもサウナーの楽しいところというか。僕がサウナに通うようになったのってここ2、3年なので、まだそんなに行けていないんですよ。去年もめっちゃいろんなとこ行ってやろうと思っていたんですけど、こういうご時世になって、遠方になかなか行きづらくなって。まだどうなるかわからないけど、今年こそはサウナ旅に出たいなと思いますね。