新作は「聴いてもらいたい」気持ちが過去最高
——今回のアルバムは制作にじっくり時間をかけたそうですね。
謙太郎「レコーディングに7カ月かけました」
ザ「曲作り期間を入れるともっと長かったです。結果的には時間をかけて正解でした。録音したものを家に持ち帰って「やっぱりあそこはこうしたほうがいいな」とか「こういう曲がないから作ってみようか」とか、アルバム全体のバランスを考えることもできたし」
——改めて振り返ってみて、前作と新作の大きな違いは何だと思いますか?
ザ「“聴いてもらいたい”という感覚ですね。やっぱりこれまでは俺らが思ってるほど聴いてもらえてなかったと思うし、そこは今回なんとかしたかった。BAZRAはもともとポップな要素のあるバンドなのに、そのポップさが意外と伝わってない気がして。どうやったら伝わるかをいろいろ話し合ったんです」
——じゃあこれまでは「聴いてもらいたい」という意識はあまりなかった?
ザ「いや、もちろんあったんだけど、これまでは一歩引いて自分たちを見ることができてなかったんですよね。だから今回は今まで以上に意識して、多くの人に聴いてもらえるものを作ろうと思ったんです」
——BAZRAには「売れようが売れまいが、自分たちがカッコいいと思うものを作ればいい」というイメージがあったんですが、今回はある意味「売れるものを作ろう」という気持ちがあったということですか?
ザ「多くの人に聴いてもらえるものという意味では、ハッキリ言って売れるものを作ろうと思ってましたね。そうじゃなかったら、もう何を言っても説得力がないじゃないですか(笑)」
——多くの人に聴いてもらえるものと、自分たちが作りたいものとの間にギャップはなかったですか?
ザ「うん、そこがどんどんリンクしているから、このアルバムができたんです」
今回のアルバムはザのリーダー作
——新作は歌詞の内容もこれまでとは明確に違いますよね?
鉄平「歌詞についてはザから提案があって。以前は「ネガティブな気持ちをバネにしていこうぜ」みたいな内容が多かったけど、今回はバネにする前のネガティブな気持ちをそのまま出してみたんです。ネガティブな部分は誰もが持っているものだし、喜怒哀楽の“喜”も“楽”もすべてネガティブな感情から生まれたもののほうがリアリティがあると思うんですよ」
——演奏面でも新しい部分はありますか?
鉄平「アレンジに関して言えば、リズム的にはいろいろチャレンジできて面白かったですね。例えばある曲のベースラインは、ザが家に持ち帰って考えてきたりするわけです。ザは「こんなのは俺は弾けないけど、謙太郎なら弾けるでしょ?」って言う。で、謙太郎はそれを本当に弾いちゃうんですよ。そこの信頼関係というか、3人がまとまっていく感じがこのアルバムを通してありましたね」
——提案されたフレーズが、自分の弾きたいフレーズと違うということはなかったですか?
謙太郎「ないですね。ベースラインも自分のものというよりはバンドで作っているような感覚なんです。いいものはやっぱりいいわけだし、嫌だったら弾かないかもしれないけど」
ザ「ごく最初の頃はそれぞれ好き勝手にやってたけど、最近はベースに限らず、全部みんなで作っているという感じだよね」
鉄平「今回のアルバムで特に大きな役割を担ったのが、ザなんです。今までは三者三様でぶつかり合って面白いものが生まれればいいというスタンスだったけど、やっぱり牽引する人が必要なんじゃないかという話になって。ザは完成型やそこにたどり着く道筋が見えてるんです。今回のアルバムはザのリーダー作だなと強く感じますね」
プロフィール
BAZRA(ばずら)
2000年結成のスリーピースロックバンド。メンバーは井上鉄平(Vo,G)、三浦謙太郎(B)、ザ・ミエダタクヤ(Dr)の3名。激しいロックサウンドと独特のボーカルで、コアなロックファンを中心に注目を集める。地元・札幌や下北沢でのライブ活動を経て、2002年にミニアルバム「ひょうろくだま」をインディーズリリース。2005年にミニアルバム「switch」でメジャー移籍。現在も都内ライブハウスを中心に活動中。