難しい言葉を使いたいなら、小説家になったほうがいい
──バンドハラスメントの楽曲はピアノやストリングスをフィーチャーした楽曲も多いですよね。制作するうえで「この4人じゃないと鳴らせない音」へのこだわりや縛りはない?
斉本 それは全然ないですね。何人にでも増えたらいいのにって思うことさえあります(笑)。
ワタさん 最初に曲をもらうときは斉本の鼻歌で、楽器の演奏は付いてないんですよ。僕の役割は、そのメロディラインを生かせる楽器の音色やアレンジを考えていくことで。めちゃくちゃ時間はかかるんですけど、僕はもともと機材をいじるのが好きなので楽しくて。
──そうなんですね。井深さんはボーカリストとして、斉本さんの楽曲のどんなところに魅力を感じますか?
井深 とにかく素直なんですよね。歌詞にしても、あえて遠回しにしたりオシャレな言葉を並べることもできると思うんですけど、ここまで素直で心に刺さる言葉を並べてくる人って珍しいなと。それを自分の声に乗せてリスナーに届けることができるのは、幸せなことだなと思ってます。
斉本 難しい言葉を使いたいんだったら、小説家になったほうがいいんじゃないかって思うんですよ。音楽に乗せて伝えるんだったら、今感じていることをまっすぐに書いたほうがカッコいいじゃん、って。
第2章のエンドロールに僕の名前は存在するのか?
──では「エンドロール」について話を聞かせてください。タイトルにはバンドの結成から現在までの活動を総括する意味合いが込められているのでしょうか?
斉本 これまでの総括というよりは、どちらかと言うと「第2章のエンドロール」をイメージしているんです。僕はつい先日21歳になったんですけど、そこで自分の物語の第1章が終わったなと感じたんですよ。ちょうど本気でバンドをやっていくんだと決めて、学校を辞めた頃で。
──10代が終わった実感というか、青春が終わったというイメージですか?
斉本 もっとさかのぼって、0歳から20歳までの20年間の物語が終わった感覚ですね。で、映画って物語の終わりにはエンドロールが流れるじゃないですか。僕の物語の第1章は、ちゃんとエンドロールの最初に自分の名前が流れていた。でも、20歳から21歳までの1年間を過ごして感じたのは、「第2章のエンドロールには自分の名前が載っていないんじゃないか?」という不安だったんです。「大人になる瞬間ってこういうものなのか」っていうか。
──自分の名前が1番に流れるはずだったのに、誰か別の人が入ってしまう?
斉本 そうですね、「どうせ脇役なんだろうな、俺は」って思って。だから今作は「第2章のエンドロールが流れるときに、僕たちの名前は存在するのか?」という問いかけそのものがコンセプトなんです。まだ物語は始まったばかりなので、確かな答えは得られていないんですけど。
過激な部分はアラビア語にしました
──アルバムの1曲目を飾る「脇役」は、まさにそんな不安を歌った楽曲です。
斉本 はい。昔はアニメやドラマを観ていて感情移入する人物って、いつも真ん中に立ってる人だったんです。戦隊ヒーローでいう赤レンジャーですね(笑)。でも歳を取るにつれて、臆病な脇役ばかりに共感している自分がいて。RPGで言えばお姫様を幸せにする主人公ではなくて、同じ言葉しかしゃべれない村人とか、城の門兵に自分を重ねちゃうんですよ。
──なんだか意外な気がしますが。
斉本 普段は言いたいことを言ってしまうタイプなんですけど。付き合っていた彼女にだけは、大切なことを言えなかったんですよね。
──「脇役」もそうですが、本作の収録曲は基本的に報われない思いや伝えられなかった感情について歌っていますよね。そんな中、突如として「アリバイパリナイ」のような陽気なパーティチューンも登場します。この曲、6曲の中ではかなり異彩を放っていますよね。
斉本 そうですね。この曲は隠しトラックとして入れようと思っていたんですけど、曲としての完成度も高いし、カラオケとかでも楽しんでもらえるかなと。
井深 レコーディングでは舌が回らなくてなかなか大変でしたけど(笑)、慣れてくれば単純に楽しいです。
──展開が多くて今っぽいですし、ライブで聴いたら何も考えずに楽しめると思います。ただ、歌詞にはすべてを客観視するような冷静さがあって。最後のアラビア語はなんと言っているんですか?
斉本 けっこう過激なことを言っているのでアラビア語にしました。解読できた人だけわかったほうがいいかなと。もしかしたら収録曲の中で一番闇の深い曲かもしれません(笑)。
──そうなんですね(笑)。ラストナンバー「9月10日」は、斉本さんに多大なる影響を与えた彼女についてまっすぐに歌われた楽曲です。
斉本 はい。男はいつまで経っても子供だって言われるけど、本当にその通りで。加えてバンドマンの僕らなんて本当に子供ですよ(笑)。それに比べて女の子ってあっと言う間に成長していくじゃないですか。そういう不甲斐ない気持ちを正直に書いた曲ですね。カッコ付けることもできるけど、僕は本音を歌いたいと思うので。
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牛丼屋で決めた第1章の終わり
- バンドハラスメント「エンドロール」
- 2017年5月3日発売 / SANTA IS PAPA
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[CD]
1944円 / SANPA-0001
- 収録曲
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- 脇役
- 大人になるために
- サヨナラをした僕等は2度と逢えないから
- 君がいて
- アリバイパリナイ
- 9月4日
- バンドハラスメント「エンドロール TOUR」
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- 2017年5月13日(土)東京都 TSUTAYA O-nest
- 2017年5月17日(水)福岡県 Queblick
- 2017年5月20日(土)大阪府 新神楽
- 2017年5月27日(土)愛知県 栄R.A.D.
- 2017年6月1日(木)新潟県 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
- 2017年7月1日(土)北海道 札幌KRAPS HALL
※ライブイベント「夢チカLIVE vol.121」への出演 - 2017年7月15日(土)会場未定
- バンドハラスメント
- 井深(Vo)、ワタさん(G)、はっこー(B)、斉本佳朗(Dr)からなるロックバンド。2015年11月に現在のメンバーが集まり、名古屋を拠点に精力的なライブ活動をスタートさせる。2016年には「SUMMER SONIC」、「METROCK ZERO」と大型ライブイベントに相次いで出演。10月に1stシングル「君がいて」を名古屋地区限定でリリースし、初の全国ツアーを敢行した。2017年5月に初の全国流通盤となるミニアルバム「エンドロール」を発表する。