音楽ナタリー Power Push - Azumi

盟友と築き上げたキャリア16年の1stオリジナルアルバム

私が全責任を負えますっていうアルバム

──「CARNIVAL」が完成してみて、Azumiさんにとってはどんな作品になったなと思いますか?

これ、私の1stオリジナルアルバムなんですよ。でも過去にも(Wyolicaで)1stアルバムを出してるじゃないですか(笑)。

──ええ。

その点の新鮮さはないです。でも、一番初めのワケがわからなかった感じとは全然違う。16年前のあのときは追われて追われて必死で作っていて、作品をあまり客観視できていなかったんですよね。今回は自分でトータル的に見ているし、私が全責任を負えますっていうアルバムなんです。と言いつつも、初々しい新人のように、聴いていただくのが緊張するっていう……複雑な感じです(笑)。課題も見えたので「まだまだやろう」って、未来を見られる作品にもなりました。

──基本的な制作の進め方は、楽曲のプロデューサーを選定して、その方々にコンセプトを伝えて、曲が上がってきて、という感じですか?

その通りです。曲を作ってほしい方にオファーして、いろいろリクエストしたり、意見交換したりして。

──具体的にどんなリクエストを?

人それぞれなんですけど、曲のテイストやイメージ、「この楽器の音が欲しい」ということは伝えました。私は最初からアルバム全体や曲順のバランスを見ていて、「あの方の曲はこういうふうに上がるはずだから1曲目になるかもしれない」とか「あの方は4曲目に値するものを作ってくれるんじゃないかな」とか思いながら進めていました。皆さんアーティストですし、何が出てくるかわからないからホント賭けなんですけど、皆さんの才能を信じて私は待ちますっていう感じでした。

──仮にだとしても、曲順まで絞り込むのはすごいですね。

これまでにアルバムをけっこう作ってきたので、アルバムをこう魅せるっていう、トータルバランスをとるクセみたいなものもあるんですよね。で、ここに置きたい曲をこの人に書いてほしいなと。さらに足りない曲を自分で作っていきました。

──となると、総制作期間はどのぐらいになるんですかね?

企画立案から数えると2年ですね(笑)。

──ご自身が監修もしながらだったらそうなりますよね。細かいことはスタッフにお任せというタイプではなさそうですし。

それはねー、全然できないです。逆に全責任を取れるものじゃないと私が納得できないし、「言われたから作ったんだよ」みたいな言い訳をしたくないので。そうなった時点で音楽にウソついてるような気がするし、ファンの皆さんにウソつくことになるから、絶対それは嫌なんです。苦労しないとね、充実感もないし。

建志くんは天才

──アルバムの中身について伺います。1曲目に収められたKjプロデュースの「Carnival」なんですが、KjさんのAzumiさんへの理解度みたいなものがすごいと思いました。Azumiさんらしさを出した王道な一面、新しい魅力を引き出したチャレンジングな一面が共存していて、これはキャリアを長く見つめている人じゃないとできない技だと思います。

まさしくそうですね。(降谷)建志くんには、実は10年前も私のソロの曲(「FLY」)を作ってもらっているんですね。今回はその進化形になるだろうなと思っていて。彼は彼で「Azumiちゃんはフォークトロニカが合うと思う」とずっと言ってくれていたので、そこを踏まえて、アコギを使った少しアップ目な曲がいいなっていうリクエストだけはしました。そしたらこのトラックが上がってきて、先ほどおっしゃったように私のことを100%考えてくれているなと感じたんです。そして聴いたときにすぐ「Carnival」って浮かんだんですね。で、「『Carnival』っていうタイトルにしたいんだけど」って言ったら、建志くんも「いいね」と言ってくれて。

──Kjさんから上がってきた曲に仮タイトルは付いてなかったんですか?

「Azumi」って書いてありました。

──へえ! じゃあホントにAzumiさんのアーティスト性みたいなものを見つめて作ったってことなんですかね。

どうなんでしょう(笑)。で、そう伝えたら仮歌が乗って返ってきて、冒頭のリリックが「調度いいことは 難しいこと」っていうものだったんです。この人は、こんなに人の心の奥に突き刺さることをいとも簡単に言ってしまう……天才だ!って(笑)。この歌詞とうまく融合できたらいいなと思いながら私も歌詞を書いたんですけど、建志くんが言うことは簡単な言葉でもすごく深みがあるから、なかなか歌詞も書き応えがあるというか。難しいけどやりがいのある作業でしたね、建志くんとの制作は。

──それにしてもKjさんは、ソロやDragon Ashの楽曲もさることながら、プロデューサーとしてもその人にピッタリの曲を非常に豊かな音楽性で作れる、優れた才能を持った方ですね。

天才ですよね。直接言ったら調子に乗るから言わないけど(笑)、すごいと思いますこの人は。私の人生のターニングポイントに必ずいる人なので、このアルバムにも絶対いてくれないと困りますって言ったんです。

──ちなみにこの曲が「Carnival」というタイトルになってから、アルバムタイトルも「CARNIVAL」に決めたんですか?

ほぼ同じタイミングでしたね。アルバムタイトルをなんとなく考えていて、それが「Carnival」とリンクしたんだと思います。

1stオリジナルアルバム「CARNIVAL」2015年12月2日発売 / Warner Music Japan / 3024円 / WPCL-12246
「CARNIVAL」
収録曲
  1. Carnival(Produced by Kj[Dragon Ash])
  2. Crazy Days feat. ILMARI(RIP SLYME)(Produced by 社長[SOIL & "PIMP" SESSIONS])
  3. I want it feat. 韻シスト(Produced by 韻シスト)
  4. Rainy Days(Produced by DJ JIN[RHYMESTER])
  5. 一日の終わりは君と一緒に(Produced by Azumi & 松本圭司)
  6. 私という名の場所へ(Produced by 大江千里)
  7. もっともっと(Produced by 韻シスト)
  8. REPEAT 1%(Produced by 川口大輔)
  9. RED STAR(Produced by Azumi & 松本圭司)
  10. ハートストリングス(Produced by 藤本一馬[orange pekoe])
Azumi 1st Album Release Live「CARNIVAL!!」
  • 2016年2月13日(土)大阪府 Shangri-La
  • 2016年2月26日(金)東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE

<一般販売チケット受付>
販売期間:2015年12月12日(土)10:00~2016年2月9日(火)18:00
料金:4320円(ドリンク別)

Azumi(アズミ)
Azumi

シンガーソングライター。1999年、Wyolicaのボーカルとして大沢伸一プロデュースでデビュー。優しく透明感のある歌声と穏やかで切ない歌詞、メロディを武器に、ソロとしてDragon Ash、Steady&Co.、スネオヘアー、SOFFet、MOOMINなど、さまざまなアーティストの楽曲のフィーチャリングボーカルとして起用される。2011年にソロ活動再開、DJ活動開始。9月には親交の深いピアニストを招き1stソロアルバム「ぴあのとあずみ」を、2013年4月にはカバーアルバム「NEW STANDARD」をリリースする。2013年5月、Wyolicaが解散。2015年12月にこれまでの集大成としてソロオリジナルアルバム「CARNIVAL」を発表した。また、2012年に設立したヘアアクセサリーブランド「Tuno by Azumi」のデザイナーを務め、映画「函館珈琲」にヒロイン役で出演を果たすなど、アーティスト活動のほかにも幅広く活躍中。