度重なる“中止”
──あまり愉快ではない話を蒸し返すようですが、AZALEAの単独ライブは緊急事態宣言の影響を何度も受けてしまって……。
小宮 いつもタイミングが悪く……。
諏訪 うん。
高槻 1stライブに向けて一生懸命リハーサルしていたのに、当初の予定から1年以上も先延ばしになってしまっている状態で。
小宮 去年の3月の1stライブが中止になり、6月の振替公演も、さらに今年2月の再振替公演(「AZALEA First LOVELIVE! ~Amazing Travel DNA~ TRY AGAIN」)まで中止になって……。
高槻 何がつらいって、もちろんみんなに会えないのもそうですけど、本当にいいパフォーマンスができる自信があったのに、それをお見せする機会が失われるたびに不安な気持ちが生まれてきちゃって。だからこそ、みんなの前で「We'll get the next dream!!!」を歌うことでそういうモヤモヤも晴らせるんじゃないかと思います。
小宮 当たり前なんですけど、ライブって私たちだけの力でできるものじゃないんですよね。AqoursでもAZALEAでも、スタッフの皆さんもリハーサルのときからめちゃめちゃライブ本番を楽しみにして、「こういうときだからこそ、みんなで力を合わせてがんばろう」という気持ちでいいものを作ろうとしてくださっているんですよ。その思いも断たれてしまう。だから余計に悔しいんです。
──僕は「We'll get the next dream!!!」の「また遊びましょう」という歌詞が好きなのですが、ファンの皆さんにとってもうれしいメッセージではないかと。
畑 直球だけど、AZALEAに「また遊びましょう」と言われたら素直に「うん」って返しちゃうんじゃないか。そういう対話ができたらいいなと思いました。オンラインでの接点があったとしても、やっぱり直接エネルギーの交換ができる現場というものを皆さんも求めているのは間違いないので。
小宮 私はこの曲で、ぜひやってほしい演出があるんですよね。
畑 どんな?
小宮 それは……内緒です(笑)。いつか訪れるライブ本番を楽しみにしていてください。
降臨した「PHOENIX」
──2曲目の「PHOENIX DANCE」は大人っぽいトロピカルハウスで、こちらも従来のAZALEAにはなかったカラーですね。
諏訪 AZALEAだけじゃなくて、アニソン・キャラソンシーンを見てもあんまりないですよね。
小宮 珍しいですよね。振り付けとかどうなっちゃうんだろう?
諏訪 くねくね系?
高槻 腰痩せしそう(笑)。
畑 「PHOENIX DANCE」の歌詞はお任せだったので、「新しいAZALEAを見せる」ということを念頭に、ベタに「DANCE」を入れちゃいました。AZALEAはEDMユニットとも言えるのに、実は今まで「DANCE」というワードは使っていなかったんですよ。この「DANCE」にAZALEAならではの何かを挟みたい思ったときに、さっきの話じゃないですけど、AZALEAはどこかに飛び立ってほしいなと。
諏訪・小宮・高槻 ああー。
畑 でも、飛ぶための羽は普通の羽じゃなくていい。あれこれ考えているうちに「燃えるような羽は?」「ちょっと大きく出すぎかもしれないけど……」と思いつつ「これなら衣装もカッコいいのを着てくれるんじゃないか?」とかいろいろな煩悩が私の中で舞い踊りまして、ついに「PHOENIX」さんが降臨してしまいました。
高槻 ステージから炎を出してほしい!
小宮 それいいかも。
高槻 「PHOENIX」という言葉自体は強い感じがするんですけど、自然とセクシーに歌っていました。この曲も有紗から録ったんだよね。
小宮 そうなんです。またトップバッターとして自由に歌わせてもらいました。
諏訪 今回の新曲は3曲とも有紗が一番手で歌ってくれて。
畑 切り込み隊長ですね。
──最初に歌った人がレールを敷くような感じですか?
小宮 それもあると思いますね。だいたい花丸が最初に録ることが多いんですけど、じゃあ花丸の歌を受け取ったうえでダイヤならどう表現するかみたいな。たまたま今回は私が最初で、「PHOENIX DANCE」からは新曲の中で一番セクシーっぽさを感じたので、それを素直に出しました。
畑 けっこうギリギリな感じですよね。
高槻 歌の技術的にもギリギリ感があるというか、特に2番のAメロは花丸のソロパートになっているんですけど、息継ぎが大変なんですよ。でも言葉がきれいに聞こえるように歌いたくて、いつもより声量を抑えて耳元で囁くような声を混ぜながら歌ってます。真夏に汗をかいて息切れしてるぐらいのゼーハー感が、この曲にはカッコよくハマると思いました。
畑 いかに直接的な言葉を使わずにセクシーっぽさを感じさせることができるのかというのが私の裏テーマでもあったので、ちゃんと伝わってよかった。
──だからといって決して下品ではないですね。
小宮 たぶん、果南、ダイヤ、花丸の3人が歌ったらどう転んでも下品にはならないと思うんです。もともとすごく清楚な子たちだから余計にやりやすいというか、そういう一面を見せられるのがAZALEAなのかなって。
畑 うん。彼女たちの純度の高さが歌詞を受け止めてくれているところはありますね。
“尊さ”こそAZALEAの個性
──もう1つの新曲「メタモルフィズム」はR&BテイストのメロウなEDMで、やはりこの曲も新鮮に感じました。
小宮 でも、歌詞は定番のAZALEA感が出ている気がします。
諏訪 1行目から「羽が生まれる…」だしね。
畑 今度は蝶々の羽なんです。
小宮 「メタモルフィズム」はダイヤがセンターで歌う曲なんですけど、ダイヤがセンターのときはなぜか飛びまくっているんですよ。この曲でも「飛んでみて」と歌っているし。
畑 ダイヤは飛びキャラだったのか(笑)。
諏訪 作詞の段階では、誰がセンターなのかはわからないんですよね?
畑 わからないんですよ。だから偶然ですね。「メタモルフィズム」は、「We'll get the next dream!!!」でダークヒロインとして冒険して、「PHOENIX DANCE」で燃えながら飛んだので、最後はみんなが知っているAZALEAにすっと包まれるような歌詞になったらいいなと。そう思ったときに、やっぱり今もみんな閉じこもりがちじゃないですか。そうなると自分の内面と向き合う時間が多くなって、ともすれば他者を拒絶するような気持ちも生まれてくると思うんですよ。
諏訪・小宮・高槻 うんうん。
畑 でもそれって、本当は誰かに触れたいんだけど、安全な場所から外に出るのが怖いから触れられないだけであって、そこに手を差し伸べてくれるのがAZALEAなんじゃないか。そうやって誰かを包むような羽ってどんな羽だろうと考えたとき、例えば天使の羽だと“正しさ”成分が多すぎる気がしたんです。でも蝶の羽だったら、ひらひらと、「心はいつだって自由に飛べるんだよ」みたいなメッセージになるんじゃないかなって。しかも蝶の羽って、儚くて、すぐ破れちゃう。だけど「あなたと一緒に飛べるなら羽が破れてもいい」みたいなAZALEAの意志の強さが、みんなを安心させてくれると思ったんです。
高槻 歌っていて、すごく優しい歌詞だなって思いました。
諏訪 うん。3曲の中で、一番ストンと自分の中に入ってくる。
高槻 あと「メタモルフィズム」は「GALAXY HidE and SeeK」に通じるものがあるとも思ったんです。「GALAXY HidE and SeeK」はセンターにダイヤがいて、そこに果南と花丸が寄り添うような感じなんですけど、「メタモルフィズム」も1番はダイヤが歌って、2番から私たちが入っていくので。
小宮 私も「メタモルフィズム」は「GALAXY HidE and SeeK」と、そのカップリングの「INNOCENT BIRD」の続きという感じがしていて。
──アルバムの曲順もそうなっていますね。
高槻 「INNOCENT BIRD」の「卵の中」と、「メタモルフィズム」の「固いカプセル」も似てる。
畑 同じ世界観と言っていいと思います。私には個人的にすごく好きなテーマがあって、それは“存在と存在との距離感”なんです。要は遠く離れているけれど、心はすぐそばにあるんじゃないかという話なんですけど、その離れ方が、私の好みでは異常なんですよ。それこそ地球と宇宙とか。だから「メタモルフィズム」もさなぎの中と外という埋め難い距離があるんですけど、それでも心は触れ合いたいというテーマは根底していて。そういうことを歌うAZALEAが尊いのだと、私は思っているんですね。異常な距離感なのに、なぜか隣にいるような気がする。そして尊い。それがAZALEA、みたいな。
──「尊い」を2回言いましたね。
畑 尊さはかなり大きなAZALEAの特徴なんじゃないかなって。はるか遠くにある光に向かって願うような気持ちになる。そういう個性があると思うんです。
とにかく1stライブがやりたい!
──では最後に、今後のAZALEAの活動として……。
小宮 とにかく1stライブがやりたいです!
諏訪 それは本当にそう。
小宮 これだけ「飛ぶ、飛ぶ」「羽、羽」と言っているんだから、本当にステージ上を飛び回ってやるぐらいの気持ちでいます。
諏訪 AZALEAの曲にはSF的な要素もあるので、例えば宇宙に見立てたステージで、実際に私たちも宙に浮いたりできたら面白そう。
高槻 もちろんライブもやりたいし、それまでにこのアルバムの楽曲たちがより多くの人の心に届いて、そして寄り添ってくれるものになってほしいです。
畑 私も早く3人のライブが観たい! そのうえでどんどん次なる不思議な世界を描いてほしいし、その力になれるような歌詞をこれからも書き続けたい。今日、みんなと話せたことでいろいろと腑に落ちたこともあったので。
小宮 私も畑さんとお話しできたおかげで「この方向で間違ってなかったんだ!」と思いましたし、これからもこの方向で突き進んでいけそうな気がします。
畑 本来なら歌詞を書く前にこういう時間を持つのがいいのかもしれないけど、それがなかったからこそお互いに冒険できたのかもしれませんね。なので、今後もAZALEAのやり方で、遠慮なく歌っちゃってください。
諏訪・小宮・高槻 はい!