リード曲はかなりの挑戦
──アルバム「#Twenty」には、去年からリリースしてきた曲が全部入っていますね。
はい。恋愛とか日常でのモヤモヤとか、逆に期待やワクワクとか、全部をぎゅっと詰め込んだアルバムになってるので、同世代の方たちに届いてほしいです。
──去年最初に発表した楽曲「泣きたい夜」は、とても“上京者感”のある曲ですね。
そうですね。1発目はどういう曲を出そうかと西さんと2人で考えて。「等身大の今のAYANEをそのまま書けばいいんじゃない?」とアドバイスをいただいて書いた歌詞です。不安や寂しさが前面に出てると思うんですけど、その中に将来へのワクワクした気持ちも込めた歌詞になっています。
──楽曲のバランスが非常にいいアルバムだと思いました。テーマにバリエーションがあるし、音楽性の幅もある。中でもR&Bやヒップホップの色が強い気がしましたが、自身の感覚としてはどうですか?
R&Bやヒップホップもですが、実はロックも大好きなので、AYANEのメロディにはいろんなジャンルの要素が混じってるのかなと思います。
──アルバムには新曲が3曲入ってますね。「Bitter & Sweet」と「まだ、、」と「星に願いを」。「Bitter & Sweet」はまさにロックっぽい曲ですが、アレンジによって全然違う印象を受けるかも、と思いました。
これはアコギを弾きながら作った曲なんです。カントリーの要素も、ロックの要素も入れたくて。歌詞は「泣きたい夜」と通じるところがあるんですけど、こっちは寂しさも悩みもスカッと吹っ飛ばしてくれるような、ライブでみんなで「イェー!」って叫ぶようなイメージの曲ですね。
──「5pmの渋谷で 人混みにまぎれて 自分が嫌になっちゃって 泣いた日もある」という歌い出しが切ないですね。こういう経験って実際にありますか?
あります。人混みにまぎれて歩いてたら、自分がどこにいるのかわからなくなってくるし、例えば渋谷やったら、キャッキャしてるJKを見て「幸せそうやな……」みたいな気持ちになったりもします(笑)。
──バラード曲の「まだ、、」はアルバムの中でも抜群に印象的でした。曲調も歌い方もかなりシックな感じですよね。
AメロBメロはキーが低いんですけど、サビで一気に高くなって、レコーディングするのがめっちゃ難しかったです。レコーディングが始まる直前まで「マジ歌えへんかも……」ってずっと言ってました(笑)。
──これは大人っぽいイメージで作った曲なんでしょうか?
そうですね。アルバムの中でこの1曲だけテイストが違うんですよ。歌詞の雰囲気も今までとけっこう違っていて、「儚い」という言葉が似合う曲かなと思います。アレンジも歌い方もそれに合わせていて、かなりの挑戦でした。だからファンのみんなの反応が楽しみです。
──この曲のような出来事も実際に経験したことが?
あります。でも、経験したからといってすぐ歌詞に書けるわけじゃなくて。やっぱり歌詞って難しいんですよ。例えば「あなたがいなくて寂しいよ」みたいな直接的な言葉はあんま使いたくなくて、なんと言うかエモくて儚い、みたいな雰囲気にしたくて、西さんといろいろ相談しながら作りました。
──例えば「おいしい」という言葉を使わずにおいしさを表現する、みたいな?
そうですそうです。「まだ、、」はアルバムのリード曲なんですけど、本当は別の曲がリード曲の候補に挙がっていたんです。それがある日、改めて楽曲について話し合ったときに「何かが足りない気がする」という話になって。西さんから「AYANE、この曲はリードじゃなくない?」と言われて、「えっ! 今から作るんすか!」と驚きました。
──なんと! AYANEさんはどう思ったんですか?
「うーん、確かに……ちょっとそう思ってたんですよね……」みたいな(笑)。夜遅かったんですけど、そこから制作を始めて、改めて作ったのが「まだ、、」です。その日はもう遅かったんで、メロディだけ作ってスタジオから帰りました。
──火事場の馬鹿力というかなんというか、その経緯でこんな素敵な曲を作られたのはすごいですね。ちなみにリード曲の候補だった曲は、アルバムには……。
入ってないです。いつか出したいなとは思ってるんですけど。
──聴いてみたいですね。もう1つの新曲「星に願いを」もキーが低めで、ギター中心の静かなトラックが新鮮でした。
1人で過ごす夜に落ち着いて聴いてほしいという思いで作った曲です。歌詞の捉え方は自由なんですけど、遠距離とかでなかなか会えないカップルが、この曲を聴いて心がつながる。そんな曲になったらいいなって。
──「繋いだままのcall 見上げた星空」。エモいですね。
はい(笑)。尺が短いのもあえてというか、寝るときにリピートして聴くような、そんな心地いい曲になったらいいなという思いの表れです。
寄り添える存在になりたい
──新曲3曲はどれも素晴らしいですが、実は一番印象に残ったのは既発曲である「Love Letter」の「待って」というフレーズなんですよ。「春になって 待って 会いたいよいますぐ」。若い世代が日常会話で言う「え、待って」ですよね、これ。
けっこう口癖になってて、普段話してても「え、待って」ってめっちゃ言うんですよ。例えば何か忘れ物に気付いたときに「え、待って。忘れたかも」みたいに。「待って」ってひと言挟んでから話し始めたり。そのノリで「春になって、ぇ待って」って歌ってます(笑)。
──小さい「ぇ」が入るんですね(笑)。ここが素晴らしいと思いました。言葉に生命力を感じたというか、AYANEさんの日常が垣間見える感じというか。
特に意味はなくて、ここはギャルのノリですね。「ぇ待って。会いたいんやけど」みたいな(笑)。メロディに乗せてるからあんまりギャルっぽさはないかもですが。私自身は全然ギャルじゃないんですけど、ギャルの子のノリってあるじゃないですか。あれがもう大好きなんです(笑)。
──女の子って、その人自身はギャルじゃなくても「ギャルが好き」っていう人が多いですよね。
見てると元気が出るじゃないですか。大好きですね。「イェー」ってはっちゃけてるし、「楽しい!」という気持ちを前面に出してる。でも、絶対に弱いところもあるし、彼氏に一途な子も多い。そういうギャップにみんな惹かれるんじゃないかと思います。
──わかります。ギャルが言ってることに共感もしますか?
しますします。「bye bye」という曲はそういうギャル寄りの女の子が共感してくれることが多くて、うれしいですね。元気を前面に出してる分、誰にも悩みを相談できなかったりもすると思うんですよ。そういう子たちにAYANEの曲だけでも寄り添ってあげられたらいいなという思いもあったり。
──優しい。やっぱり同世代の女の子に聴いてもらいたいんですね。
もちろんです。変に背伸びするより、等身大の気持ちで曲を書いていったほうが共感してもらえるかなと思っています。
──アルバムタイトルも「#Twenty」ですしね。
短い単語ではっきり伝わるタイトルがいいなと思ってたんですよ。「何がいいかな……等身大で書いた曲を集めたから日常みたいな意味も入れたいな……『Twenty』いいんじゃない?」と思いついて。西さんに伝えたら、「いいじゃん。でもなんかひねりが欲しくない?」という話になって、「#」を付けました。
──アルバムのリリース日にはこのハッシュタグがSNS上であふれてほしいですね。収録曲にはどれもAYANEさんの色や個性が出ていると思いますが、それをもっと具体的に言うとしたら?
自分のことを、なんでもポジティブに考えていく性格だと思っていて。たまにお悩み相談のDMが届いたりするんですけど、なるべくポジティブに答えていきたいなと意識しています。Twitterのプロフィールにも「長所ポジティブ、短所ポジティブ」って書いてるんですけど、実は最近の悩みが、ポジティブを前面に出しすぎて逆にネガティブになってきたな……ということで(笑)。この間、お母さんに「いつでも元気でいやなあかんのかな? なんか落ち込まへんキャラができてんのよな、AYANEって」って話したら、「そういうの曲にしたらええねん」と言われました(笑)。
──お母さん、素晴らしいアドバイスですね。
基本、ポジティブだけど、もちろんネガティブになることもあって。
──人間ですからね。当然です。
シンガーって「ファンにとっての憧れの存在」みたいな人が多いじゃないですか。AYANEはそうじゃなくて、みんなに寄り添える存在になりたいなと思ってます。「一緒の気持ちだよ」って伝えていきたいなって。
──弱みも含めて、人間性を正直に出していきたいということですね。
正直にずっと生きていきたいです。ありのままで。ありのままが何かわからなくなるときもあるんですけど、そういう思いも表に出していきたい。たぶんみんなも同じ気持ちを持ってると思うから、それを隠さず全部出していったら、寄り添えるものに変わるというか。みんなの力になれたりするのかなって。
──ちょっと凹んだ姿が見えたりすると、「ポジティブなAYANEちゃんもこんなことあるんだ。私も大丈夫だな」と楽になれるかもしれませんね。失恋の歌が多いのも、寄り添いたい気持ちの表れでしょうか。
失恋の歌、多いですよね。DMでお悩み相談をもらうときも失恋の話が多いので、自然とそうなってるのかなと思います。
──悩み相談をしてくれる子たちのことをイメージしながら曲を作ったりもします?
はい。例えば「彼氏が全然電話に出てくれません」って言われたら、そのまま歌詞に入れちゃったりとかもします。
AYANEという名前はまだまだ浸透してない
──8月に初めてのライブツアーが開催されるそうですね。
はい、東名阪で。挑戦ですね。「#Twenty」に込めた思いをみんなに……爆発させてぶつけにいくというか(笑)、全力で届けに行きたいです。初めてのツアーということもあって、すごくドキドキしてるんですけど、何よりファンのみんなと一緒に音楽を楽しむことを大事にして、来てくれた人の活力になるようなライブができたらなと思っています。
──単独でのライブもひさしぶりですから、楽しみですよね。
楽しみ! ワクワクと、ちょっとプレッシャーと、いろいろ混ざってます。「泣きたい夜」と「bye bye」がTikTokでバズってから初めての主催ライブなんで、はじめましての方も来てくれるかなという期待も込めつつ、いろいろと計画しているところです。
──AYANEさんはSNSで曲を広めることに成功しましたが、そういうアーティストならではのメリットと悩みは?
いいところは、曲を出したら知らぬ間にどんどん広がっていくことですかね。ファンの方から「大学の友達がAYANEの曲を聴いていて……」と言われることもあります。あと、TikTokを見てたら自分の曲が流れてきて「え? そこまでみんな知ってくれてるの?」と驚くこともあって、そういうのはすごくうれしいですね。難しいなと思うのは、曲が先行しちゃって、誰が歌ってるのかがまだ全然浸透してないことです。「『泣きたい夜』って知ってる?」「知ってる。めっちゃ聴いてる」「私、歌ってんねん」「え! あんたやったん?」みたいな会話をすることが多くて(笑)。AYANEという名前はまだまだ浸透してないと思っているので、これからがんばっていかないと。
──曲と名前を結び付けていく場所がライブなんでしょうか?
ライブをやったり、この間「TGC teen ICHINOSEKI 2023」に出させていただいたようにいろんなイベントに出演したり、地道にがんばっていくしかないなと思ってます。
──将来はどんなアーティストになりたいですか?
同世代の人たちに等身大の自分を届けたい、寄り添いたいっていう気持ちは、ずっと変わらないと思います。プラス、最終的な目標は大阪城ホールでのワンマンライブですね。そこに向けてどんどん階段を登っていきたいです。長く続けていきたいなと思いつつ、すごく気分屋なので、いつどこで考え方が変わるかわかんないですけど(笑)。
──飽き性ですか。
飽き性かもしれない……ハマり始めたら思い切りハマるんですけど、「なんか違うな」と思ったらやってることをすぐ変えちゃうんです。
──音楽には飽きていないですよね、今のところ。
でも、音楽の中ではいろいろ行ったり来たりしてるんですよ。ちょっと絢香さんっぽい曲を歌ってみたり、家入レオさんっぽい曲を歌ってみたり。またはONE OK ROCKさんっぽい曲を作ってみたり。
──音楽性がどんどん変わっていくのは、ファンの皆さんも大歓迎だと思いますよ。
はい。いろんな曲を歌いつつ、音楽自体はずっと続けたいです。
ライブ情報
AYANE「#Twenty」LIVE TOUR 2023
- 2023年8月4日(金)東京都 Spotify O-Crest
- 2023年8月28日(月)愛知県 RAD SEVEN
- 2023年8月29日(火)大阪府 心斎橋VARON
プロフィール
AYANE(アヤネ)
2002年生まれ、関⻄出身。飾ることのない等身大の言葉を、歌唱力と自由度の高いパフォーマンスで表現するシンガーソングライター。TikTokやYouTubeを中心にオリジナル楽曲とカバー動画を発表している。中でもTikTokのフォロワー数は39万人以上で、「泣きたい夜」「bye bye」などのオリジナル楽曲の動画使用数が1万5000件を超えるなどティーンを中心に人気上昇中。2023年6月に1stアルバム「#Twenty」をリリースし、8月に東名阪の3会場にてライブツアー「AYANE『#Twenty』LIVE TOUR 2023」を開催する。
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