あさぎーにょ×竹林亮インタビュー|「グッバイ、コスモス」で提示する、自分の物差しを持つ生き方の魅力

あさぎーにょが企画および主題歌を担当し、キャストとして出演もしている短編映像作品「グッバイ、コスモス」がYouTubeで公開された。

「グッバイ、コスモス」は竹林亮が監督と脚本を務める作品で、リアルなVlog映像からフィクションの世界に移行していく“Vlog映画”。子供の姿になってしまったあさぎーにょとクリエイターの@小豆がショッピングや秘密基地制作を楽しむ様子や、元の姿に戻ろうと奮闘する模様が描かれる。

音楽ナタリーではあさぎーにょと竹林にインタビューを行い、「グッバイ、コスモス」と、物語のラストを彩る主題歌「グッバイコスモス」の制作エピソードを聞いた。

取材・文 / 沖さやこ撮影 / 山口真由子

「グッバイ、コスモス」とは

3月31日にあさぎーにょのYouTube公式チャンネルで公開された動画「記憶をかえしてください」で、リアルなVlog映像からフィクションの世界に移行していく“Vlog映画”。3月30日に同チャンネルで公開された動画「共感のうなずきで首取れるかと思ったwww@小豆ちゃんと推しの購入品紹介♡」は「記憶をかえしてください」の前日譚となっている。本作はあさぎーにょが企画、主題歌、キャスト、竹林亮が監督と脚本を担当している。「子供に戻りたい」と願ったあさぎーにょとクリエイターの@小豆が翌朝起きると本当に子供の姿になってしまうというストーリーで、子供の姿になった2人がショッピングや秘密基地制作を楽しむ様子や元の姿に戻ろうと奮闘する模様が描かれる。

他人の物差しで自分を測らない生き方

──映像作品「グッバイ、コスモス」の舞台挨拶では、あさぎーにょさんと竹林亮さんが短編映画作品でタッグを組まれるのは3度目だという話がありました(参照:あさぎーにょ新作“Vlog映画”舞台挨拶で会心の出来をアピール「同じ悩みを持つ方に届けたい」)。今回は「“Vlog映画”を作ろう」という話から始動したそうですね。

あさぎーにょ そうですね。それ以外何も決まっていない状態で、まず竹林さんにお声がけをして。

竹林亮 2019年12月に「ハロー!ブランニューワールド」、2020年8月に「Where is My Photo」と一緒に短編映画を発表してきたので、これを継続的にやりたいねという話はしていて。声をかけていただいてから、どんな題材で映像を作っていくか案を出し合っていきました。

あさぎーにょ 突然ミュージックビデオが始まるとか、森で熊を助けるとかいろんな案を出して、その中で「子供に戻りたい」という案も出したんです。そこに「みんなを驚かせたい」という思いをプラスして、「突然子供になってしまった」という設定がまとまりました。

竹林 そこからいろんなアプローチを考えて、あらすじを組み立てて。1週間に1度あさぎーにょさんにできた分のあらすじを渡して「これは共感できる」「これはできない」と意見を交わしました。その中で、あさぎーにょさんが繰り返し「他人の物差しで自分を測らない生き方に惹かれる」とおっしゃっていたので、これをメインテーマとしてプッシュすることにしたんです。

あさぎーにょ 「他人から測られる物差しを捨てて自分の物差しを持つ」というのは自分にとっての課題でもあるんです。ファンの方々からも「自分の好きなものや自分の世界観を全力で出すのが怖い」とYouTubeにコメントをいただくことが多いので、このテーマに決まりました。

あさぎーにょ

あさぎーにょ

──作中ではあさぎーにょさんが、大人になっても変わらずかわいいものが好きだけど、それを好きだと言うことに後ろめたさを感じているシーンがありました。これまでに“他人の物差し”が気になる場面は多かったですか?

あさぎーにょ 学生時代から多かったですね。特に環境やコミュニティが変わったタイミングです。「やめたほうがいいよ」「おかしいよ」と直接言われたことはないけど、自分はみんなと違うというのが明らかにわかる瞬間があって。そういうとき、孤独感が生まれてしまうことがよくありました。でも子どもの頃は自分の物差しを持っていたなと思うんです。あの頃は自分の好きなもので世界がいっぱいになっていて、夢中になってどんどん前に進んでいけた。あの無邪気さが自分にとっては大事なんですよね。

──その思いが「子供に戻りたい」という願望や、あさぎーにょさんが掲げている「ワクワクを抱きしめよう」というテーマにもつながっているということですね。竹林さんは子供の頃、どのようにお過ごしでしたか?

竹林 僕は子供の頃からものすごく周りの目を気にする人間でした。映画が大好きで、「ジュラシック・パーク」のサウンドトラックを聴いていたら同級生からバカにされて。幼心に「自分の本当の姿は受け入れてもらえないんだろうな」と思っていたんですよね。僕から見たあさぎーにょさんは、心の浮き沈みにすごく敏感になることで生きやすい道を見つけてきた人。それでいて周りの人も喜んでくれるものを、時間をかけて編み出している。

あさぎーにょ わあ、すごい分析。

竹林 だから意識的に子供の頃の思いを忘れないようにしているし、その意志が強いと思うんですよね。周りのことを気にしすぎて自分のしたいことができなくなってしまうことは、どんな年齢の人でも多いと思うんです。それはすごくもったいないことだし、それで好きなものを手放すことになるのはとても悲しい。言葉でしっかり伝えると重くなってしまうから、映画ではそういう思いをさまざまな場所に含ませられたらなと思いました。

竹林亮

竹林亮

ボーカリスト・あさぎーにょが次のステージへ

──では「グッバイ、コスモス」は、「子供に戻る」という回帰的なテーマもありつつ、あさぎーにょさんの成長が導いたテーマでもあるのでしょうか?

竹林 「ハロー!ブランニューワールド」を撮り終えたあと、あさぎーにょさんは「もっと自分を出していくことが課題だ」とおっしゃっていて。

あさぎーにょ あははは。そうそう。そうでしたね。

竹林 あれから2年経って、今回の「グッバイ、コスモス」でようやくそれができてきたのかなと僕は思っています。

あさぎーにょ 「ハロー!ブランニューワールド」のときは、自分の意見を言うことを躊躇してしまうこともありました。でも時間をかけて少しずつ竹林さんやスタッフと濃いセッションができるようになって、素直な気持ちを伝えられるようになってきて、「無邪気な自分でいよう」という意識を持てるようになりました。竹林さんはそんな私のことも見守ってくれているから、今の私の課題であり、大切に持っておきたいメッセージでもあるこのテーマにGOサインを出してくださったのかなと思ってます。物語とともに自分が成長している感覚があるんですよね。今回も「グッバイ、コスモス」を作ることで、より無邪気な自分になれたらなと思いました。

──まず主題歌のタイトルとして「グッバイコスモス」という言葉が思い浮かんだとのことで。

あさぎーにょ 今回は完全に物語と主題歌を並行して制作していて、主題歌は撮影に入るちょっと前に完成したんです。歌詞を書くにあたって「今回のテーマを言葉にするならどんな言葉がいいんだろう?」と調べていて。自分で立ち上げた会社とブランドにPOPPYというお花の名前を付けて、「ワクワクを抱きしめよう」というコンセプトでやっているんです。それもあって今回の作品名もお花がいいなと思い付いて、白いコスモスの花言葉の「優美」や「調和」にたどり着きました。「ぴったりだな!」と思いましたね。

左からあさぎーにょ、竹林亮。

左からあさぎーにょ、竹林亮。

──舞台挨拶でもおっしゃっていた「優美に凛としてみんなに合わせようとすることにさよならする」ということですね。それが結果的に映像作品のタイトルにもなったと。

あさぎーにょ 仮タイトルは「SMALL」だったんです。改めてタイトル会議をして、いろいろ案を出したけど一番しっくりきたのが「グッバイ、コスモス」でした。

竹林 「SMALL」だと子供に戻ったところまでは説明できるけど、その後に待っている物語が伝えられないなと思ったんです。でも「グッバイ、コスモス」だと、「なんでグッバイなの?」「切ない話なのかな?」「なんでコスモスなの?」と想像がかき立てられる感じがして。最後に同じ曲名の主題歌が流れたら、すごくきれいに着地できるなと思ったんです。物語がある程度固まったあたりで曲を聴かせていただいて、物語との親和性もすごく高いなと感じましたね。それに加えて、あさぎーにょさんがボーカリストとして次のステージにいっている感じがしました。

あさぎーにょ 物語は創作だけど、テーマになっているのは今の私のリアルな悩みであり課題なので、主題歌の歌詞もそれをそのまま詰め込んでいますね。私は普段からSNSを通して自分の気持ちをシェアしているので、いつも受け取ってくれるファンの方々からは「あさぎーにょ、一歩前に進んだんだな」「今はこれを乗り越えようとしてるんだ」と思いながら聴いてもらえていて。ボーカリストとしても、人間としても、成長を感じてもらえる曲になっていたらいいなと思いました。

あさぎーにょ

あさぎーにょ

──あさぎーにょさんはもともと歌手を目指して上京したものの、その活動中に「歌手になりたいというよりは、音楽を媒介にして何かを発信する活動がしたい」と気付いたというエピソードを以前お話されていました。今は音楽でどんな表現をしたいと考えていますか?

あさぎーにょ 音楽でしかできないことを、今は模索している最中なんですよね。私は歌うことが楽しいというよりは、歌を通して自分の思っていること、感じていることを表現するのが楽しい。だから自分の中で、曲を作ること、歌を歌うこと、映像作品を作ること、演じること、ファッションブランドで表現することはどれもすごく近いことなんです。これまではシーンごとに合った曲を作っていたんですけど、今回は今の自分のリアルな課題を作品に落とし込んでいるぶん、音楽でもそれを出したいなと思ったんです。

──これまでのあさぎーにょさんの楽曲は、ポップという共通点を持ちつつ、ジャンルレスな印象がありました。となると「グッバイコスモス」はもっとご自身に近いものということでしょうか。

あさぎーにょ 「グッバイコスモス」はサウンドも歌詞も映像のメッセージとしっかりリンクしたものにしたかったんです。前奏のピアノからお日さまのような温かみや柔らかみがあって、ほっこりするけど優しすぎなくて、芯の強さも感じられる。そういうところは「自分軸で生きていきたい」という思いを音にも反映できたのかなと思っていますね。歌詞の世界も含めて、POPPYの世界観に合った、自分らしさがより詰まった楽曲ができました。

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理想の声を求めて