音楽ナタリー Power Push - アルカラ

ドラゴンボール愛全開! 入魂の「炒飯MUSIC」

アルカラがニューシングル「炒飯MUSIC」をリリースした。このシングルのタイトル曲はフジテレビ系アニメ「ドラゴンボール超」のエンディングテーマとして書き下ろされた1曲。今回、音楽ナタリーでは同曲についてインタビューを行い、「ドラゴンボール」に関しての思い出から、オマージュとリスペクト満載の楽曲とMVの撮影エピソードまでを語ってもらった。

取材・文 / 田山雄士 撮影 / 後藤倫人

自分の血となり肉となっている「ドラゴンボール」

──「炒飯MUSIC」は、ものすごく“ドラゴンボール愛”が感じられる楽曲になりましたね。

アルカラ

稲村太佑(Vo, G) ありがとうございます。小学生の頃って、アニメにどっぷり浸かって夢を見るじゃないですか。そういうときに「ドラゴンボール」があった世代なので、「筋斗雲に乗りたい」「かめはめ波を出したい」って本気で思ってましたね。もう自分の血となり肉となって、今に至る感じ。関西では毎週水曜日、夜7時からやってて。観てたなあ。

下上貴弘(B)疋田武史(Dr) 観てたね。

田原和憲(G) 島根県も7時やったよ?(※田原は島根出身)

一同 あはははは!(笑)

疋田 オープニング曲もエンディング曲も今でも歌えるな。そういうアニメって、あまりないんですよ。自分が初めて観てから20年以上経つのに、歌詞とテーマ曲の映像が一緒に出てくるような作品は。

稲村 当時は子供やったんでアレンジとか歌詞の意味とかわかってなかったけど、今になって聴くと音楽的にも飛び抜けてるし。

田原 我が家で「週刊少年ジャンプ」を買い始めるきっかけになったのも、単行本を初めて買ったのも「ドラゴンボール」で、僕にとっては始まりの作品ですね。メタル界で言うたらIron Maiden!

下上 はははは(笑)。「ドラゴンボール」って最初は冒険ものだったのが、だんだん戦い中心のバトルマンガになって、キャラクターが強くなっていくじゃないですか。あのストーリーが自分の成長期と同時進行だった感じがしてますね。フリーザや人造人間が出てくるあたりで賛否両論があったのもなんか面白くて、今思うと深いなって。作品が変化していってるところが。時間が急に流れて悟空の背がいきなりデカくなるのも、鳥山明さんは相当悩んで描かれたんだろうし。

稲村 もっと早く終わる予定やったのが、人気がすごくて派生していったらしいよ。派生のほうが多いくらいで。アニメなんて、単行本に追い付いちゃうからいろいろエピソードが増えてたし。

疋田 元気玉のエネルギーを溜めるだけの回とかな(笑)。

稲村太佑(Vo, G)

稲村 そうそう。「ナメック星爆発まで、あと2分!」って始まったのに、放送30分が終わる頃に「あと1分!」ってナレーションで流れて「ウソやん!!」思った。

──そういう回がありましたね(笑)。

稲村 下上も言うてましたけど、「ドラゴンボール」は深い。鳥山明さんは見えてるんちゃうかなと思ってるんですよ、第六感的なものが。気が出てきたり、宇宙人や神様が出てきたり、あの世行ったり、生き返ったりして、スピリチュアルでしょ? 人間界とリンクしてる感じもするし、それをポップに描いてるのがすごいなって。

歴代主題歌に対するオマージュ満載

──その深い作品と向き合って、主題歌を作ることになったわけですが。

稲村 僕らが知ってる「ドラゴンボール」のことを何かしら思い浮かべられる、あるいはそこに回帰できる曲にしたかったんですよね。それで銅鑼の音を入れたり、逆再生を盛り込んでみたり、カンフーや中国っぽい音を入れたり。歴代主題歌に対するオマージュがたくさんあるんです。これまでの主題歌への責任感というか、単純にアルカラの曲をアニメに貼り付けただけみたいなものにはしたくなくて。

下上 銅鑼はモーモールルギャバンに借りてな(笑)。子供の頃は歌しか聴いてなかったけど、改めて過去の主題歌に触れるとサウンド面で「こんなことしてたんや!」っていうのはありましたね。厳ついベースラインに気付いたり。

稲村 カバーしようとしても、「どないなってんねん」って感じの曲が多いもんな。それでいて、1分くらいの中でドラマチックに仕上がってる。影山(ヒロノブ)さんの「CHA-LA HEAD-CHA-LA」なんて歌い上げまくってて、「オープニングからめっちゃテンション上がるやん!」みたいな(笑)。1分くらいの尺の中でいろいろ詰まってた。僕らは普段、3~4分で起承転結を付けて曲にすることがほとんどやから。だから、その1分で成り立たせておかないといけないと思った。テレビサイズがちゃんとした作品であるべきやなって。なのに、なぜか僕はそれを90秒と勘違いしてて。

──えー!

稲村 レコーディングの3日前くらいに、90秒の尺で「できたー!」言うてました(笑)。で、安心してたら実は60秒やったって気付いて。慌てて作業して。結果的により濃縮されたものができたので、ありがたい誤算やったんですけど。バンバン展開していって、ひたすら球を投げ続けるみたいな、やり切れた曲になったと思う。

田原和憲(G)

田原 うん。展開が多いからわかりやすく場面分けしたくて、ギターの音色をちょこちょこ変えて。でも、フレーズはシンプルでわかりやすいんじゃないかと思います。「ドラゴンボール」の主題歌って、ギターが主張してるイメージがまったくなかったんですよね。だから、フワッと乗せるように弾こうかなと。

疋田 俺は下上がスラップベースを弾いてるので、ドラムは最初だいぶ抑えてたんですけどね。「暴れ出せリビドー」のところからサビにかけての部分を稲村から「もっとチンチキできへん?」って言われて、ライドシンバルのカップの部分でやってみたらハマって。「ドラゴンボールZ」のエンディングの「でてこいとびきりZENKAIパワー!」の途中で、「出会って別れて出会って別れて た・い・へ・ん」ってあるじゃないですか。フレーズも、あれをイメージして叩いたらいい感じになりました。

下上 僕はただ単に、最近覚えたてのスラップをやってみたかっただけでしたね。でも5年前くらいかな? ラジオの企画で「魔訶不思議アドベンチャー!」(※「ドラゴンボール」主題歌)を弾いたことがあって、あの曲はスラップが入ってたみたいで。そんなんもすっかり忘れてたんですけど(笑)。

ニューシングル「炒飯MUSIC」 / 2016年11月23日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
初回限定盤 [CD+DVD] / 1944円 / VIZL-1085
通常盤 [CD] / 1296円 / VICL-37235
CD収録曲
  1. 炒飯MUSIC
  2. 怪盗ミラクル少年ボーイ2
  3. LET・IT・DIE
  4. 炒飯MUSIC カラオケ
  5. 怪盗ミラクル少年ボーイ2 カラオケ
  6. LET・IT・DIE カラオケ
初回限定盤DVD収録内容
  • ネコフェス2016 -KUDAKENEKO ROCK FESTIVAL 2016-
  • What’s ネコフェス2016
アルカラ
アルカラ

稲村太佑(G, Vo)、下上貴弘(B)、田原和憲(G)、疋田武史(Dr)の4人からなるロックバンド。2002年7月に結成され、2003年2月に現メンバーとなる。2008年に1stアルバム「そうきたか」を発表。2011年7月にアルバム「こっちを見ている」でメジャーデビューを果たす。2013年には地元・神戸を舞台にしたサーキットイベント「ネコフェス」を主催し、以降毎年実施している。また9月にリリースしたアルバム「むにむにの樹」を携えて行った全国ツアーでは全25公演で10000人を動員した。その後もコンスタントにリリースを続け、2016年11月にアニメ「ドラゴンボール超」のエンディングテーマ「炒飯MUSIC」を収録したシングルを発表した。自らを「ロック界の奇行師」と名乗って活動中。