ナタリー PowerPush - aquarifa
繊細な狂気の世界「月明かりのせいにして」
「シロツメクサ」がもたらしたもの
──こうしてお話を聞いていると、続けていけるメンバーに出会うことって大変なことだなと。
リンタロウ ホントにそう思います。
松川 そこをかなり痛感してきたバンドなのかもしれないです。
──岩田さんが加入したことでバンドにどんな影響や作用がありましたか?
松川 音作りですかね。前のボーカルはギターを持ってなかったんで、やっとやりたかったツインギターになり、以前より緻密に音作りできるようになりました。
リンタロウ あと、真知が弾き語りで曲を持ってきてくれることもあって。それがかなりバンドにとって新しい風になってる部分はありますね。
──今回でいうとどの曲ですか?
岩田 今回持っていったのは「水平線のむこうがわ」と「幼い靴」ですね。「36.5℃」は軽く弾き語りで作ったものをもとにみんなで作っていったという感じで。
松川 前作の最後に「シロツメクサ」って曲があるんですけど、そこで彼女はこのバンドにおける曲作りの何かをつかんだんだと思います。その曲はバンドにとって大事な曲で、そこでつかんだものが今回の2ndでさらに出たんだなと思いますね。
──簡単には分けられないですが、スローで繊細な印象の曲が岩田さんで……。
リンタロウ そうです。その分け方で合ってると思います、はい。
──そういう広がりをもたらしたんですね。
松川 ですね。それが2ndで一気にできるようになったと思います。
──岩田さんが持ってきた曲で形にするのが難しかった曲はありましたか?
松川 「幼い靴」は相当難航しました(笑)。そもそも実現不可能そうな組み合わせというか、このハードなギターの音質に、このボーカルを乗せることはバランス的に実現しないんじゃないか?というようなことをやろうとしてるのかもしれない。
──バンドサウンドと繊細なボーカルを混ぜるだけならいくらでもできそうですけど、ただ混ざってるんじゃ音楽的にダメだと思ってるから、アレンジも悩むんじゃないですか?
松川 確かにそうですね。悩みましたけど、今回のアルバムでその表現方法はだいぶ明確になったと思います。
狂気じみていて、どこか切ない歌詞
──作詞も岩田さんですよね。
岩田 はい。
──どうにも岩田さんが書く歌の主人公は自分を傷付けがちだと思うんです。そうした歌詞はどこからくるんでしょうか。
岩田 歌詞を書くのが夜が多くて。それにたぶん自分はポジティブかネガティブかというとネガティブな気質だと思うんですね。それで夜に自分が追い込まれたときに書くと、ちょっと狂気じみた歌詞が出てくるんです。でも決してネガティブになってみんな終わればいいというワケではなく、ひとりでは生きていけないという部分の「すがりたい」という気持ちが根本にはあります。
──今作では「それやったら死んじゃうでしょ」というか、いわゆるメンヘラって呼ばれるような行為を思わせる歌詞がかなり出てくるので、これは何を言われようが覚悟があるんだろうなと思ったんですけど。
岩田 そうですね。狂気じみている部分ですね。でもそこにどこか悲しいというか切ないものや後ろめたさもあります。それは自分だけの感情じゃなくて、今の時代のメンタル的なものとか、やはり実際にあるものに影響されて出てきた言葉ですね。いつかは包み込めるような言葉を歌えるようになりたいんですけど、今はただ明るい言葉を自分が歌っても偽善ぽいと思うので。
バンドの理想形に近付けた
──今回、岩田さんの個性を前面に出せたことで、バンドのオリジナリティの部分でも手応えが増したんじゃないですか?
リンタロウ それはかなりありますね。今まで具現化できてなかったような部分が、この2ndアルバムでは理想に近い形で音にできたなと。それは真知の作詞であったり、歌声、歌い方とかもそうで。活動していく中で見つけていった部分だと思うんですけど、今回は曲への思いを存分に表現してくれているので、それは音にも影響していると思います。
──TAKUTOさんは演奏面でaquarifaらしさを出す際に気をつけたことは?
TAKUTO さっき松川さんも言っていたような、ロックな感じと繊細な部分のバランスはすごく意識しました。歌に対するアプローチも大事にしたいし、ベーシストとして自分も打ち出したいポイントがあるので、両方をいいポジションに落ち着かせることを今作では考えました。
──ところでこの「月明かりのせいにして」というタイトルはどなたの案ですか?
岩田 私が持ってきました。
──どんな思いが込められているのでしょう?
岩田 バンド名も月や海を連想させるような名前なんですけど、今回の作品も月や海と関係していて。月っていうときれいなイメージがあると思うんですけど、実は狂気じみているとかそういう部分もあって。ほかにもタイトル候補はあったんですけど、それは全部、月がきれいなものとして感じられるタイトルだったんですね。でもaquarifaにはちょっと狂気じみてる部分も欲しいなと自分は思っていて、そうしたらみんなもこの言葉に反応してくれたので、このタイトルになりました。
女性ボーカルのロックバンドでありたい
──バンドとしてどうありたいかというビジョンは共通してるんですか?
リンタロウ ロックバンドでありたいですね。
──即答しましたね。
リンタロウ 女性ボーカルだと「ロックミュージックなのか?」っていうところでの線引きが曖昧なバンドが多いと思うんですよ。でもaquarifaは女性ボーカルのロックバンドっていう部分で勝負していきたいですね。
──しかも岩田さんの声質は繊細だし、ポップな部分もあるからサウンドとの対比が面白いです。
松川 そうですね。真知は弾き語り出身で自分とは真逆なタイプの人間だと思うんです。なので、ロックの刺々しいところと、ポップでアコースティック的なところのバランス感がこのバンドの肝になるんだろうなっていう。そこは単純に形にするのが難しいなと思ってたんですけど、今回のアルバムでやっていける手応えを感じたので、そこにはこだわっていきたいです。
──では最後にロックバンド・aquarifaが伝えていきたいことをお願いします。
松川 そうですね、僕が初めてロックを聴いて感じた雷が落ちたようなドキドキや、バンドを始めた頃の興奮を10代の子たちに伝えられるようになりたいです。それにはいい曲を書いていくことも大事だし、演奏者としてもいい演奏者でありたいですね。
収録曲
- はじまりのおわり
- Alice Blue
- Self-harm
- 水平線のむこうがわ
- バーミリオンキッチン
- 36.5℃
- 幼い靴
- switch(テレビ朝日「セレクションX」エンディングテーマ)
Qaijff presents 「for the future 0412」
2013年7月19日(金)
愛知県 名古屋APOLLO THEATER
DISK GARAGE MUSIC MONSTERS -2013 summer-
2013年8月25日(日)
東京都 Shibuya O-EAST / Shibuya O-WEST / Shibuya O-nest / Shibuya O-Crest / 渋谷duo MUSIC EXCHANGE / 渋谷7th floor
aquarifaワンマンライブ「君は誰のせいにする?」
2013年10月25日(金)
東京都 Shibuya O-Crest
aquarifa(あかりふぁ)
岩田真知(Vo, G)、松川真也(G)、TAKUTO(B)、リンタロウ(Dr)からなる4人組ロックバンド。エモーショナルなギターサウンドと儚げな女性ボーカル、内省的な歌詞を特徴とする。2012年4月に1stミニアルバム「scene」を発表し、同年「SUMMER SONIC 2012」の「出れんの!?サマソニ!?」や「MINAMI WHEEL 2012」といった大型イベントに出演して注目を集める。2013年7月10日、2ndミニアルバム「月明かりのせいにして」をredrecからリリースする。