スペシャリストに頼ればいい
──今回、UK名義でソロデビューをすることになった経緯を教えてください。
もっとも大きなきっかけとなったのは、やはりコロナですね。僕以外のメンバーは一旦韓国へ帰国することになったんです。今年5月がデビュー10周年だったので、そもそもそれまでにはコロナも収束するだろうと思って、「それまでは僕1人でがんばっていますね」というメッセージも含めて始まったプロジェクトでした。僕はダンスが大好きなのですが、1人で踊るのは寂しかったのでダンサーの皆さんをお呼びして、せっかくなら楽曲も今までやってこなかったスタイルにも挑戦してみようと。完成したミニアルバム「UK」を改めて聴くと、「ここまでがんばって作ってきたなあ」「めちゃくちゃ素敵な曲をいただいたな」という気持ちでいっぱいですね。
──それこそ「Dark Morning」は、コロナ禍でヨンウクさんが考えていたことがテーマの楽曲ですよね。
はい。僕はいつも感情が揺さぶられたときに曲を書いてきたんですけど、コロナ禍で日常がのっぺりしてしまい、何も表現できないもどかしさでいっぱいになっていた時期がありました。「Dark Morning」はそのときの気持ちを書いたものです。今はインターネットのおかげで配信ライブをやったりトークイベントをやったり、そこでエンジェルたちと会うことができます。もちろん実際に会うのと画面越しで会うのとは違いますが、皆さんの顔を見ているうちに元気を取り戻しました。インターネットがある時代で本当によかったと思います。
──ステイホーム期間中、何か新しく始めたことはありましたか?
料理と絵画に挑戦しました! 僕は不器用なので料理も絵を描くのも下手くそなんですけど、だからこそ挑戦したくなったんです。実際にやってみたら、料理も絵を描くのもめちゃめちゃ楽しくなりました。たとえ下手な絵を描いても、料理が失敗に終わっても、それを喜んでくださる皆さんがいるし、「かわいい」って言ってくださるし(笑)。本当にいい絵が描けたりおいしい料理ができたりしたら、「いいね!」って褒めてくださるし。ありがたかったです。
──絵は油彩画ですか?
基本は鉛筆画です。色を塗るのが怖いんですよ。そこは僕にとっての曲作りと似ているなと思う。曲作りは楽しいけど、編曲をするのがすごく怖くて。それで台無しになってしまうんじゃないかといつも思っちゃうんですよね。そのことをエンジニアさんに相談したら、「ウクは歌とダンスのスペシャリストなんだから、それ以外のことはそのスペシャリストに頼ればいい。そこまで心配する必要ないよ」と言ってもらえて、それで気持ちがすごく楽になったし曲作りも楽しくなりました。
──じゃあ、絵に色を塗るのも誰かほかの方にお願いしてコラボ作にしたらいいかもしれないですね。
確かに! お願いしてもいいですか?(笑)
──あははは。機会があったらぜひ。ちなみにうまくいった料理というと?
最近、YouTube動画を参考に「辛ラーメン」をアレンジしてカルボナーラを作ったり、コムタンスープにしてみたり、おでんの具を入れたりしてみたんですけど、めっちゃ簡単で、とてもおいしかったです。
誰かに伝わる作品を作りたい
──とてもおいしそうですね。試してみます。アルバムの話に戻りますが、「To U」と「大丈夫」はアルバムの中でも特にパーソナルな歌詞が印象的ですね。
「To U」は最初にデモ音源をいただいたときから素敵な曲だなと思いました。歌詞はエンジェルたちへの手紙形式にしようと僕が提案したので、作詞作曲してくださったLenさんと一緒にタイトルを考えています。「大丈夫」は聴いてくれる皆さんに伝えたいことでもあると同時に、自分自身にも言い聞かせたい歌詞でもあります。そういう意味では、どなたが聴いても力が湧いてくるような曲になったと思っています。
──「大丈夫」は「いつかは歌えなくなる日が来ても」というフレーズがとても心に響きました。そんなふうに考えることもありますか?
ライブがあるたびに毎回そう感じています。例えばもし、僕が明日死んでしまったら、皆さんにとって直近のライブが僕の「最後のステージ」になるわけじゃないですか。そう想像して、常にそのときのステージに全力を尽くしたいという気持ちでいつもやっています。ステージに立たせてもらえるだけでも本当にありがたいのですが、これがもし最後だったとしても絶対に後悔しないようにしようと。そうすると歌もダンスも限界までがんばる。次の日はヘトヘトで1日寝てしまうんですけど(笑)。
──この曲の歌詞には「アイドルからアーティストになれるまで 約10年ていう時間が過ぎて」というフレーズがあります。ヨンウクさんは、アイドルとアーティストの違いとはなんだと思いますか?
あくまでも僕の個人的な考えですが、デビューしたばかりの頃は「カッコよく見られたい」「かわいく見られたい」と思っていました。でも10年経った今は、「誰かに伝わるような作品を作りたい」と思うようになったことが、アイドルとアーティストの一番の違いかもしれないです。お芝居でもそう。ちょっと前までは自分とその周りのセリフだけを覚えて「どうすればカッコよく見えるだろう」とばかり考えていました。でも、今はどれだけ時間がかかっても台本をすべて読んで、知らない単語があればすぐに調べ、理解できるまで何度も復唱しています。「物語はこういう流れで、だから自分はこういう言動をとるのだな」というところまで理解するようになって、楽曲の歌詞を覚えるスピードもめちゃめちゃ上がったんですよ。作詞家さんがどんな意図で歌詞を書いてくれたのかをまず理解し、それをどう伝えるかを考えるようになってからは、さらに視野が広がったように思いますね。
──今後はどんなアーティストになりたいですか?
全国ツアーができるアーティストになりたいです。今からちょうど10年前、デビューしてすぐの頃のインタビューで「10年後はどんな人になりたい?」と聞かれた僕は、「ソロでも活動できるようになっていたい」と答えていたらしいんです。全然覚えていなかったのですが(笑)、サイン会のときにファンの方から教えてもらったんです。やっぱり夢は叶うんだと。もちろん応援してくれるエンジェルたちや、サポートしてくれるスタッフのおかげで僕はここまで来られたのですが、夢や目標はちゃんと言葉にすべきだなと改めて思いました。
──来たる12月29日にApeaceのラストライブがあります。その意気込みを最後にお聞かせください。
韓国にいるメンバーが来日する計画もあったのですが、コロナ禍でそれは叶わなくなってしまいました。当日は僕を含むメンバー全員で韓国からラストライブを配信します。今まで皆さんからもらってきた愛情をちゃんと返せるよう全力で歌って踊るので、ぜひ楽しみにしていてください!
プロフィール
Apeace(エーピース)
日本を拠点に活動する韓国出身男性12人のエンタテインメントグループ。2011年5月にデビュー後、東京・恵比寿の専用劇場KTHEATER TOKYOでロングランの単独公演を成し遂げ話題となった。同年9月に日本デビュー作となる1stミニアルバム「We are the One」をリリース。2015年からは劇場を離れ、メンバーがそれぞれバラエティ番組、ファッション業界、舞台などに進出し、活躍の場を広げてきたが、2021年12月をもって活動を終了することに。12月にラストアルバム「We are Apeace」をリリースし、韓国からラストライブを配信する。またメインダンサー兼リードボーカルを担当するチョン・ヨンウクが2021年2月にソロプロジェクト・UKを始動。7月に1stシングル「CHECKMATE / 君と見る世界は綺麗だ」を発表した。11月にミニアルバム「UK」をリリース。
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