Answer to Remember「Answer to Remember」 PR

石若駿(Answer to Remember)×岸田繁(くるり)|言葉とハーモニーを愛するドラマーの新プロジェクト

King Gnuの前身バンドSrv.Vinciの初期メンバーで、現在も常田大希のプロジェクトmillennium paradeに参加しているジャズドラマーの石若駿。彼が7月に始動させたプロジェクト、Answer to Rememberの1stアルバム「Answer to Remember」が12月4日に発売された。

このアルバムにはermhoiをフィーチャーしたデビューシングル「TOKYO」をはじめ、7拍子、4拍子、5拍子が入り乱れるトラックにKID FRESINOの刺激的なリリックを乗せた2ndシングル「RUN」、中村佳穂Bandを迎えた「LIFE FOR KISS」などバラエティに富んだ楽曲が全11曲収録されている。

音楽ナタリーでは石若が“素晴らしい仲間との縁を大切に、新しい音楽をどんどん作っていくプロジェクト”としてスタートさせたAnswer to Rememberの魅力を掘り下げるべく、彼がライブやレコーディングにサポートドラマーとして参加し、多くの時間を共有しているくるりの岸田繁を迎えてのインタビューをセッティング。「くるりに入りたい」ほど憧れているという石若のくるりファンとしてのエピソードや、岸田から見た石若の魅力などについて聞いた。

取材・文 / 柳樂光隆 撮影 / 塩崎智裕

武道館公演の3人の「ばらの花」

──まずお二人の関係から聞かせてください。石若さんにとってくるりはどんな存在ですか?

石若駿 くるりの音楽に最初に出会ったのが高校2年生のとき。2009年の武道館公演で3人が演奏している動画を観て、それから音源を集めてとにかく毎日のように聴いていました。青春の音楽ですね。

──石若さんと僕は2014年頃からのお付き合いですが、昔から「くるりに入りたい」と言っていましたよね。

石若 だから、夢が叶ったという感じですね。

──岸田さんが石若さんの演奏を初めて聴いたのは?

岸田繁 うちのプロダクションにジャズ好きが1人いて、国内外問わずいろんな音楽を持ってきてくれるんですけど、その彼が「ヤバいドラマーがいる」と。それで映像を観たんかな。ややこしいことを叩いていたんですよ。パラディドル的に奇数拍子にいく……あなたがたまにやる、嫌なやつあるやん?(笑)

石若 すんません(笑)。

岸田 石若くんに関してはさわやかな感じがしたんです。テクニカルドラマーにありがちなジメジメした感じがしなくて、聴いていて気持ちがよかった。それから君島(大空)くんたちと一緒にやった音源を聴かせてもらったりして、この人いいなと。さっき「くるりのことが好き」とか言ってましたけど、「どこが?」と思ってるんですよ。今も謎なんですけど。

左から石若駿、岸田繁。

石若 好きなところは、ハーモニーの進行とメロディの関係ですね。あとメロディに付いている3度上のハモりとコードの関係がツボで。もともと僕はギターのサウンドが好きで、自分のバンドのときはジャズでもギターを入れることが多いんです。で、くるりのギターサウンドもツボなんです。その中でもさっき話した武道館での「ばらの花」を聴いたとき、なんだかわからないけど「ウーッ!」って感極まったんですよ。

岸田 俺は「音が1個足らへん」と思いながらやってたけどね(笑)。

石若 「ばらの花」って、普段はピアノが必要なんです。でも武道館のときはギター、ベース、ドラムだけでやっていて。それにもグッと来たんです。E♭ / GのコードでDが鳴っているっていう感じが……。

岸田 ありますね、押さえ忘れが(笑)。

石若 そこがすごく好きなんです。

岸田 石若くんはE♭が好きだよね?

石若 好きですねー。

岸田 俺もテーマなく曲を書き始めようとしたら絶対E♭で始まる。石若くんと一緒にツアーを回るとだいたいしょうもない話をしてるだけですけど、たまに音楽の話をするときはハーモニーの話になるよな。

石若 ですね。

岸田 サブドミナントでマイナーに行くところの……。

石若 このエモみが……みたいな。

岸田 「4度転調! フウー!!」みたいなね(笑)。

石若 (笑)。くるりの音楽にはそういうのがたくさんあって、俺はそこからも影響を受けているんです。

ただの好きな人

──石若さんが「ばらの花」以外に好きなくるりの曲は?

石若駿

石若 今年の夏のツアーをやっているときは「飴色の部屋」がすごく好きで、9月の「音博」(「京都音楽博覧会 2019 in 梅小路公園」)の頃はずっと「グッドモーニング」を聴いていました。くるりの音楽を聴いているときに頭の中に浮かぶ風景は、青空と田んぼなんです。電車移動とかで移動しているとき、いいなと思う景色があるじゃないですか。そういう風景が思い浮かぶんですよね。

岸田 本当にくるり好きやねんな。ただのくるり好きな人の話やん。

──紛れもないファンの感想でしたね(笑)。岸田さんは一緒にツアーを回っている間、石若さんがヘビーなくるりファンであることを実際に感じました?

岸田 「この人は本当にくるり好きなんやな」っていうのはよくわかりました。ジャズの現場のドラマーということで、いろんな対応を迫られる立場にある人だからか、反応が速いのはもちろんなんですけど、一緒に演奏していると「ハーモニーのこういうところにカタルシスを感じて反応しているんやな」とかがわかるんですよ。あと石若くんは譜面ではなくて、歌詞を見ながら叩くんです。くるりの歌詞は、“はっきりとモノを言う”というよりは、夢の中で、しかも整合性が取れていないみたいな、ぼんやりした物言いが多い。そういう歌詞に対して、右手で叩く金物のダイナミクスの付け方だったりとか、毎回自分なりのモチーフをしっかり作る感覚が頼もしいんです。曲を作った人がどう表現しようとしているかにすごく向き合ってくれる。それは好きじゃないとできないはずなので。

石若 初めてくるりの現場に行ったのは「ソングライン」のレコーディングだったんですけど、そのときに岸田さんからライドシンバルの演奏に対してオーダーがあって。「フレーズを長く。ここからここまでをひと息で8ビートを叩いて」と言われたときに、「これは俺が忘れてたことだ」と思ったんです。それってクラシックとかオーケストラの交響曲をやっていたときは意識することがあったんですけど、同じことを最初のレコーディングのときに言われて自分の演奏の仕方が変わった。くるりの現場ではそういう体験をすることが多いんですよね。ドラムのアプローチというよりは、音楽全体を捉えたときにどういうフレーズが必要で、どういうハーモニーの着地どころで、どの楽器が重みがあるべきか、というようなことを考えるようになりました。「ソングライン」のサビではそういうことを考えながら演奏しましたね。

岸田繁

岸田 むしろ俺らはそれしかできないからさ。どうしてもポップスやロックのドラムを叩いていたら、普通は縦割りで1小節か2小節のパターンを繰り返すような曲が多くなる。小節単位で区切ってもわからないような。でも、くるりの曲はコード進行が変わる曲もあるけど、モチーフが長い曲が多くて。しかも“お行儀がいい作り”になっているはずなんですよね。ジャズの基本的なコード進行であるツーファイブワンもちゃんと入っていたりするし、例え変わったコード進行に聴こえても、ちゃんと次の音へのつながりみたいなものはヒント的に入れているから。音楽理論のベーシックを踏まえた作りになっていて、長いモチーフがきちんと1つにつながっている。だからくるりの音楽を縦割りの1、2小節単位で捉えて演奏すると、1つの長いモチーフが分断されてしまうんです。最近はデモを作るようになったけど、普通にドラムのパターンを作っていたら全然盛り上がらないみたいなことがあって。その理由を考えていたときに、「やっぱり石若くんすげえな」と思いましたね。“曲を作る”っていうんですか……ほら、“歌うドラム”とか“メロディックなドラム”とか、そういうふうに表現されることが多いやん?

石若 そうですね。

岸田 それって、ちゃんと頭の中でハーモナイズされて、礼儀正しい進行になっているからなんですよ。フレーズが練られているものも即興的なものも、どちらも作曲されている感じがある。だから一緒に演奏をしていてポケットに入った(※演奏が噛み合ってグルーヴする)ときは、一緒に曲を作っているような感覚になるんです。

──石若さんもそういうドラマーが好きですよね。

石若 はい、好きです。

岸田 ブライアン・ブレイドとかね。

石若 最高ですよね。