楽しさや希望を感じさせるアルバム

——「Fish My Life」は今のアナログフィッシュにとって、どういう位置づけのアルバムですか?

下岡 最初はコンセプトをズバッと固めたものを作ろうと考えていたんです。でも州の件があって、いろいろなドラマーに参加してもらうと決まったときに、そういうコンセプトで固める部分を少しゆるめて、バリエーション豊かで楽しさや希望みたいなものを感じさせるアルバムにしようと決めて、作っていきました。

佐々木 CDを出してなかった1年間に、僕と晃ですごくいろいろなことを話し合ってきてたんですよ。僕の曲に関しては晃に推敲してもらったり、「こういうのをやってみたいんだ」って相談したり。1曲について2人から同時に出たアイディアを反映させたりもしました。

下岡 僕は健太郎の声が素晴らしいから、もっといろいろなことを強く歌ってほしいと思っていて、自分については僕が考えている時代観みたいなものをちゃんと歌えているか、というのを考えていて。そういう部分について、2人で1年かけて話してきたことを曲に込めていきましたね。

——こういう状況ではあるけど、すごく前向きな作品ですよね。

下岡 うん、俺たちがやっていこうとしてることとか、ずっと続けていくつもりで全然弱ってはいないこととか、アルバムを聴けば全部伝わると思いますよ。今の僕らの状況を重ねあわせなくても、困っていたり、嫌なムードになってしまっている人の背中を押せる曲が入ってると思います。

「お前らの曲はめんどくさい」

——ところで、実際に7人ものドラマーとレコーディングする作業ってどうでしたか?

アナログフィッシュ写真

下岡 1日に3人とレコーディングしたり、けっこうタイトなスケジュールでやってたんですけど、すごく面白かったですよ。

佐々木 今回は僕らの好きなドラマーの人ばかりにお願いして、全員面識がある人なのに、実際にやってみたらまたいろいろな発見があって。より好きになりましたね。州のドラムに慣れていたから苦戦するかなと思っていたんですけど、意外とうまくいきました。

下岡 やっぱり僕らが好きな人は、僕らが好きなだけあるなって思いましたね(笑)。初めて一緒にスタジオに入って、2回目に回した音がもう音源になったりするんで、「うわ、すげえな」って思ってました。

佐々木 レコーディングスタジオが藤田勇さん(MO'SOME TONEBENDER)の家の近くで、レコーディング当日に勇さんはスティックだけ持ってきたんですよ。で、スタジオに置いてあるドラムセットをそのまま使ったのに、叩いた瞬間「あっ、モーサムの音だ」みたいなね。なんて言うか、「サムライ」って感じがしましたよ。

——この曲を誰に叩いてもらう、というのはどうやって決めていったんですか?

佐々木 自分で「この曲だったらあの人かな」という感じに考えて決めました。

下岡 健太郎のコーディネイト能力がすごくて、全部狙い通りにはまるんです。「お前すごいな」とか思ってました(笑)。

佐々木 唯一、亀井亨さん(GRAPEVINE)だけ電話でお願いしたときに「お前らの曲めんどくさいから、楽な曲にしてくれ」ってリクエストされましたけど(笑)。

癖のある人しかいられないんですよ

——8月には恒例の「ナツフィッシュ」がありますけど、今回はどんなライブになりそうですか?

下岡 やっぱり「Fish My Life」の曲が中心になると思います。あと、新曲もできているんで、それも披露したいなと。州の脱退から今まではけっこうリハビリというか、「前と違うけどいいや、それも面白いじゃん」って感じでやってきてたんですが…まあ、そうしかできないからやってたんですけど。ナツフィッシュあたりからは、ちゃんとクリエイティブなことができる、モノが作れるバンドなんだっていうことが見えるようにしていきたいと思ってます。

アナログフィッシュ写真

——アルバムにも参加してますけど、ライブは木村ひさしさんが加わってますね。

佐々木 木村さんは僕らのことをすごく肯定してくれるんですよ。「アナログはすごいんだよ!」とか、何かというと「大丈夫だ!お前らは大丈夫だ!」って言ってくるんで、逆にこれだけ言うってことは大丈夫じゃないんじゃないか?って不安になるぐらい(笑)。でも、彼が本気で言ってくれてるのはわかるんで助かります。

下岡 すごく歌心のある人だから、平たい鍵盤は弾かないですし。そこがアナログに合ってる。ライブでドラマーやってくれる森(信行)くんもそうだけど、癖のある人しかいられないんですよ、アナログには。

——なんだか、アルバムもライブもすごくポジティブな姿勢で臨んでますよね。

下岡 そうですね。でも州が抜けて、そこを明るく乗り切ろうとしてやっているわけじゃないんですよ。本当にそういうことをやろうとずっと思っていたんです。なんだか最近、世の中にもいいことってあまりないでしょう。だから、ちゃんとそういう楽しいことを見ていこうっていうメッセージを贈りたかったんです。それが伝わっていれば、すごく嬉しいですね。

アナログフィッシュ ニューアルバム 『Fish My Life』

ジャケット写真

2008年7月16日発売 / 2000円(税込)AFQT-1 / PORT RECORDS / QUATTRO DISCS

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CD収録曲
  1. 才能(Intro)
  2. ダンスホール
  3. PARADOX
  4. Clap Your Hands!
  5. Sayonara 90's
  6. ほら
  7. 無力のマーチ
  8. いずる
  9. Lover
ゲスト参加アーティスト

亀井亨(GRAPEVINE)
藤田勇(MO'SOME TONEBENDER)
川崎“フィリポ”裕利(髭(HiGE))
佐藤“コテイスイ”康一(髭(HiGE))
菊住守代司(キャプテンストライダム)
玉田豊夢
森信行
木村ひさし

ライブスケジュール

ナツフィッシュ・マイ・ライフ2days

ナツフィッシュ・マイ・ライフ
~opening ceremony~
2008年8月7日(木)新宿red cloth
opening guest:sister jet
前売り / 3300円(ドリンク代別途必要)
ナツフィッシュ・マイ・ライフ
~after the gold rush~
2008年8月24日(日)渋谷CLUB QUATTRO
前売り / 3300円(ドリンク代別途必要)
プロフィール

アナログフィッシュ

ボーカリスト2人を擁するロックバンド。1999年に佐々木健太郎(Vo,B)と下岡晃(Vo,G)がデモテープ作りを始めたのをきっかけに結成される。2001年からはサポートドラマーを迎えて都内でライブ活動開始。2002年に斉藤州一郎(Dr,Vo)が加入し、3人編成となる。2003年にアルバム「世界は幻」とミニアルバム「日曜日の夜みたいだ」を発表。これが好評を得て、2004年6月に2作を1枚にまとめたアルバム「アナログフィッシュ」でメジャーデビューを果たす。その後もクオリティの高い作品を連発。「FUJI ROCK FESTIVAL」をはじめとする夏フェスにも多数出演してきたが、2008年3月にドラムの斉藤が病気を理由にバンドを脱退。現在は佐々木と下岡の2人にサポートドラマーを迎えて、精力的な活動を続けている。