「ザ・ファブル」は中年がイケてる
──皆さんは「ザ・ファブル」だとどのキャラが好きですか?
般若 ……えっ!? なんて難しい質問を。
一同 (しばし熟考)
般若 バーのマスターです。
──僕の推し・洋子の主戦場であるBar Buffaloのマスターですね!
般若 洋子好きとはドMですね。
CÉSAR 洋子はBar Buffaloで暇潰しに男を引っかけて、そいつをアル中寸前まで酔い潰すんですよね。
LUTHFI 実は酒豪(笑)。
般若 自分はあの世界でマスターが一番公平な目線で仕事をしてると思うんですよ。ただ「ザ・ファブル」は登場人物がみんな魅力的だから1人だけ選ぶのは難しいですね。
LEO わかります。でも俺はやっぱ主人公の明かな。自分と置き換えたくなるというか。愛に目覚めて、予定調和だった人生を狂わされてしまうじゃないですか。そこに憧れるし、うらやましさもある。
般若 自分はタコちゃん(本名:田高田健二郎。主人公・佐藤明がバイトするデザイン会社の社長)も好きなんですよね。今回のアニメではまだ描かれないと思うけど、タコちゃんはすごくカッコいいんです。マスターもそうなんだけど、「ザ・ファブル」は中年がイケてますよね。
CÉSAR めちゃくちゃわかります!
般若 だよね。ネタバレになっちゃうから言えないけど、この先、タコちゃんが人間としてすごくカッコいいことがわかるシーンが描かれるじゃん。
CÉSAR あのシーンですよね。本質が優しくないと、ああいう行動はとれないっす。
LEO 敵もいいんだよね。
般若 南先生の作品は本当に深い。「ナニワトモアレ」の頃からそうなんだけど、キャラの立たせ方が本当に巧みなんです。敵のキャラクターにも読み手に考えさせる余白を与えてくれる。単なる悪役じゃない。だから超食らうんですよ。俺、南先生は世の中に毒されてないと思う。すごく公平な目線で作品を描かれてるから。
LEO 単行本の最後に載ってるあとがきを読むと、南先生がすごくピュアな方なのがわかりますよね。見方を変えると、明って「ジョジョの奇妙な冒険」のディオみたいなやつだと思うんです。敵からしたら最強じゃないですか。そんな人間を描いた作品なのにすごくロマンがある。
般若 そうそう。だから敵が死ぬときもなんか切ないんだよね。
LUTHFI すごい嫌なやつだったのに、なんか死の余韻が残るんですよね。すごいリアリティだと思います。
「ファブル」の終わり方は何パターンか予想している
──好きなシーンは?
般若 クロ(黒塩遼 / 明の自称“弟子”)が明の真似して橋から飛び降りるシーンかな。ガッツリ骨折するあのシーンは何度読んでも笑える。
CÉSAR クロ、いいっすよね。しかも明が伝説の殺し屋・ファブルだと知る数少ないキャラだし。実は超重要な存在。
般若 クロのあの感じは絶対にモデルがいると思う(笑)。それで言うと海老原(大阪・太平市を縄張りとする真黒組・武闘派の若頭)も。特に今回アニメで描かれてるあたりは、海老原を主軸にストーリーが動いていくんです。普通、裏社会の人間は暴力的で攻撃的な人をイメージしますよね? でも海老原はそうじゃない。自分のシマを守るキャラクターなんです。だからいきなり得体の知れない殺し屋の明が現れて、最初はものすごく警戒するし、どういう人間かを試したりもする。あと、しっかりと自分のケツを拭くところもいいです。
LEO 海老原は仁義の人ってイメージがあります。しかも昭和じゃなくて平成の。50歳くらいなのかな。
般若 知ってた? 海老原って37、8くらいだよ。
LUTHFI えっ!?
般若 前に気になって計算してみたんだよ。そしたらどう考えても俺より歳下でさ。なんかすいませんって気持ちになった(笑)。
CÉSAR さっきLEOも言ってたけど「ザ・ファブル」っていわゆる主人公最強系の作品じゃないですか。でも最強すぎるから、ちょっと喧嘩が強い程度のやつに絡まれて、わざと負けるときの負け方にもプロフェッショナリズムを感じさせる。それはこれまであまりなかったと思うんですよね。今「ヤングマガジン」で連載していた続編の「ザ・ファブル The second contact」もめちゃくちゃ面白いんですよ。
──僕、第1部までしか読んでないんですよ。
般若 あ、それダメです。今すぐ読んでほしいです。第2部はコロナ禍の話なんですよ。なんか本当に起きたことなんじゃないかってくらいのリアリティがありますよ。俺、「ザ・ファブル」に関しては終わり方を何パターンか予想してるんですよ。今後どういう方向に話が進んでもメンタルが保てるように。自分、YouTubeでも好きなマンガについていろいろ語ってるんで、よかったらそっちもチェックしてください。
──最後に、南勝久先生描き下ろしのジャケットを見たときの感想を伺いたいです。
LEO これ、ホントヤバいっすよね。
般若 あんな表情の明、アニメでも原作でも描かれてないんですよ。
CÉSAR 般若さん、初めてあのジャケを見たとき、止まってましたもん。それからずっとブツブツ何かをおっしゃってて。「これちょっと笑ってるのかな?」とか(笑)。
LEO このジャケで自分らと般若くんの距離が一気に縮まった気がします。あまりにも素晴らしいから、CDも12inchサイズでリリースするんです。ヤバくないですか?
──それは最高です。
LEO ALIとしても今年はまだまだ面白い企画が目白押しなんですよ。6月にはタイのラッパーのLAZYLOXYとコラボした「MY LIFE. MY DESTINY」をリリースして、7月から始まる「ザ・ファブル」の第2クールではMaRIをフィーチャーした新曲「BEYOND feat. MaRI」でエンディングテーマを担当します。けっこうヤバい感じになってるので、皆さん楽しみにしててください!
プロフィール
ALI(アリ)
ボーカルでリーダーのLEOを中心にした東京・渋谷発の多国籍バンド。ファンク、ソウル、ジャズ、ラテンなどのルーツミュージックをベースにヒップホップ、ロック、スカなどをミックスしたクロスオーバーな音楽性で注目を浴びている。2020年11月にテレビアニメ「呪術廻戦」のエンディングテーマ「LOST IN PARADISE feat. AKLO」、2022年11月にテレビアニメ「ゴールデンカムイ」の第4期オープニングテーマ「NEVER SAY GOODBYE feat. Mummy-D」をシングルとして発表。2024年6月にテレビアニメ「ザ・ファブル」のオープニングテーマ「Professionalism feat. 般若」をシングルリリースした。
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般若(ハンニャ)
1978年生まれ、東京都世田谷区三軒茶屋出身のラッパー。2004年から2023年までに14枚のアルバムをリリース。過去に日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)で3回、日本武道館で1回ワンマンライブを開催。2015年から俳優としても活躍している。