[Alexandros]|同じ星の下の4人で残したもの

バンド名なんかなんでもいいよ

──2015年6月に発売された改名後初のアルバム「ALXD」(参照: [Alexandros]、14曲入り新アルバム「ALXD」6月発表)からは「ワタリドリ」「Dracula La」「Adventure」「Droshky!」といったシングル曲だけでなく、アルバム曲「Leaving Grapefruits」も収録されています。それまでの作品よりさらにバラエティに富んだアルバムという印象なのですが、どうでしょう?

川上 [Champagne]というバンド名じゃなくなったから、いい意味でも悪い意味でもここからリスタートだという気持ちはありました。また名前を広めなくちゃいけないのは面倒くさいと思いつつ、新しく様変わりできるところは楽しんじゃえって。ここからさらに自由になった気がします。バンド名なんかなんでもいいよ、みたいな(笑)。たくましくなったし、気持ち的にも軽くなったかもしれないですね。

磯部寛之(B, Cho)

庄村 「ALXD」にはすごく好きな曲も多いですしね。ベスト盤の選曲をしているとき、洋平はきっと「Boo!」を入れたがっているはずだと勝手に思ったり。

川上 (笑)。

庄村 僕は「can't explain」という曲がすごく好きで、当時ライブ本編のラストでこの曲ををやったことをすごく覚えてるんです。リズムも手数もいろいろやって、1周回ったうえでああいうでっかいビートに気持ちが向き出した時期でもあったので。個人的には武道館のときよりも、そのツアーでやった幕張メッセのほうが自信満々でした(参照:愛してるぜ幕張![Alexandros]、2万3000人沸かせたキャリア最大規模ワンマン)。

磯部 名前が変わって一発目のアルバムではあったんですけど、自分たちの意識としては地続きで、どんどん大きいことを掌握していきたい気持ちが高まった時期だったように思います。あと、初めてのアナログをこのアルバムで出したんです。ジャケがでかくてカッコいいだけでも大きな魅力だと思うんですけど、そこで往年のロックアルバムと聴き比べて壁を感じたりもして。音作りとかいろいろ考えるきっかけになったアルバムです。

白井眞輝(G)

白井 「俺らはもっとでっかいところで響く曲を作るんだ!」という思いが熟した時期だったのかな。大きいところを意識する気持ちが集大成になったアルバムみたいな。「ALXD」やその次の「EXIST!」を経たからこそ、「Sleepless in Brooklyn」(2018年11月発売。アメリカ・ブルックリンで1年以上かけて制作された作品)のような新しい挑戦もできた。そう考えると「ALXD」がターニングポイントだったのかもしれないですね。

──「ALXD」から「EXIST!」で広めたものが大きくなっていって、タイアップソングもすごく増えたように感じます。そんな中で制作した「Sleepless in Brooklyn」はスケールを大きくするというより、自分たちがやりたいと思う新しいサウンドに意識を向けたんでしょうか?

川上 そうですね。ZOZOマリンスタジアムでのワンマンライブが決まったり(参照:[ALEXANDROS]、3万5000人動員「VIP PARTY」でさらなる飛躍を誓う)、オリコンで1位を取ったりしたのはうれしかったし、これで満足しちゃえそうな状況になっていました。でもさらに自分たちが進化をしながらバンドを広めていくためには、一本筋が通ったところを極めようという気持ちがあったんです。僕らはもともと洋楽を聴いて育ってきて、デビュー前から海外でレコーディングをしたいと言ってきたので、修業というわけじゃないですけど、そろそろ今までとは違うやり方で曲を作ってみたいなと。これまでとは違う環境に身を置くことでどういう自分たちになれるのかを考えた時期でした。

こんなに愛しい楽曲たちを残せている

──そして2019年は次々とタイアップ曲を配信し、目まぐるしく活躍されていました。

川上洋平(Vo, G)

川上 「Sleepless in Brooklyn」のリリースツアー中に聡泰が腰を痛めて、1回バンドを離れたんだよね。聡泰がいなくなるっていうのは、今までいろいろあった逆境とは全然違う壁にぶち当たった感じでショックでした。

──庄村さんが活動できなくなるというのは、バンド史上一番大きな壁だったのでは?

川上 そうですね。本当に改名がかわいく思えるぐらい。まあでも死んだわけじゃないから、彼が今後人間としてちゃんと生きていけるのはよかったと思いますね。これからも友達として付き合っていけるし、この先彼が何か違うことやったときに、俺もがんばろうと思えるライバルが増えたのはありがたいことだと考えられるようになりました。

──庄村さんは腰痛症の発症から活動休止に至るまでの経緯を振り返ってみていかがでしょう。

庄村聡泰(Dr)

庄村 うーん。今となってはちゃんと向き合って話せますけど、本当にしんどかったときの記憶はまだポコポコ穴が開いている感じなんです。いろいろありましたけど、昨年1月24日に発表させていただいた文言(参照:[Alexandros]庄村聡泰が5月で勇退、今夜生配信でメンバーから報告)とそのあとの配信で話したことが嘘偽りない自分のすべてなんですよね。つらかったといえばもちろんつらかったんですけど、あの経験をしたからこそこうしてベストアルバムの取材に参加できることがどれだけ幸せなことか感じることができたり。ベストアルバムを聴き直しても、こんなに愛しい楽曲たちを残せているという事実があるのはすごく強くて大きいことだと思っています。まさか自分がドラムを叩けなくなるだなんて一切思わなかったですし、こうして起こったことに今はある程度冷静になれていることにはそれ以上にびっくりですけどね。

川上 昨年5月に勇退すると発表してから1年近く延期になるのも聡泰らしいというか。勇退を延期ってどういうことだよ(笑)。

──それは[Alexandros]のチームだからこそ、最後までちゃんと考えるというか。とても律儀なバンドだと思いました。

川上 別にベストアルバムのタイミングじゃない勇退も全然あり得たんですけど、さすがにケンカ別れでもないし死別でもないから、ある種の門出みたいな場面は必要だと思ったんです。10年一緒にやってきて、共に楽しい時間を過ごしたファンの人への挨拶の場なのか、作品なのか、なんでもよかったんですけど。配信で話して終わりっていうのはちょっと違うなと。結果、延期が聡泰の次への準備期間にもなったからよかったです。

聡泰、野良犬から人間に

──最後に11年間を振り返ってみて、この4人はどのようなバンドだと思いますか?

川上 最近になってどんどんわからなくなってきたんです。この人たちには俺が知らなかったことがまだこんなにあるのかと。今までの11年で見てきたことなんてほんの数パーセントで、これからどんどん俺が知らないメンバーの顔が見えてくることのほうが楽しみですね。聡泰がいなくなるのはこれからのバンドにとって相当なロスだけど、そのロスを3人でどうやって埋めていくのか、補うときにそれぞれの知らなかった部分って絶対出てくるから。まだモヤモヤしてるかもしれないけど、次の作品で見せたいですね。とりあえず聡泰が人間らしくなってよかったなと思います。

[Alexandros]

──それはどういう意味ですか?(笑)

川上 聡泰って最初入ってきたときはマジで野良犬でしたからね(笑)。洗濯の仕方とか炊飯器のボタンの押し方もわかってなかったし。

庄村 それはね、今も変わってないんだよ。残念ながら。

一同 (笑)。

川上 そうやって年下の彼にいろいろ教えてあげられたのはよかったと思います。

庄村 人間としてしゃんとした感はあるよ。あと最初の頃によく「お前には色気というものがない」って言われたのはすげえ覚えてる。

川上 いやいや(笑)、色気は一番あったと思うんですけどね。こうすればさらによくなるよっていうところはすごく話し合った気がします。それが勇退前までにすごく整って。

磯部 YouTubeでよく見かける、ボロボロの野良犬が愛情持って育てられてすげえかわいい犬になりましたみたいな(笑)。

庄村 見た目的にはいかつくなったけどね(笑)。


2021年3月16日更新