ナタリー PowerPush - 杉並区立和田小学校×アルケミスト

感動的式典に密着&楽曲制作の裏側明かす

校長先生からお話を伺って、給食までいただいて

──そもそもなぜ和田小学校の創立80周年のために、アルケミストが楽曲を提供することになったんですか?

アルケミスト

井尻慶太(Piano) 和田小学校の関係者の知り合いの知り合いが僕の知人でして(笑)。そういうつながりがきっかけだったんです。だから本当に不思議な縁で。80周年でこういう式典をして、曲を作ってみんなで歌うっていう企画があったみたいなんですけど、そこで曲を作れる人を探していたところ僕らのことを思い付いてくれて、じゃああいつらに話を振ってみようっていうことになったんです。

──じゃあお2人がこの小学校の卒業生というわけでもなく?

こんやしょうたろう(Vo) はい、卒業生ではないんです。

井尻 僕らとしては知らない小学校なんですけど、今回の話をいただいてから学校に来て校長先生からお話を伺って。そのときには給食までいただいて、一緒に歌ったりするうちにすっかりなじんちゃったんですよね。だから本当に……感慨深いですね、今日という日が。

未来の自分にエールを送る「がんばれ」

──曲に関してはこういう内容にしてほしいというようなリクエストはありましたか?

こんやしょうたろう(Vo)

こんや リクエストというのは特になくて、みんなで一緒に探りながら「こういう曲にしよう、ああいう曲にしよう」と話し合って。最終的には子供たちのアンケートをもとに作ろうっていう話に落ち着きました。最初に僕ら、80年の歴史をお父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんに聞いて、それを子供たちが文字にしてくるんだろうなと予想してたんですけど、集まったアンケートには昔の話が全然出てこなくて。むしろこれから和田小に入る子供たちに向けて「がんばれ」とか、「○○先生の授業はすごく楽しいよ」とか過去に目が向いてないんです。それで「あ、これは80年の歴史を歌うんじゃなくて、未来に向かう歌にしたほうが子供たちは気持ちを込めて歌いやすいんじゃないかな」と思って。未来の自分にエールを送るという内容を固めていきました。

井尻 これから入ってくる下級生たちにどんなメッセージを送りたいかという問いに対して、一番多かったのがやっぱり「がんばれ」っていう言葉なんですよ。まあきっと一番言いやすい言葉なんだけど、それが子供たちにとっては本当に心からの言葉というか。それで今回歌った歌詞の中に「がんばれ がんばれ」っていう繰り返しを作ったんです。それは下級生たちに向けてのメッセージでもあり、未来の自分たちに向けてのメッセージでもある。「がんばれ」って言うことで、また自分も励まされていくような……実際子供たちのアンケートを読んで僕らも勝手に励まされましたからね。

こんや 大人の世界では「がんばれ」って言うことはあまりよくないみたいな風潮もちょっとあるじゃないですか。でも「がんばれ」って他人から言われることを嫌がる人でも、子供時代の自分から「がんばれ」って言われたら、すごく励みになるんじゃないかなと思うんです。この曲はそういう歌なんですよ。まあ子供たちにとっては未来の自分に向かってのエールなんでしょうけど、僕たちからするとまるで過去の自分から言われてるような感覚で。不思議な歌ですね。

サビは「待ってました!」とばかりに大きな声で歌ってくれる

──「あの空」を何度か聴いて思ったのは、とても耳になじみやすくて覚えやすい曲だなと。そのへんは子供たちが歌うっていうことも意識して作ったんでしょうか?

こんや サビはそうかもしれない。あのサビの「がんばれ」っていうフレーズは、本当に僕の鼻歌が元で。AメロやBメロは子供たちのアンケートをもとに、メロディをある程度合わせていった部分もあるので、決して歌いやすい感じじゃないんですよ。子供たちからしたらリズムが取りにくいメロディだったりするし。だけどサビの部分に来ると、子供たちが「待ってました!」とばかりに大きな声で歌ってくれる。それってやっぱりサビのメロディの覚えやすさが大きいんでしょうね。

──しかもすごく一生懸命に、力強く歌うから、余計に耳に残るのもあるんでしょうね。

井尻慶太(Piano)

井尻 そうだと思います。子供たちと一緒に練習したときに音楽の先生も隣にいてくださって、譜面を見ながら「じゃあここはこうやって歌うんだよ」って指示したんですけど、その中にまだ小学校では習わないようなリズムが混ざっていて。なので「みんなには難しいかもしれないけど、こういう機会だからがんばってみようか?」って言ってみたら……やっぱり子供たちって、そういうふうに言われるとちょっと得意げになってがんばってくれるんですよね(笑)。

──あははは(笑)。確かにそうかもしれない。

井尻 僕らも普段の曲作りと一緒で、簡単な曲にしようという意識は全くなかったから。それなのに覚えやすいと思ってもらえるのは、本当に子供たちの力が大きいかもしれない。子供たちが一生懸命歌ってくれたから、曲の難しさよりも曲に込めたメッセージが先に届いたんでしょうかね。

杉並区立和田小学校
<教育目標>
人権尊重の精神を基盤に、心身ともに健康で、主体的に学ぶ児童の育成を目指して、次の目標を定めている。
  • ・深く考える子ども
  • ・思いやりのある子ども
  • ・体の丈夫な子ども
<校風・伝統>
地域の中を地域とともに歩む学校をモットーに、明るく伸び伸びとした校風を維持している。
<特色ある教育活動>
和田小学校では地域、企業などの他団体との交流により、先進的で特色のある教育活動を行っている。
■赤十字加盟校としての活動
平成21、22年度全国モデル校として活動に取り組む。海外(中国、モンゴル、タイ)からの教育視察を受ける。 現在もエコキャップ収集に取り組み、その数は200万個を突破した。
■授業におけるICTの活用
「インタラクティブホワイトボード」の導入など、電子教材やインターネットを利用したわかりやすい授業を実施し、 先進的で密度の濃い授業を展開している。
■各種企業・団体と協力した取り組み
JAXAの協力によるぺットボトルロケット、日食観測。B&Gの協力によるカヌー教室などの特別イベント。 日本マクドナルドの協力による課外授業。ジェイアイエヌ提供による生徒への「JINS PC」の無料配布など。
アルケミスト

こんやしょうたろう(Vo)、井尻慶太(Piano)からなるポップデュオ。1997年に玉川大学学園祭のために結成され、卒業後もライブハウスやストリートなどで定期的にライブ活動を行う。2003年には1stアルバム「リトルネロ」をリリース。現在までに積水ハウスのCMソングを担当したほか、テレビやラジオへの出演などマルチな音楽活動を続けている。2012年12月には結成15周年を記念したシングル「LOVE」をリリースした。