AKB48「元カレです」本田仁美、向井地美音、村山彩希インタビュー|進化し続ける“会いに行けるアイドル”の今

AKB48が5月18日に59thシングル「元カレです」をリリースした。

「元カレです」は昨年9月発表のシングル「根も葉もRumor」に続き、姉妹グループのメンバーが関わらない純粋なオールAKB48メンバーによる新作。センターは本田仁美が務め、選抜メンバー20名による激しくも繊細なダンスが見どころとなっている。振り付けはBTS「Butter」などの振り付けで知られるダンスクルー・GANMIによるものだ。また「元カレです」というタイトルからして刺激的なこの曲では、未練タラタラの“元カレ”を軸にした恋模様が描かれており、キャッチーなフレーズが耳に残る仕上がりとなっている。

音楽ナタリーでは新作のリリースを記念して、センターの本田仁美(AKB48 新チームA)、向井地美音(AKB48グループ総監督、AKB48 新チームA)、村山彩希(AKB48 新チーム4)の3名にインタビュー。「元カレです」の歌詞考察をしてもらったほか、激しいダンスで話題となった「根も葉もRumor」とは別のベクトルでの表現力が求められるダンスに対する思いを聞いた。さらに「握手会がない“会いに行けるアイドル”の現在地」をテーマに掲げ、いくつかの質問にも答えてもらった。

取材・文 / 小野田衛撮影 / 塚原孝顕

大胆予想! 「元カレです」の歌詞、私はこう読み解いた

──新曲「元カレです」はタイトルからして非常に刺激的です。歌詞もさまざまな解釈ができますが、改めてどういった内容か教えていただけますか?

向井地美音 まず主人公は男性なんです。その男の子が街を歩いていたら、偶然、前に付き合っていた元カノと鉢合わせしてしまった。ここでポイントとなるのは、男の子はまだ元カノに未練があるんですね。ところが目の前の元カノは、すでに新しい彼氏と一緒にいる。だから現在の彼氏に対して嫉妬の気持ちが燃え上がるんですよ。そういった複雑な感情を歌っています。

左から向井地美音、本田仁美、村山彩希。

左から向井地美音、本田仁美、村山彩希。

──そもそも主人公と元カノは、どうして別れたんですかね?

本田仁美 ここからは私の憶測になりますが、この未練タラタラの様子から想像するに、別れ話は元カノのほうから切り出したんじゃないかな。だから主人公は決して納得して別れたわけじゃないんです。「できることならやり直したい」と考えていたのに、ラブラブの状態でいるところを目にしちゃって、「あちゃー、勘弁してよ」みたいな気持ちだったと思う。

向井地 当然、元カノのほうは主人公に対して未練なんてないわけでしょ?

本田 一切ない! だから、これって実は残酷な物語でもあるんですよ。

村山彩希 解釈が少しずつ違っていて面白い(笑)。私の見立てだと、この元カノはかなり強気な女性という気がするんです。付き合っていた当時、主導権は完全に元カノが握っていて。主人公は相当この子に振り回されていたんじゃないかな。

向井地 大胆な予想だなあ(笑)。

村山 だから当然、別れを告げたのも元カノから。それに対して主人公は「ああ、別にいいよ」とか強がって受け入れたものの、徐々に心の中で元カノの存在が大きくなり始めるんですね。「今でも元カノが好き」という自分の気持ちに嘘がつけなくなってしまう。そういう中での鉢合わせだから、主人公の心は激しく揺さぶられるんです。

本田 別れ話が元カノ側から切り出されたのは間違いないでしょうね。歌詞にも「一度聞かされた君のアンサー」とありますし。問題は「殴り合って決めようか」というフレーズ。たぶんこれは別れ話が出たときに主人公が口で言い返せなかったものだから、そのやるせない気持ちを表現したものだと思う。

本田仁美

本田仁美

向井地 えー、殴り合う相手は元カノじゃなくて、元カノと一緒にいる今の彼氏じゃないの?

本田 それも考えました! でも「それを言ったって言わなくたって」という歌詞が続いているから、主人公は「もう言葉じゃダメだ。直接行動で示すしかない……」と追い詰められているんですよ。

向井地 口で言いくるめられたからって相手を殴ったら、単なるDV男になっちゃう気もするけど(笑)。私は「一度聞かされた君のアンサー」部分の解釈が少しひぃちゃんとは違っていて、別れ話を切り出した時点で、元カノにはすでに別の好きな人がいたと思うんです。

向井地美音

向井地美音

村山 主人公は天秤にかけられていたってこと?

向井地 そういうことになるかな。つまりアンサーの中身は「主人公と別れて、今の彼氏と一緒になります」というもの。一度そんな状況になったら、何を言ってもひっくり返しようがないじゃないですか。「言ったって言わなくたって」とあきらめているのは、そういう話ですよ。そう考えれば、「わだかまり」という主人公の気持ちも説得力がありますしね。

──ちなみに3人から見ると、主人公みたいな男は恋愛の対象外?

向井地 いや、一途でいいなって思います。わだかまりを残すような状態で別れたのに、なかなかここまで1人の女性を愛せませんよ。

村山 この主人公は絶対ウジウジしたタイプだと思うんですよ。でも、そのくせ内心では強がっているところが歌詞からも伝わってくるんですね。そこが私はどうかと思うんです。好きだったら好きって直接言ってくれればいいのに、なんで強がるのかが意味不明で。私はもっとストレートに気持ちを伝えられたい派です。この主人公だって、素直に思いを伝えていたら結果は違っていたかもしれないですしね。

向井地 主人公に伝えたいのは、「もっと勇気を出して」ということ?

村山 それこそ殴り合うくらいの勢いで元カノとも向かい合ってほしかった(笑)。でも、この曲の歌詞は考えれば考えるほどいろんな解釈ができますよね。聴いてくださる方も、自分なりに物語を想像していただければ、より楽しめるんじゃないかと思います。

村山彩希

村山彩希

「根も葉もRumor」超えの“GANMIダンス”は何が難しい?

──「元カレです」の特徴として、BTS「Butter」にも携わった世界的ダンスアーティストのGANMIさんが振り付けを担当していることが挙げられます。

本田 最初に振り付け映像を観たときの率直な感想は、「えっ!? こんな難しいの、本当にできるのかな?」というものでした。それにサビの最初で足を上げるじゃないですか。そこも不安になっちゃって……。サビの出だしで目立つところなのに、足を上げるせいでメンバーの顔が見えなくなるんじゃないかと考えたんです。

村山 すごいね。最初からそこまで考えていたんだ……。

本田 でも、スタッフさんは「顔を見せることも大事だけど、今回はそれよりもインパクトを大事にしよう」と言ってくれて。それで納得しました。

向井地 前のシングル「根も葉もRumor」もダンスに注目していただけましたけど、今回はまた違った難しさがあるんですよ。「Rumor」は全力感が伝わるダンスだったけど、「元カレです」ではもっと繊細な動きが求められているので。

本田 「Rumor」はそろえることが重要だったんです。「角度や動きを同じにする」ということを意識していましたし。でも今回の「元カレです」はメンバー1人ひとりの雰囲気とか個性も大事になってくるし、人数も前作の18人から2人増えて20人になっているので、気を付けなきゃいけないポイントが多くなっているんですよ。

──振り入れのときに苦労したことはありますか?

向井地 やっぱり2回連続で両足を蹴り上げるサビのところが一番苦労したかな。最初にやったときなんて「立ち上がれない人、多数……」という感じでした。というか、いまだにサビ前で気合いを入れないと立ち上がるのは難しいですよ。本当に体力を消耗するので。

向井地美音

向井地美音

村山 両足を蹴る前に、まず床を滑る動きがあるんですよ。ヒザで滑る派のメンバーと、スネで滑るメンバー派のメンバーに分かれるんですけど。

本田 パフォーマンスする会場によって床の滑り具合が違うのが悩ましいところで。最近披露したコンサートの会場は全然滑らない床だったので、とても戸惑いました。

──前作「根も葉もRumor」は、かつてないほど練習に時間をかけたということでした。やはり今回の「元カレです」も丁寧にパフォーマンスを磨いたのですか?

本田 全員でそろえる作業は時間をかけて取り組みました。ただ、振り付けのGANMIさんが忙しくてなかなか来られないことも多くて、メンバーだけで集まって練習しなければいけないこともあったんです。自分たちで動画を録って、それを見ながら全体の動きを確認して……。

村山 正直、前回の「Rumor」でハードルが上がった部分もあったんですけど、ひぃちゃん(本田)がセンターになるということで“新機軸”が来ることも覚悟はしていたんですよね。このGANMIダンスの一番の特徴って、難しさが伝わりづらいんですよ。レベルが高いことをやっているにもかかわらず、そうは見えないというか(笑)。

向井地 こうやってインタビューで難しさをアピールするしかない(笑)。

村山 「踊ってみた動画」を上げてくれるファンの方がいて、もちろんそれ自体はすごくうれしいんですけど、今回の曲はちょっとニュアンスが違ったりするんですよね。皆さんが考える体の動きと、私たちが習った体の使い方が違うということなのかもしれません。

左から向井地美音、本田仁美、村山彩希。

左から向井地美音、本田仁美、村山彩希。

左から向井地美音、本田仁美、村山彩希。

左から向井地美音、本田仁美、村山彩希。

──以前のAKB48と比べ、あからさまに難易度が高くなっていますよね。海外も含めて、ほかのアーティストを参考にしたりもするんですか?

向井地 私はあまりしないかな。AKB48一筋なので(笑)。ただ、やっぱりひぃちゃんのダンスからは刺激を受けます。何しろ今までのAKB48にはない動きをしますから。髪の毛の使い方が抜群にうまかったり、首の角度とかが女性らしくてきれいだったり……。IZ*ONEのカッコよさをAKB48に取り入れているような感覚があるんです。そういう角度からK-POPアイドルさんの動画を改めてチェックすると、「こういう感じでカッコよく見せているんだな」ってめっちゃ勉強になるんですよね。

本田 そんな……恐縮です。

向井地 「元カレです」のGANMIダンスって、男性的に踊ろうと思えば踊れると思うんです。でもひぃちゃんが女性寄りに表現しているので、私たちもそれに感化された動きをしているんでしょうね。「なるほど、こうやってラインを見せていくのね」とか参考にしまくっていますから。

村山 今回の振り付けはGANMI先生だけど、ある意味、ひぃちゃんがもう1人の先生と言えるかもしれません。レッスン中、GANMI先生が「こういうニュアンスなんだけど、俺らもうまく伝えられないんだよね」と言っていたことがあるんですよ。そのとき、ひぃちゃんが実際に踊ったら、「そうそう! それそれ!」ってGANMI先生も手を叩いて喜んでいましたから。

向井地 メンバーの中に先生がいるような感覚だよね。

村山 私、IZ*ONEの動画をよく観るんです。韓国のアイドルさんって、1人のメンバーだけのダンスや歌を追った動画がよく上がっていますよね。そこで確認できるひぃちゃんの動きって、今回の「元カレです」にもすごくニュアンスが反映されているんですよ。ひぃちゃんを通じて2つの文化がつながっている感覚があって。実際に近くで見ないとわからないことも多いし、本当に勉強になっています。