音楽ナタリー PowerPush - アカシック×ピスタチオ

理姫×伊地知対談 ホステスみたいなボーカリスト、元NO.1ホストの芸人と出会う

女はみんなデンジャラス

──理姫さんはいつもどういうイメージで歌詞を書いてるんですか?

理姫(Vo)

理姫 歌詞は全部実体験です。「この日にこういうことがあった」って全部話せるくらい、完全にノンフィクションです。だからアカシックは女の人が主人公の曲がほとんどですね。で、前作「プリチー」はコンサバ系のかわいいイメージだったんですけど、今回は曲が集まった時点で女の強さがバンって全面に出てたから「DANGEROUS くノ一」ってタイトルにしたんです。世の中にはいろんな見た目の女性がいるけど、だいたいみんな心の中はデンジャラスだと思ってて。

伊地知 わかるわかる! 女が集まったら下ネタと男の悪口しか言わないんだから。「誰々はエッチがヘタだ」とか。ホント怖いよ!

理姫 そうそう! 「女の子は怖いんだぞ」っていうアルバムです。

伊地知 あはは(笑)。その紹介でいいの? 大丈夫?

理姫 いいんですよ。

──今回のアルバムの曲だと、具体的にどんな体験を歌ってるんですか?

理姫 例えば「香港ママ」の「買ったお弁当とっさに投げてダッシュする夜」っていう歌詞は、横浜の福富町で遊んだあと家に帰る途中の話。途中に中国人キャバクラがいっぱいある道を通るんですけど、そこで急に「飲みに行こう」ってことになって、家で食べようと思って買ったお弁当がいらなくなったんです。捨てるのはもったいないから、そのへんにいた人にあげたんですけど。

伊地知 いいですねえ。

理姫 「CGギャル」は、好きになった人の好きなタイプの女性になりたいけど、なれなくてあきらめて酔っ払ってるっていう歌です。コンビニで雑誌を読んで「こういうメイクがあるんだー」とか思うけど、私にはムリだからあきらめて飲みにでも行くか、みたいな。

伊地知 とりあえず最後は飲みに行くのね(笑)。飲めば解決するからね。そんなときはぜひ歌舞伎町へ!

アカシックは夜の世界ですごく支持されると思う

──伊地知さんも、ホストをしているとカラオケなどで歌う機会が多かったのでは?

伊地知大樹

伊地知 ホストは基本的に営業中はカラオケを歌わないんですけど、その日のキャスト(接客を担当する従業員)で一番売上をあげた人が最後に1曲歌うんですよ。「ラストソング」っていうんですけど。

理姫 へえー。

伊地知 僕はベタにEXILEとか清水翔太とか、歌ヘタなのに調子こいて歌ってましたね。今だったらアカシック歌うんですけどね。

理姫 うれしい!

──「終電で帰る 嫌われる前に」っていう歌詞(ミニアルバム「コンサバティブ」収録曲「終電」)は、ある意味ラストソングにピッタリなのでは(笑)。

伊地知 ははは(笑)。でもホントに、酒を飲んでる人の気持ちとかを歌った曲って、歌舞伎町で流行ったりするんですよ。なのでアカシックは、夜の世界ですごく支持されると思いますよ。

理姫 じゃあもっと、がっつり歌舞伎町を狙った曲を書いてみよう! がんばろう! やる気出た!

伊地知 そういうのが何曲かあってもいいかもしれないです。みんなそういう曲が大好きだし、ホントにカラオケで歌われますから。

飲み屋で働いてるときのお客さんだと思ってライブすればいいんだよ

理姫 バーでバイトしてたときに、事務所のスタッフから「理姫さん、お店でお客さんを楽しませるコツとかあるの?」って聞かれたことがあって。ああやったりこうやったりって説明したら、「それをライブでもすればいいんだよ。お客さん1人ひとりが、自分が飲み屋さんで働いてるときのお客さんだと思って、どうしてあげたら楽しんでくれるかを考えればいいじゃん」って言われて、それはすごく納得したんですよね。もしかしたら、ミュージシャンとホストには通じる部分があるのかも。

伊地知 なるほどね。でもさっき、歌詞は全部実体験だって言ってたよね。飾らない等身大の自分を歌ってるならホストとは違うかな。ホストは全部偽りなんでね(笑)。

理姫 あはは(笑)。そっかー。

伊地知 でも、別に自分を上げるつもりじゃないんですけど、僕はホントにそのまんまでした。逆にそれが「ホストっぽくない」という意味で、よしとされてたんでしょうね。やっぱり、どの道にもプロがいますんで、“王子様”って呼ばれてるような人には絶対勝てない。だから僕は、どんだけふざけるか、どんだけ自分を出すかっていう逆のことで勝負したんですよ。あと僕、チヤホヤされることが大好きだから、好意を持ってくれる人にサービスするのが苦じゃないんです。

理姫 へえー。

左から理姫(Vo)、伊地知大樹。

伊地知 街中で人に声をかけられたとき「いや、プライベートだから……」みたいな反応をする人も、芸能界にはけっこういるみたいじゃないですか。でも僕、ライブが終わったときにファンの方が出待ちしてくれたら、1人ひとりとしゃべって終電までは対応しますからね。

理姫 すごーい!

伊地知 好きでやってるんですよ。お笑いも夜の世界も、自分が楽しんでる姿を見てもらって、楽しそうだなって思ってもらうのが大事なんだと思います。

理姫 あー、すごいわかる。それが一番ですよね。私も飲みに行って、店のスタッフが楽しそうだと超楽しいんですよ。

伊地知 ホストクラブのお客さんって、好きなホストを指名しに来るっていう人が多いわけですけど、その店の雰囲気が好きで来るっていうパターンもけっこう多いんです。いくらそのホストが好きでも、店の雰囲気が悪かったら来なくなっちゃう。これってきっとバンドとかもそうですよね。周りのスタッフがよくなかったら、メンバーだけじゃいいものは作れないだろうし。

理姫 うーん、ホントそうなんですよ。メンバーとかスタッフがギスギスしてるバンドって、観てて伝わるんですよね。

メジャーデビューミニアルバム「DANGEROUS くノ一」 / 2015年6月3日発売 / 1944円 / unBORDE / WPCL-12149
ニューアルバム「DANGEROUS くノ一」
収録曲
  1. CGギャル
  2. サイノロジック
  3. 香港ママ
  4. 溺愛
  5. ベイビーミソカツ
  6. 真夜中のクローンラベル
  7. オールドミス
  8. さめざめ
アカシック「『DANGEROUS くノ一』ツアー」
2015年7月12日(日)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
<出演者>
アカシック(※ワンマン公演)
2015年7月17日(金)大阪府 MUSIC CLUB JANUS
<出演者>
アカシック / フィッシュライフ / LILI LIMIT
アカシック

アカシック

理姫(Vo)、奥脇達也(G)、黒川絢太(B)により2011年に結成されたロックバンド。横浜の繁華街で生まれ育った理姫の独特なキャラクターが全面に出た楽曲が特徴で、現在はHachi(Key)、山田康二郎(Dr)を加えた5人編成で活動している。2014年3月に初の全国流通盤ミニアルバム「コンサバティブ」をリリースし、東京・タワーレコード渋谷店の週間インディーズチャートにて1位になる。同年10月に2枚目のミニアルバム「プリチー」を発表。2015年にunBORDEよりメジャーデビューし、6月3日にメジャー第1弾となるミニアルバム「DANGEROUS くノ一」をリリースする。このアルバムのリリースツアーとして、7月12日に東京・渋谷CLUB QUATTROでワンマンライブ、7月17日に大阪・MUSIC CLUB JANUSでフィッシュライフとLILI LIMITを迎えた対バンライブを行う。

ピスタチオ

伊地知大樹、小澤慎一朗により2010年に結成された、よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑いコンビ。特徴的なイントネーションで白目を剥きながらしゃべるという、強烈なインパクトの漫才で話題になる。2014年末に放送されたテレビ朝日系「アメトーーク!」の企画「ザキヤマ&フジモンがパクリたい-1グランプリ」第2回で優勝したことがきっかけとなり、一気に人気芸人の仲間入りを果たす。