音楽ナタリー Power Push - AK-69

第2章幕開け エンパイアを築くために

AK-69が自ら代表を務める事務所・Flying B Entertainmentを旗揚げし、ニューシングル「Flying B」をリリースした。表題曲は、新たな旅路に向かう決意表明をつづった力強くエモーショナルなナンバー。カップリングにはニューヨークのヒップホップレジェンド、ファット・ジョーが初めて日本人と共演した「We Don't Stop feat. Fat Joe」も収録され、AK-69の門出に華を添えている。

インディペンデントな活動を続けながら、直近のオリジナルアルバムが4作連続でオリコンアルバム週間ランキングトップ10入りを果たし、昨年は全国13公演のホールツアーを成功させるなど、名実共に日本を代表するラッパーとなったAK-69。なぜ彼がこのタイミングで独立の道を選ぶことにしたのか。新事務所設立への思いや、シングルの制作背景、さらには今後の目標まで熱く語ってもらった。

取材・文 / 猪又孝

インディペンデントにこだわる理由

──まずは「Flying B Entertainment」の立ち上げの経緯から伺いたいんですが、今回、なぜ独立の道を選ぶことにしたんですか?

去年、全国13カ所を回るホールツアーを行ったんですが、その途中で「THRONE」というアルバムを出し、そのあとにフェスに出演したり、クラブツアーを回ったりしたんです。その一連の動きに区切りがついたタイミングが、たまたま前の会社との契約が終わる時期だったんですよ。

──きっかけは契約更改だったんですね。

そこで現状維持を取るのか、自分が抱いてる大きな目標に近付くために一歩前に出るのかっていう選択を迫られて。前の会社も自分のやりたいようにやらせてくれたし、昔の俺からすれば日本武道館や日本ガイシホールでライブができるところまで来たのはすごいこと。それを考えると現状維持で満足しようと思えばできたんでしょうけど、でもやっぱり俺は新たな目標に向かうほうを選んだっていうことなんです。

──YouTubeですでに公開されている映像「Beginning of Flying B」では、今回の独立の動機について、「さらなるインディペンデントを求めた」と語っています。インディーではなく、インディペンデントというところがポイントですよね。

そうなんです。俺を象徴する言葉としてインディーズっていう言葉がよく使われてますけど、自分では何年も前から「インディペンデント」って言ってて。俺はメジャー / インディーという区分けじゃなく、インディペンデントであることにこだわりたいんです。

──そのインディペンデントであること、とは?

「俺たちにしかできないやり方」っていうことですね。自分でハンドリングができなくなるようなことはしたくなくて。じゃあ、自分たちの城を築こうと。そのぶん難易度は高くなるし、危険も潜んでるんですけど、いつも言ってるように、あえて険しい道を選んで、それで成功していくことに美学を感じてるので、独立を決めたんです。

──ヒップホップに限らず、最近はインディーズで活動するアーティストが増えています。そういう環境で成功を収める秘訣やコツはなんだと思いますか?

俺が偉そうに言えたことではないですけど、自分がどうありたいかとか、自分がどう見られたいかっていうことを強くイメージすること。そのビジョンをちゃんと持つことが大事だと思います。インディペンデントだから自分で指揮を執らなきゃいけないけど、いろんな人の意見が出てきたときに「こっちのほうがいいのかな」「やっぱりこっちのほうがいいのかな」ってやってると、結果的に人の意見で動いてることになるんですよね。でも、「自分はこうなりたい」っていう信念があれば、周りがなんて言おうと、うまくいかない時期があったとしても芯はブレないと思うんで。俺は自分がどうありたいかっていうことを寝ても覚めても考えてましたから。それを考えてる時間と、その思いの強さがほかの人より勝っていたから、今、こうなってるんじゃないかと思いますね。

──AKさんは小さい頃から粘り強いタイプだったんですか?

粘り強いというより、自分の思い通りにならないと気が済まないタイプでした。保育園のときからガキ大将で、年長さんでも自分たちが使いたい遊具を取る奴がおったらぶっ倒すし、小学校に入ったときはリーダー格みたいな奴がいたら片っ端からケンカして「俺が長だ」っていうことを証明していくっていう。通知表にも「自分の思い通りにいかないと、力ずくでもそうしようとする」っていつも書かれましたから(笑)。

──そうしてクラスのヒエラルキーをのし上がっていくと(笑)。

ええ。母ちゃんにも言われますけど、「お前は言い出したら聞かない」と。ウチは何か買ってもらいたいものがあっても、まず「ダメ」って言う母ちゃんだったんですよ。

──ゲーム機とかオモチャとか。

そう。本当にそういうものは与えてもらえなくて。だから、どういうふうにしたらゲトれるんだろうって。それがゲトれなくても、それに近いものをどうやったら買ってもらえるんだろう、どうやったらそういうほうに母ちゃんを誘導できるんだろうってことをいつも考えてたんですよ。自分の想像力を培ってくれた母ちゃんに、逆に今は感謝してます(笑)。そういう意味では粘り強かったかもしれないですね。

ニューシングル「Flying B」/ 2016年2月24日発売 / Virgin Music
初回限定盤 [CD+DVD] / 1620円 / POCS-39002
通常盤 [CD] / 1080円 / POCS-39005
CD収録曲
  1. Flying B
  2. We Don't Stop feat. FAT JOE
  3. Rolls-Royce, Diamonds, Bixxhes -REMIX- / BCDMG
初回限定盤DVD収録内容
  1. Beginning of Flying B
  2. Flying B -Music Video-
  3. Ending
  4. 69's Prank Show
AK-69 2016 ZEPP TOUR
2016年6月10日(金)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
2016年7月2日(土)愛知県 Zepp Nagoya
2016年7月18日(月・祝)大阪府 Zepp Namba
AK-69(エーケーシックスティーナイン)

1978年生まれの男性ヒップホップアーティスト。MCおよびラッパーとして活動する際にはAK-69、シンガーとして活動する場合はKALASSY NIKOFFを名乗っている。2004年にKALASSY NIKOFF名義でリリースしたアルバム「Paint The World」を皮切りにソロ活動をスタート。2012年にニューヨークに滞在し、現地のヒップホップ専門ラジオ局「HOT 97」のインタビューを受けたほか、同局主催の野外イベント「Harlem Day」に出演した。2014年3月に東京・日本武道館にてワンマンライブを行い成功を収めたほか、翌2015年にはキャリア最大規模となる全国ホールツアーを開催した。ボクサーや野球選手などアスリート達からの支持も厚く、プロ野球選手の登場曲使用率1位を2014年と2015年の2年連続で記録。2016年1月に「さらなるインディペンデントな活動」を目指して自ら代表を務める事務所・Flying B Entertainmentを立ち上げた。同年2月にシングル「Flying B」をリリース。