音楽ナタリー Power Push - AIR SWELL
“やんちゃなライブバンド”なだけじゃない 試行錯誤から生まれた6つのキラーチューン
ものすごい引き出し開けちゃったな
──自由な発想という点では、今作ではhamakenさんとhiromitsuさんが2人でボーカルを取っている曲が2曲収録されています(「ヘイミスターエンプティ」「アンチスモーカーズレクイエム」)。これも、歌える人がいるなら入れない手はないという考えから?
hamaken そうですね。実は2人で歌うってアイデアは、ひーくんが加入してすぐにあったもので。本当は前作のタイミングでやりたかったんですけど、ひーくんが「突然スタイルが変わったら、今まで聴いてくれていた人がびっくりしちゃうんじゃないの?」って言ってくれて。今回はやっと、使えていなかった調味料を入れられた感じですね。また例え話ですけど(笑)、目の前にたくさんの調味料があるのに、塩しか使わないとかもったいないじゃないですか。「おいしくなるなら味の素とかも入れたいし……」っていう、そういう感覚です。
hiromitsu 前作できちんと「これまでのAIR SWELL」の音楽を表現することに徹した分、今作はより手放しで楽しめてるんだと思います。
──なるほど。この2曲は日本語詞で、耳を澄まして聴いてみると内容が攻撃的ですよね。「ここまで言うのか!?」っていう過激さもあって、そこもリミッターがないなと感じました。
hamaken 攻撃というよりは、どちらかというとおちょくってるイメージですね。確かにストレートではあるけど、日本語詞に関して重視してるのは響きなんですよ。こんなことを言うと誤解されるかもしれないですけど、歌詞って究極を言ってしまえばなんでもいいというか。だってみんな、意味がわからなくても洋楽のラップをカッコいいって思うじゃないですか。なんでそう感じるかって、聴いた感じの響きだと思うんですよね。
──確かにAIR SWELLの歌詞はメロディにきれいに乗っているから、パッと聴きは攻撃的な内容だと気付かないんですよね。で、蓋を開けてみてその内容にびっくりするという。アレンジに関しても緻密ですよね。特に「Downtown walker」はギターのフレーズが面白いナンバーです。これはどういうきっかけで生まれた楽曲なんですか?
hamaken この曲はギターを一切歪ませてないんですよ。「いわゆる歪んだギターの音なしでアゲられるロックバンドがいてもいいんじゃない?」って発想から作っていきました。僕はクラブミュージックもよく聴くし、実際にクラブで歌ったりしていた経験もあるので、実はこういう要素も1stの頃からちょいちょい入れていて。ただこの曲、演奏するのはすごく難しいんですよ。
hiromitsu ベースも難しいです。「ものすごい引き出し開けちゃったな」っていう(笑)。
hamaken こういう曲をやっている理由は、お客さんに「異端的なことをやっているな」と感じてほしいからでもあるんだけど、それと同時に自分自身が面白いと感じないとダメだからで。同じことをやってたら自分が飽きちゃうんですよね。
──なるほど。いい意味でhamakenさんが飽き性だからこそ、AIR SWELLは常に新たなチャレンジができるという。
hamaken ミニ四駆を走らせるのに飽きたら、次は「空飛ばねえかな?」って(笑)。
どの曲もロックに着地させるリズム隊の力
──ただこれだけいろいろやっていても、バンドとして軸がブレずにどの曲もちゃんとロックに着地しているのは、リズム隊の力も大きいと思うんです。Yudaiさんはそのあたりで自分の役割を考えたりしますか?
Yudai いや、そんなには(笑)。好きなようにやっているだけですね。ただ僕は小さい音で叩くのは好きじゃないので。「Downtown walker」もアコギで静かな曲調ですけど、ドラムだけはフルパワーで叩いています。
──ベースもそうですけど、どんなに上物が入っていてもリズム隊の音がビシビシ聞こえますよね。
hamaken ドラムの力加減でロックに聞こえるところもあると思います。フルショットで叩いてるからこそロックになってる、だけどうるさいわけじゃないっていう。これは奴のスキルですよね。
──だからこそ、hamakenさんもコンポーザーとして自由に音作りができるんですね。2月からは全国ツアーも始まりますが、今作をきっかけに、より幅広い層のリスナーの心をつかむことができるのではないでしょうか。
hamaken 結果としてそうなったらいいですけど、それよりも今回は自分が納得するものを作りたかったという気持ちが強いですね。大勢の人に聴いてほしいからって理由でセルアウトするのは違うし、何より自分がやってて楽しくないと思うので。自分が納得して楽しいと思えるものを作って、それに共感してくれる人がいてくれればいいですね。
──最後に、本作のタイトル「SIX KILLS」にはどんな思いが込められているんですか?
hamaken 「KILLS」はキラーチューン、つまり6曲のキラーチューンという意味です。
──それでは意味合い的には、以前発表された「ALL LEAD TRACKS」と近い?
hamaken いや、リードトラックにはバラードとかもあるじゃないですか。今作はキラーチューン、つまりアゲる専門の6曲なんですよ。モッシュを誘発する曲があればシンガロングにぴったりの曲もあるし、6パターンのアゲ方をする曲が入っているっていう。
──確かにリードトラック以外にもキラーチューンってありますもんね。今回は「アガる」感覚を重視したと。
hamaken ライブで盛り上がる曲ってどうしても定番の曲になっていくじゃないですか。それだとせっかく新譜を作っても、新しい曲をライブでやれなくなるなって。だから、新しく代わる球を6つ作ろうと思ったんです。
──新たなキラーチューンを作るという意識は、バンドの新陳代謝にも、お客さんの刺激にも関わりますもんね。どれもライブで聴くのが楽しみです。演奏が難しいとおっしゃっていた「Downtown Walker」も。
hiromitsu いやあ、できるかな?(笑) 鬼のユニゾンがあるからね。
──あのユニゾンは聴くだけじゃなく観ても気持ちいいと思うので、楽しみにしています。
hamaken ありがとうございます。
収録曲
- The government knows best
- Big Bad Wolf
- ヘイミスターエンプティ
- Downtown Walker
- アンチスモーカーズレクイエム
- Current of time
AIR SWELL「SIX KILLS TOUR」
- 2017年2月4日(土)
高知県 X-pt.(※ワンマンライブ) - 2017年2月10日(金)
東京都 shibuya eggman(※ワンマンライブ) - 2017年2月26日(日)
宮城県 仙台MACANA - 2017年3月18日(土)
福岡県 Queblick - 2017年4月1日(土)
北海道 COLONY - 2017年4月8日(土)
岡山県 CRAZY MAMA 2nd Room - 2017年4月9日(日)
大阪府 心斎橋CLUB DROP - 2017年4月21日(金)
香川県 DIME - 2017年5月10日(水)
石川県 vanvanV4 - 2017年5月11日(木)
愛知県 APOLLO BASE
AIR SWELL(エアースウェル)
hamaken(Vo. G)、hiromitsu(B)、Yudai(Dr)からなるロックバンド。2011年、hamakenを中心に結成される。精力的なライブ活動の傍ら、2012年8月に1stアルバム「RIMFIRE」、翌2013年6月にミニアルバム「THE ART OF PSYCHO」を発表した。2015年3月にはhiromitsuの加入後、新体制となって初めてのミニアルバム「MY CYLINDERs」をリリース。2017年1月に3rdミニアルバム「SIX KILLS」を発売し、全国ツアーを開催する。