音楽ナタリー Power Push - AIR SWELL
“やんちゃなライブバンド”なだけじゃない 試行錯誤から生まれた6つのキラーチューン
AIR SWELLが新作ミニアルバム「SIX KILLS」を1月25日に発表する。前作「MY CYLINDERs」から約1年10カ月ぶりのリリースとなる本作には、AIR SWELLが持つ幅広い音楽性を楽しめる全6曲が収録されている。
音楽ナタリー初登場となる今回は、hiromitsu(B)の加入に至る背景や音作りに対する自由な考え、そして「SIX KILLS」に込められた思いをメンバー3人に語ってもらった。
取材・文 / 高橋美穂
楽曲ごとに戦い方を変えられる3人
──今年結成5周年を迎える皆さんですが、今回は改めて「AIR SWELLとは何者なのか?」というところから紐解いていきたいと思います。ただニューアルバムを聴いても明らかですが、何かのジャンルに当てはめることが非常に難しいバンドですよね。
hiromitsu(B) ありがとうございます。
──あ、その反応は皆さんの中にも「どのジャンルにも位置付けされたくない」という気持ちがあるということですか?
hamaken(Vo, G) ありますね、それは。
──5年間のうちには、メンバーの変遷(参照:AIR SWELLからベースのTaisukeが脱退)などバンドにとって大きな変化もあったと思うんです。それで音楽性が変わった、あるいは幅が広がった部分はありますか?
hamaken いや、それはそんなになくて。始めた頃からわりと全員なんでもできるタイプだったので、1stアルバムをリリースしたときからいろんな音楽をやるバンドではあったと思います。
──では、バンドの首謀者であるhamakenさんは最初からジャンルレスなバンドを目指していたと。2014年末にhiromitsuさんにサポートメンバーの白羽の矢が立ったのはどういった経緯なんですか?
hamaken ひーくんとは付き合いが古いんですよ。僕が18歳の頃、彼がTHE CHERRY COKE$をやっているときから知っていて。ある日ひーくんがTHE CHERRY COKE$を脱退したことを知って、うちもちょうどベースが抜けたところだったから「じゃあ(サポートを)お願いしよう」って。
hiromitsu 音楽性云々というより、単純に「知ってたから」っていう(笑)。
──なるほど。hiromitsuさんは加入当時からサポートらしからぬ存在感だったとお聞きしていますが(笑)。
hiromitsu はははは(笑)。サポートの頃のライブはやりたい放題やらせてもらってましたね。サポートとは言えバンドを構成する3分の1を担うわけだから、そういう意味でも存在感を出したくて。
──hiromitsuさんはもともと引き出しの多いベーシストだと思っていましたが、AIR SWELLでは今までのバンドでは開けていなかった引き出しを開ける機会にも恵まれたんじゃないですか?
hiromitsu そうですね。自由にやるとは言いつつ、サポートメンバーとして既存の曲を演奏するときは前のベーシストのフレーズをそのまま再現してたんですよ。それが今までのAIR SWELLのファンとメンバーに対しての筋かなって。それまでコピーバンドさえしたことがなくて、他人が考えたフレーズを弾いたことはなかったので、結果としてそれがすごく勉強になりましたね。
──コピーしているうちに、それが自分の血肉になった?
hiromitsu はい。やっぱり自分の手グセで作るラインとは全然違うし、ベーシストとして成長できましたね。そこから正式メンバーとして、いよいよ3本柱のうちの1本になるって決まったときは……逆に、ちゃんとやんなきゃなって(笑)。これまで通り「わー!」って自由にやる場面と、周りを支える場面を自分の中でうまく切り替えられたら理想かなと思ってます。
──Yudaiさんはどうですか? リズム隊としてhiromitsuさんとタッグを組むのは。
Yudai(Dr) 単純に面白いですよ。hiromitsuくんとやるようになってから、ライブ中にアイコンタクトをよく取るようになった。
hiromitsu ステージ上で交わす言葉じゃないコミュニケーションは楽しいですよ。3人しかいないと、それがよりコンパクトに行われるし。
hamaken 前は僕がフォワードで、リズム隊がディフェンスっていう感じだったんですけど、ひーくんが入ってからはより自由度が増したよね。僕とひーくんが2トップでYudaiがディフェンスというときもあれば、前と同じようなポジションにもすぐに戦い方を変えられるし。
──場面や楽曲ごとに役割を変えられる3人がそろっていると。
hiromitsu そうですね、そのへんの息は合ってきていると思います。
──3ピースにこだわらない音作りもAIR SWELLの特徴ですよね。これだけジャンルレスな楽曲を生み出せるということは、それぞれがいろいろな音楽を聴いているバンドだろうなと思ったんですけど、3人の音楽的なルーツは?
hamaken 僕はFoo FightersとかIncubusとか、Nine Inch Nailsとかですね。
hiromitsu 僕はBackyard Babiesとか、ロック臭いものが好きです。パンクやハードコアも好き。
Yudai 僕はずっとJ-POPですね。メロディがある曲が好きなので、それこそ椎名林檎とか。
ミニ四駆を作るときと遊ぶときの脳って違うでしょ?
──なるほど。AIR SWELLってポップセンスを感じさせる曲も多いですけど、この3人だからこそこの音楽性っていうところが見えてきた気がします。本作もいわゆる「バンドサウンド」のイメージに囚われていないですよね。オープニングを飾る「The government knows best」からピアノや打ち込みのビートが入っているのには意表を突かれました。
hamaken まあ、意表は突きたいですよね(笑)。それに「ギターとベースとドラムだけで作らないと」とは思ってなくて。とりあえずなんの縛りも設けず自由な発想で曲を作って、できあがったものを演奏するっていう。
──特に今作に関しては「やんちゃなライブバンド」というイメージで音源を聴くとびっくりしますよね。感情的・肉体的なバンドに見えるけれど、実は知性的なバンドというか。
hamaken やっぱり自分自身も破天荒なバンドが好きなので、ライブでの見せ方としてはやんちゃなライブバンドでありたいんですよ。ただ音楽的には洗練されたものをやりたいと思っているから、そのギャップを面白いと思ってもらえたらいいかな。
hiromitsu やんちゃなパフォーマンスをするバンドは、曲もシンプルなことが多いと思うんです。でもhamakenの場合は、僕がバンドマンとしてキャリアを重ねてきた中でも、特にコード進行や理論が緻密だなって思いますね。本人はそんなに意識してないと思うんだけど。
hamaken うーん……曲を作っているときはコンポーザーの頭だし、ライブをしてるときはバンドマンの頭で、全然違うんですよ。例えばミニ四駆を作るときと完成したもので遊ぶときの脳って違うでしょ? 「こうかな? こうかな?」ってすごい考えて組み立てるのが作曲で、「イエー!」って手放しで楽しむのがライブ。そんな感覚かな。
hiromitsu はははは!(笑) なるほどね。
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収録曲
- The government knows best
- Big Bad Wolf
- ヘイミスターエンプティ
- Downtown Walker
- アンチスモーカーズレクイエム
- Current of time
AIR SWELL「SIX KILLS TOUR」
- 2017年2月4日(土)
高知県 X-pt.(※ワンマンライブ) - 2017年2月10日(金)
東京都 shibuya eggman(※ワンマンライブ) - 2017年2月26日(日)
宮城県 仙台MACANA - 2017年3月18日(土)
福岡県 Queblick - 2017年4月1日(土)
北海道 COLONY - 2017年4月8日(土)
岡山県 CRAZY MAMA 2nd Room - 2017年4月9日(日)
大阪府 心斎橋CLUB DROP - 2017年4月21日(金)
香川県 DIME - 2017年5月10日(水)
石川県 vanvanV4 - 2017年5月11日(木)
愛知県 APOLLO BASE
AIR SWELL(エアースウェル)
hamaken(Vo. G)、hiromitsu(B)、Yudai(Dr)からなるロックバンド。2011年、hamakenを中心に結成される。精力的なライブ活動の傍ら、2012年8月に1stアルバム「RIMFIRE」、翌2013年6月にミニアルバム「THE ART OF PSYCHO」を発表した。2015年3月にはhiromitsuの加入後、新体制となって初めてのミニアルバム「MY CYLINDERs」をリリース。2017年1月に3rdミニアルバム「SIX KILLS」を発売し、全国ツアーを開催する。