音楽ナタリー Power Push - あいみょん×キュウソネコカミ

時代を切り取る音楽家 from 西宮

そんなドラマチックな音楽の始め方ある?

──あいみょんさんが音楽活動を始めたきっかけを教えてください。

あいみょん

あいみょん 音楽をやるきっかけになったのはお父さんの影響が大きいですね。お父さんがPAをやっていて、スタッフパスを持って帰ってくるんですよ。そのパスをもらってエナメルバッグにいっぱい貼り付けたりして。で、その頃から兄弟の中で私だけ音楽に興味を持って、お父さんにFERNANDESのZO-3を借りて練習し始めたのが中2くらい。でもすぐに飽きてやめちゃって。

ヤマサキ そうなんや。

あいみょん でも中学3年生のときにまたギターを始めるきっかけがあったんですよ。外国人の英語の先生が授業中にBackstreet Boysを弾き語ったりしてくれるような音楽好きな人で。その先生がアメリカに帰っちゃうときに向こうに送るより新しいのを買ったほうが安いからあげるってもらって。

ヨコタ ってことは、「私もギターを弾いて歌いたいです」みたいなことを先生に言ったの?

あいみょん そうです。そしたらそのギターをもらうことになって。

ヨコタ そんなドラマチックな音楽の始め方ある? ズルいわ(笑)。

あいみょん あはは(笑)。それで本格的にギターを始めたんですけど、最初は音楽で食べていこうみたいなことは全然思ってなかったです。高校を出てからずっと家で弾いて満足してたんですよね。お父さんの影響で好きだった浜田省吾さんや尾崎豊さん、吉田拓郎さんとか男性のフォークシンガーの曲をよくコピーしてました。ほかにもいろいろ夢があったので、音楽で食べていこうっていう意識はそんなに強くなくて。

──YouTubeに上がった動画がきっかけで今の事務所に入ることになったんですよね?

あいみょん そうです。高校時代の話になるんですけど、同い年の男の子がYouTubeで自分で作った番組を公開してたんですよ。その子が"南高校でギター弾いて歌ってる子がいる"っていう噂を聞きつけて私にオファーをしてくれて。それに出たときはもうあいみょんって名乗って弾き語りをしていたんです。今の事務所の人が動画を観て私のことを気になってくれてたんですけど、連絡の取り方がわからなかったみたいでそのときは特に何もなくて。Twitterもやってたんですけど、本名でやってたので。で、その2年後くらいにたまたま専門学校に通っている友達が「アコースティックのライブがあるから出てくれない?」って私を誘ってくれて、その映像をYouTubeに上げて。そのときは本名で出演して、それを今の事務所の人が見つけてTwitterで連絡をくれて。

ヨコタ Twitterで事務所から連絡が来るなんて「ホントに?」って感じじゃない?

あいみょん 「言いたいことがあるからフォローしてください」みたいなこと言われて。DMで連絡が来て、丁寧にいろいろ教えてくれて、梅田のHEP FIVE前で事務所の人と会ったんです。それが18歳の夏ですね。

普通の殻を破って

──私はキュウソさんとあいみょんさんのパブリックイメージからして、西宮出身のアーティストってちょっと変わった人が多いのかなと思っていて。

ヨコタ 普通の街だからこそ、この「"普通にいい街"なことをなんで楽しめないんだろう?」みたいなひねくれる感じはあるかもしれないですね。

左からヨコタシンノスケ(キュウソネコカミ / Key, Vo)、あいみょん、ヤマサキセイヤ(キュウソネコカミ / Vo, G)。

ヤマサキ シンノスケは俺と真逆でキラキラな生活送ってたから普通を楽しんでいたタイプだよな。彼は軽音楽部の副部長でみんなから信頼されていてほんまキラキラしててな……24バンドもかけ持ちしてて。本当人気者だったんですよ。逆に僕は全然大学内のライブに出させてもらえんくて、外に飛び出してライブハウスでライブをするようになって。そこではいからさん(キュウソネコカミのマネージャー)に見つけてもらって、Twitterで連絡をもらったんですよ。

あいみょん 私もめっちゃ普通でしたよ。お姉ちゃんも妹も10代で妊娠して子供産んでるんで、ヤンキー一家ではあるんですけど……私は学校にそんなに行ってないけど、やりたいことが多くて学校に行ってられなかったていうだけ。学生の頃にもっと悪さをしておきたかったなと思いますね。夜のプールとか忍び込みたかったし。セイヤさんにみたいにここじゃあかんと思って学校飛び出して、外のライブハウスに行くなんてことは全然なかったです。

ヨコタ でも大学に行かずに、とりあえずギターを持って歌おうって思うこと自体がそれに近いと思うんだけどね。やりたいことが定まってない人は"とりあえず大学に行く"みたいなところあるじゃないですか。セイヤもあいみょんも"普通"から飛び出して事務所に見つけてもらえたんだから、飛び出してよかったんだと思うよ。

NGワードはライブだけで歌えればいい

ヤマサキ 事務所に誘われた頃ってオリジナル曲はどれくらいあったん?

あいみょん 10曲ぐらいですね。事務所に誘ってくれた人が「社長が慎重な人だから、入るためには50曲はオリジナルが必要。だから半年で作って」って言ってきて、試されてるなって思ったと同時に信頼できるなと思って。がんばって50曲作りました。

ヤマサキ よう作れたなあ。その頃に書いた曲は作品にもなってるの?

あいみょん 「分かってくれよ」っていう曲なんですけど、インディーズ盤の「tamago」(2015年5月発売)に入ってます。

ヤマサキ なんかキュウソの「わかってんだよ」(2016年10月発売)がアンサーソングみたいな感じするタイトルやな(笑)。

あいみょん ちょっとタイトル似てますよね(笑)。最初の頃は少女マンガ丸写しみたいな歌詞ばっかりだったんですよ。だけど「貴方解剖純愛歌~死ね~」ができたことをきっかけに一気に作風が変わったんですよね。あの曲も50曲書いた中に入っていて。

ヨコタ タイトルにわざわざ「死ね」が付いてるのがすごいよな。"貴方解剖純愛歌"の時点でクセ強いのにさらに「死ね」って(笑)。

──あいみょんさんにしてもキュウソさんにしても、どちらも言葉が印象に残る曲が多いですよね。思わず共感してしまうような歌詞が多いですし。

左からヨコタシンノスケ(キュウソネコカミ / Key, Vo)、ヤマサキセイヤ(キュウソネコカミ / Vo, G)、あいみょん。

ヤマサキ 俺、昔は自分が思ったことをそのまま歌詞にしてたんですけど、最近はけっこうネットで調べるんですよ。ビビリだから裏取りしてから歌詞にしてます(笑)。だから共感してもらえるのかもしれへん。

あいみょん そうなんですね。私は何も考えずに曲を書いたから「貴方解剖純愛歌~死ね~」のときにNGワードが多すぎて全然ラジオでオンエアしてもらえなかったんですよ……。

ヤマサキ NGワードが1つでもあるとダメやからなあ。どんどん言い換えがうまくなるで(笑)。

あいみょん あはは(笑)。今はとりあえず作ってみてダメだったらレーベルのスタッフさんが教えてくれるんでいいかなと思ってますけど。そういうのはリリースせずにライブだけで歌えればいいかなって。でもこんな曲ばっかりじゃないんで大丈夫です。

ヨコタ 「こんな曲ばっかりじゃない」って言うの、なんかセイヤに似てるなあ(笑)。

ヤマサキ ほかにもちゃんとした曲あるからって言いたくなるよな。

あいみょん 一番目立つ部分だけで語られるのってイヤなんですよね。

ヤマサキ せやねん。キュウソってライブがすごい、ボーカルが客の上に立つみたいなことばっかりピックアップされがちで、「いい曲を歌うバンド」って紹介されたことない。まあテレビメディアがそういう派手な絵が好きなんもわかるんやけど、いまだに僕らはそっちばっかり。ちょっとそこが悩みだったりもして。それを入り口にライブに来て「めっちゃええ曲あるやん!」って感動して帰ってくれるお客さんもいたりするし、テレビに出られるのはありがたいなと思ってますけどね。

ヨコタ でもそもそも俺らを押し上げてくれたのはライブハウスやインターネットだったからそういうのがいらなかったわけで。だからこそ、テレビじゃ言えないようなことを言えたりしたし、そういうところが好きって思ってくれているファンもけっこういてくれてるからそことの兼ね合いも難しいなと思ったり。

あいみょん 1stシングル「生きていたんだよな」2016年11月30日発売 1080円 / unBORDE / WPCL-12398
「生きていたんだよな」
収録曲
  1. 生きていたんだよな
  2. 今日の芸術
  3. 君がいない夜を越えられやしない
キュウソネコカミ ニューシングル「わかってんだよ」 / 2016年10月26日発売 / Victor Entertainment
初回限定盤 [CD+DVD] 1620円 / VIZL-1062
通常盤 [CD] 1080円 / VICL-37220
CD収録曲
  1. わかってんだよ
  2. 秋エモい
  3. こみゅ力
初回限定盤DVD 収録内容
  • 「BAYCAMP 2016」ライブ映像
  • キュウソネコカミが芸術に挑む!?「秋の芸術祭」
  • 「こみゅカ」Music Video フルver.
あいみょん
あいみょん

兵庫県西宮市出身のシンガーソングライター。歌手に夢見ていた祖母や音響関係の仕事に就いている父の影響で音楽に触れて育ち、中学時代にソングライティングを始める。2015年3月に発表したタワーレコード限定シングル「貴方解剖純愛歌~死ね~」など、センセーショナルな世界観の楽曲でSNSを中心に話題を集め、同年「tamago」「憎まれっ子世に憚る」という2枚のミニアルバムを発表。2016年11月に1stシングル「生きていたんだよな」でワーナーミュージック内のレーベルunBORDEよりメジャーデビューを果たす。

キュウソネコカミ
キュウソネコカミ

2009年末に大学内の"就活敗残者"を中心に兵庫県西宮で結成される。ヤマサキセイヤ(Vo, G)、オカザワカズマ(G)、カワクボタクロウ(B)、ヨコタシンノスケ(Key, Vo)、ソゴウタイスケ(Dr)による"5人組全方位対応型ネガティヴディスコパンクバンド"。2012年3月に1stフルアルバム「10代で出したかった」、12月に2ndフルアルバム「大事なお知らせ」、2013年10月に1stミニアルバム「ウィーアーインディーズバンド!!」を発表する。6月に2ndミニアルバム「チェンジ ザ ワールド」をビクターエンタテインメント内のレーベルGetting Betterよりリリース。2015年10月にフルアルバム「人生はまだまだ続く」を発表。2016年3月にバンド史上最大規模となるワンマン公演を大阪・インテックス大阪 5号館、千葉・幕張イベントホールにて実施した。2016年10月にシングル「わかってんだよ」をリリース。11月よりバンド史上最長となる38公演のワンマンツアー「DMCC REAL ONEMAN TOUR 2016-2017~ボロボロバキバキ クルットゥ!ツアー~」を行い、2017年春には対バンツアー「キュウソネコカミ 試練のTAIMAN TOUR 2017」を開催する。