音楽ナタリー Power Push - あいくれ
立川から全国へ届ける「初めましての手紙」
天から降りてきた曲「シロツメクサの指環」
──曲と歌詞はどちらが先にできるんですか?
ゆきみ 曲によってですね。「ノンフィクションドラマ」に関しては、私の中で歌詞もメロディも前々からあって。スタジオでメンバーが「次、こういう曲作ろうよ。こんな感じなんだけど」ってセッションしてるのを聴いたときに「あ、その曲、ゆきみが作ってた曲と一緒」みたいな感じだったんですよ。「ちょっと待って。その曲ちょっと歌ってみていい?」って、冒頭の「あの少女漫画のように」を歌ってみたらばっちりハマった。
こめたに あと、ゆきみから「このメロディの曲をやりたい」って言ってくるパターンもあって。今回だと「シロツメクサの指環」がそうですね。
ゆきみ ゆきみがピアノで弾き語りで作っていって、バンドにアレンジしてもらいました。
──ライブではこの曲の演奏前に「大切な曲です」と説明していましたね。どのような背景の曲なんでしょうか?
ゆきみ これはもう天から降りてきた曲なんです! 地元の立川にシロツメクサがすごくたくさん咲いている場所があって、その横を歩いている数歩の間にサビと歌詞が全部いっぺんに降りてきて。「あっ!」って思ってすぐに携帯のボイスメモに入れました。今もそのメモが残ってるんですけど、そのときから一語一句変わってないです。
──サビの「今すぐバスタブに愛を溜めるね ちょっと、悲しみを脱いで待っていて」という歌詞がすごく素敵ですね。
ゆきみ うれしい! たぶんもともと頭の中にそういった考えはあって、そのタイミングでメロディと同時に降りてきたっていう感じだと思うんですけど。シロツメクサってどこにでも生えてる、いわゆる雑草じゃないですか。そんな雑草でも摘んできてくれる人がいたとしたらすごく幸せだなって思って。その人には「疲れたー」とか「今日1日がんばった」とかそういう気持ちを、コートやジャケットと一緒に脱いで、バスタブみたいに愛をためたところでゆっくり休んでほしいなと。
──あと「生きてみてよかった」という歌詞にドキっとしました。ゆきみさんって「死にたい」と思ったことがあるんじゃないかなと推測したのですが……。
ゆきみ はい……「生きるということと、死ぬということを比較したときに、どっちのほうが楽しいんだろう? どっちのほうが美しいんだろう」って考えて「生きるってきっと死ぬよりつらいことだ」と思っていたんです。ずっとそこから抜け出せなくて「今死ぬことを選んだら、その先にきっと美しい世界が待っているんだ」と思って「深海にて」という曲を書いたんです。2015年に出したシングルに入ってるんですけど。
──それを経て、今作では「生きてみてよかった」と歌ってるんですね。そう思えるようになったのはなぜ?
ゆきみ ファンの方とか、関わってくださる方とか、恩返ししたい人が増えたからです。その人たちが注いでくれる愛に対して、何十倍もの愛を返したい。売れるしかない、大きくなるしかない、それには生きるしかないって思えるようになった。「売れたい」じゃなくて「そうするほかない、それしか返せる術が見当たらない」なんです。
あいくれの音楽が聴いた人の救いになれば
──歌詞はどうやって書いているんですか?
ゆきみ 日々生活してる中で思ったこととか印象に残った景色とか、「素敵だな」って思った言葉なんかを常日頃メモしてて。言葉を書くのがもともと好きだったので、歌詞のノートは小学5年生くらいから付けてますね。小学生からポエム集みたいなのも作ってて……今では見るのも恥ずかしいくらいなんですけど(笑)。だから自分の中で自然に出てくる言葉を並べてる感じです。
──歌いたいことやリスナーに伝えたいメッセージなどはありますか?
ゆきみ 聴いた人が救われるような歌詞が書けたらなとはいつも思いますね。「もう疲れた」とか「嫌なことがあった」とか、「もう死んでしまいたい」ぐらいまで考えている人があいくれの曲を聴いて「自分だけがつらいんじゃないんだ」「その言葉に救われた」ってなったら素敵だなとは思います。
──ゆきみさん自身もそういう経験が?
ゆきみ はい。眠れない夜にベートーヴェンの「悲壮」第2楽章を聴くんです。音楽って心が乱れてるときにしずめてくれる力があると思っていて。この曲には歌詞はないんですけど。だから自分でもそういう音楽ができたらいいなという気持ちは常にあります。
こめたに ゆきみがいつもそういうことを言ってて。で、あいくれの音楽で救われる人が何百人、何千人、何万人……となればいいよねって話をしてるので、俺ら2人はそのためにゆきみをどうやって支えるか、を考えています。ゆきみの歌詞を何倍、何十倍にも増幅させるのが、俺たちの役目かなと。
小唄 ゆきみの歌詞に乗っかれるような音を作りたいなと思ってます。ゆきみが歌詞で作った世界観を、サウンドで広げられたらいいなと。
武道館ワンマンの翌日に立川Babelでワンマンを
──あいくれはライブでは必ず「立川から来ました、あいくれです」と自己紹介をしますよね。あいくれにとって立川とはどういう場所なんでしょうか?
こめたに 育ててくれた場所。ブッキングとか、自分たちの企画ライブとかで立川Babelというライブハウスにお世話になったんです。尊敬できる先輩もいっぱいいて。で、いざほかのところでライブをするようになったら「俺たちって立川のバンドだよね」って気付いたという感じです。最初はそんなに深い意味はなかったんですけど、今は勝手に立川を背負ってるつもりでやってます。
ゆきみ 立川Babelっていう場所、そこにいた人たちによくしてもらって、育ててもらって今のあいくれがあるのは確かなので、その恩返しをいつかは大きな形でしたい。だからこそ、今の段階でも「立川のバンドです」って言うことには意味があるかなとは思ってます。
──バンドとして今後の目標を教えてください。
ゆきみ ワンマンライブがしたいです。結成してから8年経つんですけど、まだ1回もワンマンライブをしたことがなくって。というのも、あいくれはワンマンライブをずっと特別に思ってるんです。実は「よし、ワンマンをやろう」ってなったときがあったんですけど、そのタイミングでベースが脱退を決めて。ベースの脱退ライブをワンマンライブにしてもよかったんですけど、バンドとして大事に考えてきたワンマンライブを卒業のタイミングで使うのはちょっと違うなと思ってやめました。
こめたに 言ってしまえば、ワンマンライブってやろうと思えばどんなバンドでもできちゃうと思うんです。でも、俺たちはやるならきちんと意味のあるタイミングでやりたいんですよ。
小唄 うん、その意味を見つけたいよね。
ゆきみ 「今だ!」っていうタイミングが絶対に来ると思うので、その日を目指してます。
こめたに 日本武道館でワンマンをやった次の日に地元の立川Babelでもう1回ワンマンをやるっていうのが夢なんです。そのためには当然、武道館でワンマンライブをできるバンドにならなきゃいけないので、それを目指していきたいです。
- 1stミニアルバム「アンシャンテの手紙」2017年3月22日発売 / [CD] 1620円 / ACID RAIN / SPACE SHOWER MUSIC / DDCR-1010
- 「アンシャンテの手紙」
収録曲
- ノンフィクションドラマ
- 回顧展の林檎
- シロツメクサの指環
- 愛を注ぐ
- リビルド
あいくれ 1stミニアルバム「アンシャンテの手紙」リリース記念 "読まずに食べないでツアー"
- 2017年4月2日(日)東京都 立川BABEL
- 2017年4月4日(火)大阪府 OSAKA MUSE
- 2017年4月5日(水)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
- 2017年4月7日(金)愛知県 RAD HALL
- 2017年4月14日(金)長野県 ALECX
- 2017年4月16日(日)新潟県 CLUB RIVERST
- 2017年4月20日(木)千葉県 千葉LOOK
- 2017年5月2日(火)千葉県 柏ThumbUp
- 2017年5月9日(火)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA
- 2017年5月13日(土)岡山県 PEPPERLAND
- 2017年5月14日(日)山口県 LIVE rise SHUNAN
- 2017年5月16日(火)広島県 CAVE-BE
- 2017年5月18日(木)大分県 club SPOT
- 2017年5月19日(金)福岡県 Queblick
- 2017年5月21日(日)福岡県 小倉FUSE
- 2017年5月23日(火)埼玉県 MOJO
- 2017年5月24日(水)石川県 vanvanV4
- 2017年5月28日(日)宮城県 LIVE STUDIO RIPPLE
- 2017年5月31日(水)茨城県 mito LIGHT HOUSE
- 2017年6月16日(金)東京都 TSUTAYA O-Crest
あいくれ
立川出身のゆきみ(Vo)、こめたに(Dr)、小唄(G)からなるロックバンド。同じ高校に通うメンバーで2009年に結成した。2015年にRO69が主催するコンテスト「RO69JACK 2015」で入賞、同時期にMASH A&Rのマンスリーアーティストにも選ばれる。4作の自主制作盤のリリースを経て、2017年3月に初の全国流通盤「アンシャンテの手紙」をリリース。