ADAM at|“ゼロ”の気持ちを忘れぬよう コロナ禍の中で芽生えた新たな思い

ライブは娯楽を届けるもの

──ミュージックビデオも作られている「Dancer In The Lake」には、トランペットでJABBERLOOPのMAKOTOさんが参加されていますね。

自分がやらせていただいている浜名湖のフェス(「INST-ALL FESTIVAL」)で、この曲みたいな“大団円”をみんなでやれたらと思って作りました。ADAM atが中心にいて、トランペットやサックスの人が何人もいて、ほかの人はパーカッションでもなんでも勝手に叩いて、お客さんはみんな歌って「今日はどうもありがとうございました!」っていう大団円。感動の押し売りと言いますか(笑)。

──JABBERLOOPは「Mother Lake Jazz Festival」を主催していて、「INST-ALL FESTIVAL」に与えた影響も大きいのかなと。

そうですね。「Mother Lake Jazz Festival」があったから、自分もフェスをやり始めたというのがあります。そもそも我々はメジャーになりづらいジャンルをやってはいるので、それをどうメジャーにすればいいのか、みんないろいろ考えていて「Mother Lake Jazz Festival」と「INST-ALL FESTIVAL」に関しては無料開催というのが一番大きくて。それと「Mother Lake Jazz Festival」はJABBERLOOPの地元にある琵琶湖でやっているんです。京都とか大阪でやればもっと人は集まるわけですけど、地元でやることに意味がある。浜松も新幹線の「のぞみ」が止まらない街で、名古屋でやればもっと人が来ると思いますし「東京でもやりませんか?」みたいに言われることもありますけど、収益を考えているわけではなく地元から発信することが第一だと考えているんです。その意味でも、「Mother Lake Jazz Festival」からは大きな影響を受けてます。

──「Live is Beautiful」は、アルバムの中でも随一と言っていい、文字通りの美しいメロディが印象的な楽曲で、ライブへの思いをストレートに表した曲なのかなと。

タイトルは2月前半くらいに付けたんですが、そのときはまだ普通にライブをやってたんですよね。「ライブをするのは楽しいから、これからもやっていこう。『Live is Beautiful』だ!」くらいの感じだったと思うんですけど、今となってみればすごく意味のあるタイトルになってしまって、皮肉なもんでございます。

──こういうタイミングなので、改めてお伺いすると、ADAM atにとってのライブとは?

すごくいろんな思いがあって……ライブをやらなきゃダメなわけでもないと思うんですよね。我々ミュージシャンにとってライブは副産物のような気もするし、でもライブバンドではいたいと思う。難しいですけど……ライブは娯楽を届けるものだと思っていて。僕は文化は娯楽の積み重ねだと思ってまして、そもそも人が楽しくなきゃダメなんです。で、人に楽しんでもらうということは、生活を圧迫してまで存在することなのかな?と思ったりもするんですよね。こっちの損得だけで考えて、借金してでもライブに来てくれなんてことをさせていたら、お客さんの生活を圧迫していくだけで。

──そうですね。

我々は曲を売りたいというより曲を聴いてほしいので、物販を作るより曲を作っていたいし、お客さんにお金を使ってもらうことだけが目的になっちゃいけないんです。でも、今まで僕らがやってきたライブは、もしかしたら、お客さんの生活を圧迫してる可能性もあったのかなって思ったりして。10月からリリースツアーを予定してるんですけど、もちろん、会場費もかかるし、交通費もかかるし、サポートの人たちの生活も考えたうえでチケット代を決めるわけです。ただ、その値段を当然のことだと思わないようにしなくちゃなと改めて思いますね。

“ミュージシャン様々”ではない

──「文化は娯楽の積み重ね」という話は非常に興味深いですね。もちろん文化を守るために必死に戦っている人たちにはリスペクトを送りつつ、その一方であくまで娯楽として楽しんでもらいたいという考え方にもすごく価値があると思うし、それはADAM atの作品やライブを通じてちゃんと体現されている哲学だなと感じます。

そんな大それたものではないんですけど、そもそも労働者だったのでそれは大きいかもしれないですね。

──最初にも話したように、もともとはライブを作る側だった。

こんなことを言うと敵を作っちゃうと思うんですけど、「“ミュージシャン様々”じゃねえからな」というのは思っていて。「俺音楽で飯食ってるから」と職業の上下を決めちゃうのは腹立つんですよ。

──「Dancer In The Lake」のミュージックビデオは、決してミュージシャンだけが主役なのではなく、ライブの現場にいる誰もが主役であることを表しているように感じました。

そうですね。我々は今まで「チケットを買ってくれ」とか「物販を買ってくれ」とか言ってきたわけですけど、そのお金って皆さんが1週間、1カ月、死ぬほどがんばって稼いだお金なわけですよね。知らない人に頭を下げたり、年下の人に敬語を使ったりして、やっと稼いだお金なわけでそんなに軽いもんじゃない。お金を稼ぐというのは非常に大変なことで、我々はそのお金をいただいてるんだっていうのは忘れちゃいけないことだなって。

──アルバムのラストに入っている「やまねこの里」はアコースティックな質感の仕上がりで、日常感があるというか、娯楽としてのライブの一方で、それこそ労働も含めた生活がそれぞれの基盤にあることを感じさせるようなエンディングだと思いました。

浜松に住んでいると、出勤は電車とかバスよりも自分の車が多くて、その中でよく音楽を聴いてるんですよね。特に帰宅のときに、夕焼けを見ながら「今日も1日がんばったな。明日もがんばろう」と思う。そういうときの曲なんじゃないかと思ってます。

ライブ情報

INST-ALL FESTIIVAL2020
  • 2020年7月5日(日) 静岡県 浜名湖ガーデンパーク

ツアー情報

零ツアー 2020
  • 2020年10月9日(金)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
  • 2020年10月28日(水)東京都 TSUTAYA O-EAST
  • 2020年10月30日(金)宮城県 enn 2nd
  • 2020年11月22日(日)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA
  • 2020年11月25日(水)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2020年11月26日(木)岡山県 IMAGE
  • 2020年11月27日(金)広島県 CAVE-BE
  • 2020年12月4日(金)北海道 BESSIE HALL
  • 2020年12月25日(金)大阪府 Music Club JANUS
  • 2020年12月27日(日)福岡県 DRUM LOGOS
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