ADAM at|“ゼロ”の気持ちを忘れぬよう コロナ禍の中で芽生えた新たな思い

今一度“偏差値”を下げてください

──ジャケットのイラストが石黒さんになっても、猫をメインにしたアートワークであること自体は以前と変わらないですよね。改めて、猫ジャケに対するこだわりもお伺いしたいです。

話が飛んじゃうかもしれないですけど、僕、「ガキの使い(ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!)」が好きなんですよ(笑)。昔から同じレギュラーメンバーで、スタッフも同じ方だったり、昔から愛されてる企画を今でもやってたりして、ああやってずっと同じことを続けてるのが僕はすごく好きなんです。なので、僕の場合は猫のジャケットとホラーゲームのタイトルをずっと続けることで、例えば別の人が猫のジャケットで出したときに「ADAM atみたいだね」となったり、そう思ってもらえるきっかけになってくれればなって。

──「零」には前作に続いて潔さんが参加されてますけど、中村佑介さんが手がけるアジカンのジャケットもおなじみですし、もはや切っても切り離せない関係ですよね。ADAM atにとって、石黒さんのジャケットもこれからそうなっていったら面白いなって。

石黒先生に描いていただくためにも、いい音楽を作り続けないといけないですね。「こんなアルバムにジャケットを描きたくない」と思われないように(笑)。

──SCOOBIE DOのコヤマシュウさんが参加した「サタデーナイトフルット」はもちろん石黒先生のマンガ「木曜日のフルット」が元ネタかと思いますが、もともとはインストだったそうですね。

そうなんです。非常にいい曲ができたと思って、ここにコヤマさんのシャウトやアジテートが入ったらさらに雰囲気が出ると思い、お願いしました。デモの時点ではけっこう偏差値が低い曲だったんですよ。比較的アホな感じというか(笑)。でも、それを永田さん、伊藤さん、橋本さんに演奏してもらったら、偏差値が高い曲になってしまって、悪いことではないんですけど、自分としては「そこじゃない」というのもあって。

──洗練され過ぎてしまったというか。

そうなんです。明治のアーモンドチョコが食べたいのに、ゴディバを持ってこられちゃうとおいしいはおいしいんだけど、ちょっと違うんだよなって。なので、コヤマさんには「今一度“偏差値”を下げてください」とお願いしました(笑)。最初はもっとメロウな曲だったんですけど、コヤマさんとディスカッションしてるうちにパーティソングになっていって、めちゃめちゃいい曲になったなって。時代は歌モノだと思いましたね(笑)。

スペアザのおかげで次に

──「サタデーナイトフルット」は非常にファンキーですし、「最終電車」はAORっぽい雰囲気もあるなと思ったんですけど、リズムのアプローチも曲調もかなり幅広くなっていますよね。かつては四つ打ちと裏拍のスネアが代名詞で、それが“ADAM atらしさ”を形成していたと思うのですが、そこからの変化はどの程度意識的だったのでしょうか?

いくつか理由があるんですけど、「サイコブレイク」からレコーディングの主要メンバーがほぼほぼ一緒になって、彼らの曲に対するテンションを上げなきゃいけないなと。「またこれかい」と思われてしまうようなことをあえてやってきたのは、よく言えばどっしりするからなんですけど、悪く言えば置きにいくことになってしまう。そんな中でリズムや曲調にアクセントを付けることで、彼らの演奏のテンションも上がるかなって。もう1つはスペアザ(SPECIAL OTHERS)の影響で。僕、スペアザは1つのジャンルを作ったと思っているんです。

──玉田さんは以前からスペアザとソイル(SOIL&"PIMP"SESSIONS)からの影響を公言されてますよね。

スペアザが出てきたことによって、彼らのようなギターとキーボードが入った編成のバンドは大体「スペアザっぽい」と言われるようになって、それはすごいことだと思ってまして。で、僕も四つ打ちで、スネアが裏に入ってっていうのを5年くらいやってきて、「ADAM atらしさ」みたいなものができた気がしているんです。なので、今まではそれ一辺倒で押してきましたけど、アルバムに1、2曲そういう曲が入ってれば、「ADAM atっぽいね」と言ってもらえるようになったし、だったらそろそろ次に行ってもいいのかなって。それゆえにリズムパターンも今までとは違うことをやったりして……それもスペアザのおかげです(笑)。

──スペアザの新作もまさに「スペアザっぽい」作品でよかったですよね。

素晴らしかったですね。でも、スペアザも歌を入れたり、いろんな楽器を使ったり、常にアップデートしているので、僕たちも同じようにアップデートしていかないとなって思います。インストの素晴らしい先輩がたくさんいるので勉強になります。

──スペアザはアジカンがバンドシーンに紹介したようなところがあるので、潔さんがPHONO TONESを始めて、今ADAM atの作品に参加しているというのはなんだか縁を感じますね。

PHONO TONESと初めて対バンをさせてもらったときに、最初にそれを言いました。僕、アジカンとスペアザとストレイテナーさんの対バンを観に行って、そこでスペアザを知ったようなところもあって。アジカンのオープニングはなかなかやらせてくれないんですけど(笑)。

──その潔さんは「幻想陰翳ディストピア」と「Town Still Turns」に参加されていますね。

「幻想陰翳ディストピア」はテーマの部分のドラムがもともと普通のエイトビートだったんですけど、潔さんが「ここは“ADAM atビート”で叩かせてほしい」って言ってくれて。もともと「Town Still Turns」は真っ直ぐなロックナンバーというか、パワーポップというか、シンプルなエイトビートの曲だったんですけど、せっかく潔さんにお願いするので「この曲をアジカンだったらどんな風にアレンジしますか?」って聞いたら、「メロディとかリフに合わせて叩くことが多い」と言ってて、潔さんのアイデアも入れてもらいました。

──確かにこの曲のパワーポップ感はアジカンっぽいかもしれません。「転がる岩、君に朝が降る」じゃないけど、ロックンロール独特に“転がしていく感じ”もあるし。

曲を作ってるときから“転がる”とか“回る”みたいなイメージがあって、最初は「Guruguru」っていうタイトルだったんですよ。そこから石黒先生の「それでも町は廻っている」が思い浮かんで、それで「Town Still Turns」というタイトルになったんです。