メジャーデビュー、まずは疑った
──バンド結成から現在までを振り返って、ターニングポイントはいつでしょう?
輪田 結成して2年が経ったタイミングで、「恋愛進化論」という楽曲がSNSですごい拡散されて、会場に来てくれる人も一気に増えたんです。ツアーを開催したら各地で13.3gを待ってくれてる人がたくさんいた。それは今までになかった感覚でしたし、大きなターニングポイントだったと思います。ツアーファイナルは大きい箱(東京・WWW X)でワンマンライブをやったんですけど、それも大成功して。状況が一気に好転していきましたね。
──そして、このたびソニーミュージックからメジャーデビューを果たされました。メジャーデビューの話を聞いたときの心境は?
藤丸 最初に話をもらったとき、すぐには喜べなかったんですよ。ヘタに期待したくないっていうか、「いやいや本当ですか……?」と怪しんでいました。
ロビン まずは疑ってみてね(笑)。
藤丸 うん(笑)。あとで「『やっぱりなしで』と言われて、僕は傷付きたくないですよ」という、謎のムーブが何度かあった。
一同 はははは!
藤原 そうね。最初に「メジャーデビューが決まったよ」と言われたときは、誰1人「やったー!」とかはなくて「え……」と無言になって、すぐに信じられなかったかも。
輪田 僕が無言になった理由としては、それぞれ聴いてきた音楽が全然ちゃう中でも、一番大事にしていたのが「この人たちとやりたい」ってことだったんですよ。将太に関しても歌がすごいとは思ったけど、話をしていくうちに「この人と音楽をやりたい」という気持ちになった。いいなと思う人と音楽をやってきて、充実感もあったので、メジャーデビューの話も必然的に来るはずだ、と思っていたんです。ただ、想像したよりも早かったので「このスピード感でくるか……」という意味での無言でした。そして「やっぱり、このメンバーだからこそ上へ行けるんやな」と、確信に変わりました。
「潜在的なアイ」に感じる強い手応え
──2月18日に配信リリースされたメジャーデビューシングルの表題曲「潜在的なアイ」は、テレビアニメ「Fate/strange Fake」のエンディングテーマです。どのように楽曲を作られたのでしょう?
藤丸 前から「Fate」シリーズが好きで観ていたんですけど、歌詞を書かせていただくにあたって、改めてどんなストーリーだったのかを振り返って観直しました。登場人物それぞれがどういう心境で、どんなスタンスなのかに注目しながら作詞と向き合いました。
──歌詞を書くうえでのヒントはありましたか?
藤丸 「Fate/strange Fake」は、各キャラクターがそれぞれの血筋がどのようにつながっているのかを考え、現世の自分らがどうするべきかを模索する様子が描かれている。「じゃあ、生まれ持った環境ってなんなのかな?」と深掘りしていくと、自分の中にもともとある潜在的なモノであると気付いたんです。そこがストーリーの肝になる部分だと思ったので、歌詞に落とし込んでいきました。
──演奏はウワモノの華やかさと、抜群のタイミングで入るアグレッシブなリズム隊が印象的で魅了されました。
ロビン 今回、僕が曲の原型を作ったんです。「Fate/strange Fake」はさまざまなキャラクターが入り乱れていて、戦ったり仲間を蹴落としたり、目まぐるしく展開していく。その様子をどうやって僕たちの色で表現するか考えたときに、思いきり攻めてみようと。その時点でリズムパターンはイメージできていたのと、メロディを大事にしたかったので、ギターもキャッチーでわかりやすいものを意識しました。デモをみんなに聴かせたら3人とも気に入ってくれたので、ゼロイチの制作はスムーズに進められましたね。
輪田 先ほどおっしゃった通り、アグレッシブさを出したかったんです。そのために必要なことは何かと考えたら「自分たちらしい演奏なのかな?」と。深く突き詰めていくよりも、等身大の演奏から生まれる音が、目指しているサウンドに一番近いのではないかと考えました。ロビンが打ち込んでくれたドラムのイメージを掛け算的に膨らませていって、最終的にいい形に着地できた。今までの等身大の“13.3gらしさ”と、ロビンのアイデアが華やかさにつながり、アニメの魅力と自分たちのエゴも全面に押し出せた曲になりましたね。
藤原 ロビンから「高揚感と激しさが欲しい」と言われたので、スラップを入れたり、長めのサビで前半は激しさを出して、後半に華やかさを出して……と作っていったら、見事にスッとハマったんですよね。なので苦戦したというよりは、そのときに感じたものを取り入れた結果、自然と13.3gらしさが出て、なおかつ新しさも出た曲になったと思います。
──「潜在的なアイ」のミュージックビデオは、公開されて約1カ月で100万再生を突破しました。この結果をどう受け止めていますか?
藤原 びっくりですね! 今までの「Fate」シリーズにはなかった明るい曲なので、作品のファンの方がどう感じるか不安はあったんですけど、曲が解禁されたらその新鮮さを好意的に受け取ってくれました。それが100万再生につながったと思うから、強い手応えを感じています。
ライブごとに表情を変える「眠民ゼミ」
──シングル2曲目の「眠民ゼミ」は、たゆたっている雰囲気と多彩なリズムが融合した、不思議な魅力と高い中毒性を持った楽曲ですね。
輪田 これはセッション的な感じで作ったよね?
藤原 うん。みんなでスタジオに入って作りました。
ロビン 最初に大体のグルーヴが決まって、そこに将太が鼻歌を乗せたら「あ、このゆるく乗れる世界観がよさそうだ」と。そんな感じで実験的に作っていた感じがしますね。
藤原 この曲はリズムが大事なんですよね。ベースとドラムはリズム隊としてお互いに合わせる楽器なのに、この曲はあえて合わないフレーズで作られている。その一方で、歌メロの隙間を狙うリズム感になっているので、「これって、どう乗ってる?」と確認しながらベースのアレンジを詰めていきました。
輪田 各々のアプローチを尊重しながら、ベースはどう弾くかっていうね。
藤原 うんうん。同じ曲なのに、それだけ4人のやっていることが違うんですよね。
──リズムが変則的なので、ライブでどう演奏されるのか楽しみです。
ロビン 「眠民ゼミ」はめちゃくちゃ振り幅が広くて、そのときのセットリストによって見せる表情が違うんですよね。しっとりした流れで演奏したら、ゆるく乗れる曲になるし、アグレッシブなパートに差し込むと四分音符が強いグイグイいくタイプの曲にもなる。あと、サビの「これはバッドバッドバッド」「これはグッドグッドグッド」も一体感が出せるキラーフレーズなので、非常に奥行きがある曲になりました。
輪田 全員が同じ方向性で演奏していたら、この中毒性は生まれなかったと思います。ほかが細かく弾いているのに対して、ドラムはもっと大きく「沈むように沈むように」という意識で叩いたら、この歪なグルーヴになっていった。僕的には四分音符の強い、ロックにファンクを取り入れた乗り方なんですよね。音の隙間を縫うように叩いたからこそ、ベースの仕事量がとんでもなく増えてる(笑)。
藤原 本当にそう!
一同 はははは。
インディーズ時代から一緒に戦ってきた大事な曲たち
──「眠民ゼミ」はエキセントリックな歌詞も非常に面白いです。
藤丸 「潜在的なアイ」をはじめ、僕たちの曲には何かしらメッセージを込めているんですけど、「眠民ゼミ」に関しては伝えることにあまり重きを置いてないんです。みんなが作り出す音の空間に対して「自分がどう気持ちよく乗れるのか」という向き合い方をしていて、いい意味でテキトー。その分、言葉遊びしてる部分が多いし、とにかく力を入れずに楽しんでいる歌詞になりました。
──この歌詞はもはや脳内トリップしながら書いたんじゃないか、とすら思いました。
藤丸 確かに夜の街をふわーっと漂っている感じ。それって気持ちいいじゃないですか。なので感じたままに楽しんでほしい曲ですね。
──今回のシングルは新曲2曲に加えて、既発曲「嘘つき」「恋愛進化論」「Inside Out」を再録したスタジオライブ音源も収録されています。
藤原 僕たちはライブを大事にしているので、既存の曲をライブの温度感として身近に聴いてほしいと思ったときに「スタジオライブという形でやってみよう」となりました。
輪田 この3曲は僕らにとってターニングポイントになった楽曲であり、インディーズ時代から一緒に戦ってきた大事な曲たち。もちろんほかの曲もすべて好きですけど、シンプルにライブで演奏する回数が多いのもあって。今まで自分たちが歩んできた作品を「もう1回噛み砕いて昇華しよう」ということで収録しました。
等身大のライブを
──これは僕が勝手にそう感じたことだと思うんですけど、「恋愛進化論」はリリース時の音源と比べてエロスが増している気がしたんですよ。
一同 あはははは!
藤丸 いや、そうかもしれないですね。「恋愛進化論」は僕が家で録った弾き語りのデモをロビンに投げて、そこから構築していった楽曲で。この曲で歌っているのは「クリーンな恋愛なのか?」と言ったらそうじゃない部分なので、それをよりエゴイストに出し切れたのかなって。そこがエロさにつながっているんだと思います。
輪田 “遊び心”のある演奏が、そういう印象に紐付いているんでしょうね。音と音の隙間が昔よりも広くなっているんです。それはタイム間で広くなったわけではなく、みんなの出す音が鋭くなったことによって、音の面積が小さくなっている。つまり、次の音への隙間が広がっているんですよね。そうなると「この隙間で何ができるのか」という遊び心が、それぞれの楽器や歌から広がっていくんですよ。そのアンサンブルが1曲の中に閉じこもっているからこそ、遊び心が表に出てエロさになっているのかな……って、今逆算をして感じますね。
──リリース後には東名阪のワンマンライブツアーが決まっています。意気込みはいかがでしょうか?
藤丸 メジャーデビューをしてから初のワンマンツアーであり、「Fate/strange Fake」のエンディングテーマを引っさげたツアーでもあるので、すごく気合いが入っています。みんなと僕らの音楽を共有して、これからしっかり歩んでいきたい気持ちでいっぱいですね。とはいえ変に力まずに、楽しみながら等身大のライブをやれたらいいなと思います。
公演情報
13.3g ONE MAN TOUR「潜在的なアイ」
- 2026年3月13日(金)大阪府 Yogibo META VALLEY
- 2026年3月19日(木)愛知県 CLUB UPSET
- 2026年4月17日(金)東京都 WWW X
プロフィール
13.3g(ジュウサンテンサングラム)
藤丸将太(Vo, Pf, G)、藤原聖樹(B)、奥野“ロビン”領太(G)、輪田拓馬(Dr)の4人からなる大阪発のロックバンド。2023年2月に1stアルバム「Ashtray」を発表し、春に東名阪ツアー「"Ashtray" Release Tour [FILM]」を開催した。2024年5月から7月にかけて自身最大規模となる全国12都市ツアー「LIVE TOUR 2024」を実施。11月にはミニアルバム「celebrity」を発表し、12月から全国4都市を巡るツアー「13.3g ONE MAN TOUR [ celebrity ]」を行った。2025年は初心に立ち返るため全国各地を巡るツアー「青の情景」を実施。2025年末には地元・大阪のライブハウス、梅田CLUB QUATTROでワンマンライブを開催した。2026年2月発表のシングル「潜在的なアイ」でソニー・ミュージックからメジャーデビュー。3月から東名阪ツアー「13.3g ONE MAN TOUR『潜在的なアイ』」を開催する。
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