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ワタナベ・メイ「彗星」ジャケ写

ワタナベ・メイ 彗星

21歳の気鋭SSWが見つめる“不確かな今”、大沢伸一とのセッションの果てに生まれた「彗星」

文 / 森朋之

アーティスト自身の音楽的なルーツ、トッププロデューサーとの出会いによって得られた新たな表現、この世界を生きる21歳のリアルを反映したリリック。ワタナベ・メイの新曲「彗星」は、まだ始まったばかりの彼女のキャリアにとって、極めて大きな意味を持つ楽曲になるだろう。

幼少期に聖歌隊に参加し、バイオリンを習う傍ら、父親の影響でオールディーズ、ソウルミュージックなどに触れてきたというワタナベ・メイは、現在21歳のシンガーソングライターだ。中学生のときに経験した不登校をきっかけにボーカルのレッスンを受け始めた彼女は、アコギの弾き語り、スマホのGarageBandで作曲を開始。2023年にリリースした1st EP「光」を聴けば、豊かな音楽的素養、現代的なポップセンス、そして“曲を作り、歌うしかなかった”という強い必然性を感じてもらえるはずだ。

新曲「彗星」のプロデュースは大沢伸一。独創性と即時性を併せ持ったダンスミュージックを軸に、数多くのシンガーと名曲を生み出してきたクリエイターであることは今さら言うまでもないだろう。ワタナベは子供の頃から母親の影響で彼の音楽を愛聴していたという。つまり大沢伸一は、彼女の音楽的DNAの一部と言っていい。

半年以上にわたってセッションを重ねて制作された「彗星」は、トラックと歌が有機的に絡み合い、互いを高め合っているように聴こえる。しなやかで濃密なベースライン、身体の深いところにまで浸透するキック、奇妙にしてキャッチーな響きを持ったシンセが1つになったサウンドメイクは、インパクトと奥深さを見事に共存させ、聴く者を捉えて離さない。そして言うまでもなく、楽曲の中心を担っているのはワタナベのボーカル。日本語の響きを生かした美しいフロウ、凛とした強さと儚い脆さを同時に感じさせる歌の表現は、シンガーとしての彼女のポテンシャルを改めて証明している。

詩的にしてリズミックな歌詞も素晴らしい。不確実性の時代と呼ばれる現実を生きることとは?というテーマを掲げながら、「どんな自分でも愛してやってくれよ」と語りかけるリリックは、現代の社会を照らすと同時に、幅広い層のリスナーの共感を呼びそうだ。

時代性と普遍性を兼ね備えた「彗星」は、すでに早耳のリスナーの注目を集めつつあるワタナベ・メイの存在をさらに多くの音楽ファンに知らしめるはず。この曲を契機にした彼女の次のアクションにもぜひ注目してほしいと思う。

ワタナベ・メイ - 彗星(Official Music Video)

ワタナベ・メイ「彗星」
2024年10月16日(水)配信開始 / レインボーエンタテインメント
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作詞:ワタナベ・メイ
作曲・編曲:大沢伸一

ワタナベ・メイ

ワタナベ・メイ

21歳のシンガーソングライター。R&Bやソウル、インディポップ、昭和歌謡などさまざまな音楽からの影響を受けて育つ。不登校をきっかけに中学生の頃から曲作りを始め、19歳でアーティスト活動をスタートさせた。2023年11月、大学生としてアートを専攻し、レコード店でアルバイトをする傍ら、 iPhoneでトラックメイクからレコーディングまでを行った1st EP「光」を配信リリース。リードトラック「眩暈」は、J-WAVEがオススメする最新楽曲を紹介する「J-WAVE SONAR TRAX」に選出された。2024年10月にはプロデューサーに大沢伸一を迎えた新曲「彗星」を発表した。