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上野大樹 光り
喪失、そして決意。日常に寄り添うSSW、亡くした“貴方”を思う愛の歌
文 / もりひでゆき
聴き手の日常に寄り添い、聴き手の中にある感情を“共感”という形ですくい上げる楽曲を生み出し続けている上野大樹。彼の音楽を聴いていると、人生の中で積み上げてきた記憶の大切さをいつも再確認させられる。常に思い返すハッピーな記憶もあれば、知らぬ間に薄れていってしまう些細な記憶もあるし、意図的に忘れようとするつらい記憶もあるだろう。しかし、どんな出来事であってもしっかりと心に留めておくこと、どんな記憶であっても自らを形成するかけがえのない要素として、覚悟を持って受け止めておくことこそが大事なのだと上野大樹は楽曲を通して僕らに教えてくれているような気がする。
最新EPのリード曲であるタイトルナンバー「光り」は、上野が祖母を亡くしてしまった悲しい経験をきっかけに生まれたのだという。物理的に触れることができなくなってしまった“貴方”という存在に対し、これまでの記憶に思いを馳せながら、言いようのない喪失感が切なくつづられていく。冒頭の「悲しみや憂いが終わってしまえば 貴方の欠片も無くなってしまう」という歌詞に胸が締めつけられる。だが、上野は悲しみだけに囚われることなく、「心と心で繋いだこの手を離さないように」することで前を向いていく。そう、生涯忘れぬよう心に刻みつけた大切な記憶とともに歩いていくことを決めるのだ。
シンプルながらも、ピアノやストリングスが感動的な景色を描いていくサウンド。その上で思いを吐き出すように言葉を乗せていく上野のボーカリゼーションが聴き手の感情を優しく揺さぶる愛の歌。それぞれの“貴方”を想起しながら楽曲に身を委ね、心の中に収められた大切な記憶をそっと紐解いてみてほしい。
上野大樹 /「光り」Music Video
上野大樹(ウエノダイキ)
1996年9月21日生まれ、山口県宇部市出身のシンガーソングライター。学生時代に参加したヤマハ主催の音楽オーディションでグランプリを獲得。2020年に自宅でレコーディングした楽曲「ラブソング」をYouTubeで公開した。2023年4月にavex内のレーベルcutting edgeよりメジャー1stアルバム「新緑」を発表。翌年、新曲「縫い目」で杉咲花主演ドラマ「アンメット ある脳外科医の日記」のオープニング曲を担当し話題となる。楽曲ストリーミング総再生数1億回、YouTube総再生数5000万回超え。2024年10月にはニューEP「光り」をリリース。同月から12月にかけて全国ツアーを開催する。
上野大樹(@uenodaiki_) • Instagram写真と動画